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新チームの22年ファーストマッチは東山に3-1で快勝。新生・青森山田が引き受ける「三冠した次の代」の期待と重圧

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青森山田高は3ゴールを奪い、2022年の新チーム初戦で東山高に快勝!

[3.12 TOKINOSUMIKA CHALLENGE第2節 青森山田高 3-1 東山高]

『全国三冠』という金字塔を打ち立てた次の代だ。大き過ぎる期待も、想像すらできないような重圧も、掛からないわけがない。ただ、それをも引き受けて、立ち向かってくる相手をすべてなぎ倒していくことが、このチームの宿命だということは、みんなとっくに分かっている。

「山田で三冠した後の代というのは今までにもないので、もちろん自分たちが何もしなくても、自然と周囲の注目が集まりますし、プレッシャーが掛かるものなので、そのプレッシャーを受け止めるのではなくて、期待されているというふうにポジティブに考えながら、その注目度をさらに上げられればいいかなと思います」(小湊絆)。

 選手権準々決勝のリターンマッチも、再び緑の王者が凱歌。12日、U-16日本代表、青森山田高(青森)、東山高(京都)、帝京長岡高(新潟)の4チームで争われるTOKINOSUMIKA CHALLENGEは大会2日目を開催。青森山田と東山が“再会”を果たした好カードは、新エースのFW小湊絆(2年)の2発とDF渡邊来依(2年)のゴールで3点を先行した青森山田が、東山の反撃をMF真田蓮司(2年)が挙げた1点に抑え、3-1で勝利。新チームで臨む2022年初の対外試合を、白星で飾っている。

「自分たちはチームとしてなかなか始動できないという部分があって、難しい遠征のスタートになることはわかっていました」とDF中山竜之介(2年)が話したように、青森山田もこの社会情勢下でグラウンドにも出られない日が続き、ようやくしっかりとした練習が再開されたのは今月に入ってから。その上、例年以上に降った雪の影響で、チームとしてもフルコートでの試合は、この日が高校選手権の決勝以来とのこと。大半の主力が卒業した中で迎えた久々のゲームの相手は、1月の選手権準々決勝で対峙した東山。彼らもその一戦に出場していた選手がスタメンに4人も名前を連ねる陣容で、リベンジを期す。

 いきなりの決定機は、8分の青森山田。右サイドをドリブルで切り裂いたMF奈良岡健心(2年)が強烈なシュート。ここは昨年から守護神を任されている東山のGK佐藤瑞起(2年)がファインセーブで凌いだものの、迫力あるアタックで相手ゴールを脅かすと、以降も右の奈良岡、左のMFアマエシハリソン翼(2年)の推進力を生かしつつ、押し込む時間を創出する。

 対する東山は、「やっぱりまだまだ山田に慣れていないというか、このプレースピードに慣れていない子が結構いましたね」と口にした真田やMF北村圭司朗(2年)、左SB上田幸輝(2年)など、単騎での仕掛けには可能性を感じさせるも、グループでの前進はままならず、なかなかゴールを予感させるような手数を繰り出せない。

 すると、34分に違いを見せたのは、新エースとしての期待を寄せられているストライカー。粘り強く繋いだ奈良岡のパスから、相手DFラインの背後を巧みに取った小湊は、GKとの1対1も冷静に制し、ボールをゴールネットへ流し込む。「『背後に流してもらえれば、自分の足の速さなら行けるな』と思って、要求したらポンと裏に抜けたので、あとはキーパーを見ながら、後ろからスライディングに来る足は見えていたんですけど、そこは気にしないようにして、上手く流し込めました」と振り返る小湊の先制弾。青森山田が1点をリードして、前半の45分間は終了した。

 昨年は3度の対戦で、すべて敗戦を突き付けられた東山も、このまま引き下がるわけにはいかない。交代カードも切りながら、反撃態勢を整えると、後半20分には決定機。MF松橋啓太(2年)が投げたロングスローから、こぼれをMF菊山和椰(2年)は丁寧に裏へ。走ったDF鈴木康平(2年)が枠内シュートを打ちこむも、青森山田のGK代田昂大(2年)がビッグセーブ。川口能活に憧れているという新守護神が、好守を披露する。

 ピンチの後にチャンスあり。その1分後の21分。バイタルエリアで仕掛けた小湊は、左に流れながらエリア内へ侵入。対応した東山ディフェンダーに倒されると、主審はPKのジャッジを下す。キッカーは小湊自ら。「選手権の時もPK練習をしていて、監督にも『PK戦になったら、オマエは行くぞ』と言われていたので、そこは自信を持って蹴れました」というエースは、きっちり右スミへキックを成功させる。2-0。点差が広がった。

 29分。今度は左サイドでスムーズなパスワークを披露すると、途中出場のMF芝田玲(2年)、MF小柳一斗(2年)と回ったパスから、サイドを駆け上がった右SBの渡邊が右足一閃。軌道は左スミのゴールネットへ鮮やかに突き刺さる。3-0。青森山田が止まらない。

 意地の一撃は終了間際の44分。味方が競り勝ったこぼれを、ミドルゾーンで拾った真田は、ゴールまで30メートル以上はある位置から突如としてシュートを選択。綺麗な弧を描いたボールは、GKの頭上を破ってゴールへと吸い込まれる。「先生(福重良一監督)もよくドライブのシュートで思い切って狙えば入るみたいな話をずっとしていたので、そのイメージで思い切って打ったら入りました」と口にした真田のゴラッソで東山も一矢を報いたものの、ファイナルスコアは3-1。青森山田が“ポスト三冠”となる2022年を、快勝という形で滑り出すことに成功した。

 恒例とも言うべき試合前のウォーミングアップから、青森山田の勢いは際立っていた。先頭に立って大声を張り上げていた中山は、「去年は本当に凄い人たちがいたので、なかなか自分から何かを出さなくても仕上がっていた部分もあったと思うんですけど、今年は去年より力がない中で、自分が経験したものをどんどん出して、そのレベルに近付けていかないといけないので、練習から常によりプラスの方向に行ける声掛けを考えています」ときっぱり。主力としての自覚が言葉の端々にくっきりと滲む。

 昨年はプリンスリーグ東北が主戦場だった代田も、トップチームの守護神に求められる役割の意味をこう語っている。「1試合を通じて“被シュートゼロ”を目指すというのは本当に凄いことなので、プレッシャーは感じていますけど、今の自分たちは結構シュートを打たれているので、まだまだだと思います。1本を打たれて、その1本が決まってしまったらキーパーのせいなので、そこに掛かる責任は大きいですね」。築き上げられてきた“基準”も、3月の時点で確実に引き継がれ始めているようだ。

 今シーズンの主将を務めるDF多久島良紀(2年)が負傷離脱中ということもあり、チームをまとめる役割を託されている中山に今シーズンの目標を問うと、こういう答えが返ってくる。

「目の前の1試合1試合を全力でやりたいです。フィジカルや走ったり、頑張ったりという面もそうですし、コミュニケーションを取ったりと、自分たちにできることを全力でやろうとみんなで話していますし、僕たちは青森山田なので勝利にもこだわって、チームの価値を上げていった結果がインターハイ優勝、プレミア優勝、選手権優勝という結果に繋がっていけばいいと思うので、まずは先を見ずに、謙虚に1試合1試合やっていけたらと思います」。

 王者に息衝く伝統の力。青森山田。間違いなく今年も、強い。

(取材・文 土屋雅史)

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