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キエフ脱出のルーマニア人指揮官が語る「夏の嵐のようだった。極めて厳しい17時間」

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ディナモ・キエフのルーマニア人指揮官ミルチェア・ルチェスク

 ディナモ・キエフのルーマニア人指揮官ミルチェア・ルチェスクが、28日付のイタリア紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』のインタビューに応じ、キエフ脱出を振り返りつつ、平和を訴えた。

 2020年7月からディナモ・キエフの指揮を執るルチェスクは、ロシアによる軍事侵攻が繰り広げられる中、ウクライナから脱出。現在は母国ルーマニアの首都ブカレストへと避難した。ルチェスクは、事の発端を振り返る。

「リーグ戦再開へ向けてスペインや(トルコの)アンタルヤでの合宿から戻ったばかりだった。24日、カップ戦のための練習を終えた後、想像し得ないような出来事が起きた。私は真夜中に目覚めた。まるで夏の嵐の激しい稲光のようだった。だが残念ながら違った。“戦争が始まった”と伝えられたんだ。誰も想像していなかった。たとえ戦闘があったとしても、ドンバス地方だけで、このような侵攻が行われるとは、誰も考えもしなかった。当然、当局からリーグ中断が伝えられた」

 ルチェスクは、母国の大使館からウクライナ国外へ退避するよう連絡を受けると、選手たちや家族の安全を確保した上で、スタッフとともにキエフ脱出を開始した。

「検問があり、極めて厳しい17時間だった。道路は街から逃げ出そうとする車で渋滞し、時速7キロほどでしか進めなかった。キエフから抜けると、軍用車も見かけた。ようやくモルドバとの国境へたどり着くと、車列は無限に続いていた。あそこでは痛ましいシーンも目にした。男性たちは、女性や子どもたちが国境まで送り届け、無事に通過する姿を確認した上で、来た道を戻っていったんだ」

 ブカレストへとたどり着いたルチェスクは、ルーマニアサッカー連盟会長とともに、キエフに残された外国人選手たちの救出へ動いた。

「ディナモだけでなく、外国人サッカー選手の出国を助けようと考えた。特に南米出身の選手をね。彼らの移動中は、私もその動向を追っていた。シャフタール(ドネツク)のジュニオール・モラエスがグループの中でリーダーシップをとってくれた。勇気を見せてくれた彼に感謝している。もし戦闘が続くようなら、UEFAは、選手たちが契約解除やレンタル移籍をできるようにしてほしい」

 ルチェスクは最後に、ウクライナに残る若者たちの行方を案じた。

「これからウクライナの若者たちのために何か行動を起こさなければならない。家族や幼い子どもたちを抱えていて、国外へ逃げられない者たちもいる。誰もこのような悲劇は想像していなかった。まずは平和を考え、それからサッカーについて考えるべきだ」
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