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プリンス関東1部2部同時参戦で選手層により厚み。矢板中央が3-0で栃木決勝進出

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前半35分、矢板中央高MF柏木康介が先制ゴールを喜ぶ

[6.14 インターハイ栃木県予選準決勝 矢板中央高 3-0 さくら清修高 栃木グ]

 令和4年度全国高校総体(インターハイ) 「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技栃木県予選は14日に準決勝を行った。第1試合は4連覇を狙う矢板中央高が公立のさくら清修高に3-0で勝利。矢板中央は19日の決勝で佐野日大高と戦う。

 矢板中央は今季、プリンスリーグ関東1部を戦うAチームに加えてBチームもプリンスリーグ関東2部に昇格した。トップチームはプリンスリーグ関東1部、2部メンバーの40名体勢で活動。高橋健二監督が「プリンスリーグの経験値は大きいかな」と語るように、より強い相手の中で揉まれているBチームからMF吉川侑輝(3年)やMF長田皐汰(3年)、FW安田優斗(3年)、CB 梶谷皇光斗(2年)がAチームの先発に加わるなど、例年以上の競争をすることができているようだ。

 高橋監督は「とにかくずば抜けた選手はいないけれど選手層は厚いので、競争して出てきてもらいたい」と加える。伝統となっているゴール前の守りの堅さや縦に鋭い攻撃を表現し、過去5大会の選手権で3度の3位。今季、例年以上の競争で強化を図りながら日本一を目指すチームが、隙を見せずに栃木決勝へ進出した。

 4-4-2システムの矢板中央はGKが上野豊季(3年)、右SB勝田大晴(3年)、CBが梶谷と畑岡知樹(3年)、左SB木村匠汰(3年)、中盤がMF田邉海斗主将(3年)と吉川のダブルボランチ、右SH長田、左SH高橋靖一(3年)、2トップは安田と高橋秀斗(3年)がコンビを組んだ。

 一方、さくら清修は準々決勝で伝統校の真岡高を1-0で下し、公立校で唯一4強入り。17年に関東大会予選を制しているが、インターハイ予選での4強入りは同校にとって初めてだという。4-3-3システムのGKが小森寛人(3年)、右SBテ・フェイルス(3年)、CB君島玲央(3年)、CB伊藤圭汰(3年)、左SB大貫遙久(3年)、ダブルボランチが主将の落合大翔(3年)と和氣渚央(3年)、トップ下が長澤大輝(3年)、3トップは右から荒牧大凱(3年)、物井春翔(2年)、秦野颯(3年)。先発11人中9人が中体連出身の公立校が王者に挑戦した。

 立ち上がりから矢板中央がパワフルな攻撃を連続。2トップへのロングボールに加え、木村の対角のフィードでハイサイドを突く。そして、SB勝田の鋭い仕掛けなどからセットプレーを獲得すると、木村が低い弾道のロングスローを連発。パワーで公立校を飲み込もうとする。

 だが、「下馬評を覆すことをテーマ」(齋藤竜偉監督)に矢板中央対策を練ってきたさくら清修は、ゴール前でのセカンドボールを重視。勇気を持って飛び出すGK小森やCB君島、CB伊藤が1つめの競り合いで健闘し、そのこぼれ球も落合らが相手より速く反応してクリアしていく。
 
 また、守備一辺倒になるのではなく、「ウチがスコアを動かしに行くんだぞ、という気持ちを全面に出して戦う」(齋藤監督)ことを表現。狭い局面でのパス交換や秦野、長澤のドリブルでボールを運び、左SB大貫がクロスへ持ち込んで見せる。

 19分、矢板中央はロングスローのこぼれから投入直後のFW井上詠登(3年)が決定的な右足シュート。だが、さくら清修はGK小森のファインセーブで逃れる。また、相手のカウンターを君島がタックル一発で阻止。それでも、29分に攻撃の要であるMF柏木康介(3年)を投入した矢板中央の迫力、スピードのある攻撃の前に、さくら清修は苦しいクリアが続いてしまう。

 迎えた35分、矢板中央はこぼれ球を拾って繋ぐと、最後は田邉の落としから柏木が右足シュートを叩き込んで先制した。その後も柏木の抜け出しや木村のアーリークロスなどでゴール前のシーンを創出。注目MFの田邉は攻守両面で力強い動きを見せ続けていた。後半開始からFW坂本怜輝(3年)、同7分にFW若松優大(3年)を加えた矢板中央は9分、左ロングスローから田邉が競り勝ち、若松が左足で狙う。

 さくら清修はこのピンチを何とか凌いだものの、矢板中央は直後の10分、木村が右サイドからロングスロー。さくら清修DFはクリアしきれず、最後は坂本が頭でゴールへ押し込んだ。気落ちせずに反撃するさくら清修は、11分にFKのこぼれから長澤が連続シュート。だが、矢板中央はシュートを連続でブロックしてゴールを許さない。

 後半半ば、矢板中央はMF鳥塚翔真(2年)、MF高橋海斗(3年)を送り出し、さくら清修もCB糸井陽輝(3年)、MF松本響(2年)、FW高橋来知(3年)をピッチへ。GK上野のパントキックや柏木の鋭いドリブルを交えて攻め続けた矢板中央は33分、浮き球を繋ぎ、最後は木村のヘッドで3点目を挙げた。この後、さくら清修はMF齋藤主税(3年)とFW土谷春人(3年)、矢板中央はMF 加藤倭(3年)を投入。畑岡を中心に集中した守りを続けた矢板中央が、被シュート3本で無失点勝利を収めた。

 矢板中央の高橋監督はチームの現状について、「去年のレギュラーが2人(畑岡と田邉)しか残っていなかったので経験値のところが不安だったんですけれども、よく一人ひとりが戦う気持ちを出して矢板中央らしい戦いが出来ていると思います」と評価。プリンスリーグ関東1部では鹿島ユースや浦和ユースから白星を挙げるなど、運動量や力強さ、粘り強さという強みを活かして勝ち切るチームになってきている。

 田邉はチーム内競争の激しさについて説明する。「(プリンスリーグ関東)1部2部で色々な選手が出れているのは大きい。毎週入れ替えがあって、スタメンが変わって、競争率は凄く高いんじゃないかなと思います。自分も選ばれない時期もあったし、自分もポジション奪われるんじゃないかという危機感を毎日持っていて、本当に競争率は高いので良い傾向だと思います」。注目MF田邉も先発が確約されないほど競争のレベルは高い。

 矢板中央のインターハイの最高成績は全国16強。今年、競争力の高さを活かして、その上の成績を勝ち取るか。まずは19日の県予選決勝に集中。田邉は「無失点で勝って全国大会に良い形で繋げていきたい。守備でもう一個前に行く部分、また攻撃でもう一段階厚みを出して、自分たちの高さだったりを最大限に活かせたらなと思います」と意気込んだ。決勝を制し、全国大会へ向けてより意識の高い競争を行う。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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