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[MOM3944]九州国際大付FW山本悠太(3年)_託されたジョーカーの矜持。土壇場での決勝点で劇的勝利の立役者に!

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九州国際大付高に勝利をもたらす決勝点をマークしたFW山本悠太

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.24 インターハイ1回戦 関東一高 0-1 九州国際大付高 徳島スポーツビレッジピッチB]

 自分の役割は十二分に理解している。みんなが必死に、懸命に繋いできてくれたバトンを、ゴールという結果へと結びつける。それこそが“ジョーカー”の矜持であり、ストライカーとしてのプライドの発露だ。

「前半からキャプテンの米山をはじめ、キーパーも含めて身体を張って守備をしてくれるので、自分はとにかく守備でも攻撃でも全力で走って、チームに貢献したいと考えていますし、リーグ戦を通しても、後半から流れを変えていくような役割で使われているので、今日の試合も流れを変えられて、得点を獲れたのはとても良かったと思います」。

 昨年度の選手権で全国4強を経験した難敵撃破の立役者。九州国際大付高(福岡)の9番を背負うスピードスター。FW山本悠太(3年=小倉南フットボールクラブジュニアユース出身)の執念弾が、チームの劇的な勝利を鮮やかに手繰り寄せた。

 今か、今かと、待ち侘びていた。関東一高(東京)と対峙した1回戦。前半から九国大付は好リズムでゲームを進めていたものの、後半に入ると少しずつ押し返され始める流れの中で、アップエリアから試合を見つめていた山本は、その出番を待ち侘びていたのだ。

 後半22分。とうとうベンチから声が掛かる。「ウチで一番足りていないアタッカーのどんどん仕掛けていく姿勢と得点力があって、ああ見えて意外とヘディングも強くてターゲットにもなれるんです」とはチームを率いる江藤謙一監督。まさにジョーカー起用。勝敗を左右する重要な局面で、9番がピッチへと解き放たれる。

 30分。相手のパスミスをかっさらった山本は、そのまま少し運びながら右足一閃。しかし、軌道は枠を越えてしまう。思わず頭を抱えるしぐさを見せたものの、すぐさま切り替え、再びその視線を前に向けると、ゴールの女神はもう一度だけ微笑みかけるチャンスを、このストライカーに与えてくれる。

 33分。右サイドからのスローイン。MF濱中翔太(2年)のロングスローを、キャプテンのDF米山凛(3年)が粘って残し、DF井上陽斗(3年)はループシュートにトライ。フワリとした軌道はクロスバーに当たって跳ね返ったが、「味方が打った時に、何かしらが起きるというのはわかっていた」と言い切る山本は、誰よりも速くこのこぼれ球に反応する。

「たまたまバーに当たって、自分のところに転がってきたという形で、最初は正直『入るかな』と思ったんですけど、やっぱり詰めることは練習から意識していたので、そこがちゃんとできたと思います」。

 丁寧にプッシュしたボールは、ゴールネットへと到達する。土壇場での先制点は、そのまま決勝ゴール。「自分にとっては初めての全国大会で、そこでチーム一丸となって獲れたようなゴールなので、素直に嬉しさがこみ上げてきました。持ってましたね」と笑ったヒーローに「今日は主役になれたなという感じ、あるんじゃないですか?」と水を向けると、「少しはあります(笑)」とニコリ。こうしてストライカーの仕事は、勝利という最高の形で完遂された。

 2回戦であっても、あるいは勝ち上がったその先のステージであっても、山本のスタンスは変わらない。「個人としては後半からという短い時間の出場になるかもしれないですけど、それでもチームに貢献できるように、とにかく攻守に走って、味方の選手にアシストしたり、自分でゴールを決めて、チームの流れを変えられるようになりたいです」。

 続けた言葉に、携えた自信と覚悟が窺える。「チームとしては歴代最高記録が3回戦進出ということで、そこを超えられるように頑張りたいと思います」。そのためには、このジョーカーの躍動が必要不可欠。山本が主役級のパフォーマンスを披露し続ければ、きっと九国大付はさらなる歴史の扉を力強くこじ開けていくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
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