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[MOM3862]G大阪ユースGK足立優(3年)_東口順昭に憧れてGKを始めた守護神が、仲間の想いも背負ったPKストップでチームを救う!

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ガンバ大阪ユースの守護神、GK足立優

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.29 高円宮杯プレミアリーグWEST第9節 G大阪ユース 0-0 広島ユース OFA万博フットボールセンターB]

 絶体絶命のピンチにも、意外と冷静な自分に気付く。だって、もう止めるしかないんだから。腹を括って、ゴールマウスに立つ。この状況を楽しむ余裕が、守護神にはあった。

 開幕からリーグ4連敗中と苦しんでいたガンバ大阪ユース(大阪)の護り人。GK足立優(3年=ガンバ大阪ジュニアユース出身)の完璧なPKストップが、チームに勝ち点1をもたらすことになる。

 サンフレッチェ広島ユース(広島)と対峙したホームゲーム。立ち上がりからG大阪ユースが攻勢に打って出る中で、なかなかゴールを決められない状況が続くと、前半31分にPKを献上してしまう。

「履正社戦でも同じような位置で前半にPKになったので、正直『またか』と思ったんですけど、『自分が止めないといけないな』と」。気持ちを切り替えて、ふと周囲を見渡すと、ある光景が視界に飛び込んでくる。

「佐野コーチから『ボールをしっかり見ろ』という声が聞こえたので、まずはボールをしっかり見ることを意識しようと思ったんですけど、駆け引き的なことで言うと、相手はキッカーをジャンケンで決めていたんですよ。勝った人が蹴りに来たので、『そういう人は気が強いかな』と思って、振り抜いてくるかなって」。

 ギリギリまでコースを見極めようと、キッカーを観察する。「ちょっと右は意識しながらも、最後はボールをしっかり見て反応しました」。やっぱり、右だ!確かな感触とともに、ボールを丁寧に、それでいて完璧に弾き出す。

「止めた実感はなかったですね。『あ、止めたんや』って。でも、次がコーナーキックやったので、切り替えなと思ったんですけど、陸人が一番最初に来てくれたので、嬉しかったです(笑)」。

 誰よりも真っ先に足立へ抱き付いたキャプテンのDF桒原陸人(3年)は、笑いながらその時をこう振り返る。「『足立やったら止めるぞ』とは言っていたんですけど、ホンマに止めるとは思っていなくて。高1の時は寮で同部屋やったので(笑)、嬉しかったですね。ホンマに足立に助けられました」。



 このPKストップは大きな試合の分水嶺となり、試合はスコアレスドロー。勝利までは引き寄せられなかったものの、これが今シーズン初の勝ち点獲得であり、初の無失点ゲームとなる。「アレで相手に流れを持ってこさせなかったのは良かったですけど、僕のPKだけで引き分けたわけじゃないので、後半も危ないシーンはある中で、ディフェンス陣が身体を張ってくれましたし、いろいろターニングポイントはあったと思います。ただ、キーパーの一番の仕事はやっぱり無失点に抑えることなので、最低限の仕事はできたかなと」。そう話すと、足立は少しだけ安堵の表情を浮かべてみせた。

 この日もベンチに入ってたGK上西駿大(3年)は同い年のチームメイト。ジュニアユース時代からともにポジションを争ってきた彼への想いを尋ねると、次々に言葉が溢れ出す。

「もう一言では言い表せない深い関係ですね。小5ぐらいからの知り合いで、ジュニアユースでもユースに入っても、お互いに出たり出んかったりで、本当にずっと切磋琢磨している関係なので、良いライバルであり、良い仲間です。駿大は人柄が凄く良いので助けられていますし、駿大が試合に出た時も悔しいという気持ちより、『一緒に頑張ってきたから、頑張ってほしい』と思える存在で、そういうキーパーは少ないんじゃないかなと思うので、練習からも良い関係を築けています」。

 アカデミーで一緒にプレーするのは、今年が最後の1年。限られた時間とはいえ、ともに競い合っていこうという気持ちには微塵の変化もない。

 憧れの存在は、このポジションをやりたいと思わせてくれた選手だという。「もう東口(順昭)選手ですね。小4の時に初めて万博でプレーを見て、それで『カッコいいな』と思ったことがキッカケでキーパーを始めたんです。ガンバのジュニアユースも東口選手がいるから入ろうと思いましたし、ずっと目指しているキーパーなので憧れています」。

 実は一度だけ、ピッチで時間を共有したこともある。「トップチームの練習に行った時に話させてもらったんですけど、凄く優しい方です。『ユースどうなん?』みたいな感じで凄く気さくに話しかけてくれました。憧れの人なのでムチャクチャ緊張しましたよ(笑)。でも、常に100パーセントでやってらっしゃって、1回の練習でも凄く刺激を受けました。それこそ東口選手は東口選手のセーブでチームを勝たせているので、自分もまずはゼロでしっかり抑えられるキーパーになりたいなと思います」。

 まだまだこのアカデミーで、自分にやれることはたくさんある。最高のチームメイトと、目指すべき憧れの“先輩”に囲まれた素晴らしい環境の元、足立が描く成長曲線はさらにこの先へと、力強く伸びていくに違いない。

(取材・文 土屋雅史)

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