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[MOM3636]三重MF逵村健斗(3年)_“秘策”のトップ下起用で躍動、1ゴール1アシスト

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三重高MF逵村健斗はトップ下起用の期待に応えた

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 選手権三重県予選準決勝 津工高 0-4 三重高 四日市市中央陸上競技場]

「抽選会が終わって、準決勝で当たる可能性が高い津工は勝てる術が正直、見当たらなかった。本当に僕が1番やりたくないのが津工でした」。三重高の徳地俊彦監督がそう口にするのも無理はない。新チームが始まってすぐに対戦した際は、1-5で敗戦。7月に県1部リーグで対戦した際は、0-1で敗れている。加えて、インターハイ以降は思い通りに攻撃が出来ないのも課題となっていた。そうした末に浮かんだのが、今季はボランチとCBでの起用が続いていたMF逵村健斗(3年=多気中出身)のトップ下起用で、組み合わせが決まってから練習と練習試合を重ねて準備を重ねてきた。

 津工の片野典和監督も驚いた起用法の理由について、徳地監督はこう話す。「チームというより、逵村の上手さ、強さ、速さが最大限出る位置で、試合に出てもらいたいと思っていた。CBで試合すると、1人だけ1試合終わってないみたいな顔でいつも帰ってくる。物足りないのか、『あと何本行ける?』と聞いたら、『まだ2ゲームくらい行けます』と返ってくる。僕らのチーム事情で、逵村の良さを消してしまっているのが凄く心残りだった」。

 ここまでの試合では手の内を隠すために、インターハイ同様CBとしてプレー。万が一、追い掛ける展開を強いられたら、試合途中でポジションを上げるつもりでいたが、順調に勝ち上がれたため、この日が初披露となった。勝つためには点が必要だが、そう簡単に津工は得点を許してくれない。打ち合い覚悟で挑むためには、高い位置でのセカンドボールの回収が必要で、守備力の高い逵村が適任だった。

 試合早々にトップ下起用がハマった。前半12分に左CKを獲得すると、MF竹松純心(3年)がゴール前にクロス。DF黒田響平(3年)のヘディングシュートがポストに当たったこぼれを逵村が押し込み、三重が先制した。先制点を奪ってからも、「最終ラインからのパスを受け、前を向いて攻撃の起点を作ろうと考えていました」と振り返る逵村のプレーは、津工の脅威となっていた。「吉良(元希)を抑えれば何とかなると思っていたけど、2人を抑えなければならず、守備が対応しきれなくなってしまった」と悔やむのは、敵将である片野監督だ。

 後半4分には、右サイドからのスローインをPA右手前でボールを受けると、逵村は「逆サイドがフリーだったので、受けた瞬間にパスをしようと思った」。このパスに走り込んだMF北岡優輝(3年)がゴール右上に決めて、リードは3点差に。その後も、MF浅井勇飛(3年)が1点を追加し、4-0で試合を終えた。

 インターハイの3回戦で東山高(京都)に敗れてからは、新型コロナウイルスの拡散拡大防止のため、チーム活動は自粛となった。もどかしさを抱えながらも、「パスとトラップの質を落とさないように自主練をしました。試合では一つのミスが失点に繋がるので、集中力を保ちながら、基礎の部分を徹底したなと思っていた」と自身のレベルアップを図るため、汗を流してきた。

 全ては2017年度以来、2度目となるインターハイと選手権の同時出場を果たすためだ。「三重高でインターハイと選手権に揃って出たのは1回だけ。それも初戦負けなので、歴史を塗り替えて、三重高史上で一番高い結果を残したい」。目標を達成するためには、まだまだ彼の力が必要だ。

(取材・文 森田将義)
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