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古巣と初対戦の大宮・下平「泣いてないですよ!!」

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[5.6 J1第10節 大宮1-0G大阪 NACK]

 試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、大宮アルディージャのDF下平匠は、ユニフォームで顔を隠した。ミックスゾーンでは「別に泣いてないですよ」と笑って否定したが、チームメイトのFWチョ・ヨンチョルは「(下平)匠くんが泣いていたのを見て感動した」と、明かした。

 G大阪の下部組織で育っていただけに、この試合に賭ける気持ちは強かった。前日まで「頭痛があった」というように体調は万全でなく、スタメン出場も当日の朝にドクターと話し合って決まった。1-0で古巣に勝利した試合を終えて「少し力が抜けて、逆に良かったかもしれない」と、笑顔を見せた。

 ボールを持つたびにアウェーのG大阪サポーターからはブーイングが飛んだ。「聞こえていましたよ。意識してくれたことは嬉しかったし、あらためて熱狂的なサポーターが多いなと思いました」と振り返る。それをプレッシャーに感じることはなく、普段通りのプレーを見せた。下部組織の同期でもあるG大阪のMF倉田秋が「相変わらずキックとポジショニングはうまいし、攻撃参加も良かったです」と言うように、正確にパスをつないで攻撃をビルドアップした。前半34分にはミドルシュートを放ち、後半36分にもFW長谷川悠の決定的なヘディングを演出するクロスを送るなど、ゴールにも迫っている。

 各選手の特徴も分かっていた。展開に変化を付けようと、MF佐々木勇人を起用したが、どう対応するべきかも分かっていた。「(佐々木)勇人くんは、仕掛けられる選手だったので、仕掛けられて抜かれるより、早めにクロスを上げさせれば、うちは高さがあるので中で勝てると思った」と、現所属チームのストロングポイントにどうやって古巣をはめるかを考えてプレーした。また、「個々の特徴は話しました」というようにスカウティングでもチームに貢献していた。

 思い通りの展開で試合を終えたが、古巣がこのまま終わるとは考えていない。「(G大阪は)地力があるし、個々の能力も素晴らしい。今日も圧倒的に支配されていたし、このまま終わらないと思う」と語り、自身のチームの課題を口にする。「追加点を挙げることができなかったし、最終ラインが下がってしまう。今はそれがはまっていて、ホームでも連勝できていますが、もう少し前でボールを取りたい。理想を言えば、相手をもっと追い込んでいきたい」と話した。慣れ親しんだ敵地・万博での再戦は8月4日。そこで再び成長した姿を見せて、喜ぶためにも、大宮の下平は、この日に出た課題に取り組んでいく。

(取材・文 河合 拓)

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