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[第18回フットサル全日本選手権]フウガすみだの残り4秒弾は、なぜ生まれたか

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[3.17 フットサル全日本選手権 決勝 名古屋4-4(PK4-3)フウガすみだ 代々木]

 Fリーグを6連覇中の名古屋オーシャンズを、ここまで追い詰めたチームもなかっただろう。「今シーズン、無敗で最後まで戦えましたが、最後の最後に一番厳しい試合が待っていましたね」。そう感想を述べたのは、日本代表のゴールマウスを10年以上も守ってきたGK川原永光だ。

 17日に行われたフットサル全日本選手権の決勝で、名古屋を追い詰めたのは、Fリーグ準加盟のフウガすみだだった。前半5分にFP岡山和馬のゴールで先制したフウガすみだは、常に先手を取り続けた。3-3で5分ハーフの延長に突入すると、延長前半4分に名古屋はFP吉川智貴のゴールで勝ち越す。だが、ここでもフウガすみだは、執念を見せた。

 残り時間は4秒。敵陣でキックインを得ると、FP宮崎暁はゴール前に速いボールを入れる。そこに走り込んだのが、フウガすみだのFP半田徹也とFP太見寿人だった。半田に当たったボールは、さらに太見にも当たって、ゴールに転がり込んだ。

 FPリカルジーニョは、信じられなかったと振り返る。「正直、残り時間が10秒くらいでプレーが切れたときに、『勝った! 目標を達成できた』と思ってしまいました。あらためて、1秒、2秒で勝負が決まるんだと痛感させられました」と、油断があったことを認める。

 直前でアジウ監督の指示を受けて、ベンチに下がっていたFP森岡薫は、嫌な予感はしていたという。「ファイルフォックス(前所属チーム)でプレーしたときも、全日本選手権の予選で同じように決められていたんです。だから、イヤな予感はしていたので、あのまま(指示を)無視して、代わらなければ良かった。そうしたら、絶対に決めさせなかったのに」と、唇を噛んだ。

 太見はゴールが取れると信じていたという。「残り2、3秒だったし、ミヤ(宮崎)がゴール前に蹴ってくるなというのは分かっていました。もう最後のプレーだから突っ込もうって。でも、今シーズン2回名古屋とは対戦していたのですが、両方とも点が取れていたので、最後まで『絶対に今日も点が取れる』って思いながらプレーしていました」。混戦の中でゴールを決めた太見は、自分が決めたんだ!とアピールするように、自身の胸を指さしながら、喜びを爆発させた。

 最後までゴールを確信していたフウガの選手たち。そして、一瞬の隙が王者・名古屋に生まれた結果、あのゴールは決まった。

 PK戦の末に、フウガすみだは敗れた。だが、Fリーグに名古屋と互角に戦えるチームがいないといわれる中で、フウガすみだは一発勝負のトーナメント戦の中とはいえ、互角の戦いを繰り広げた。この試合を見たほとんどの人たちが、この両クラブの再戦を見たいと思ったはずだ。

 フウガすみだのFリーグ昇格を願っているのは、決して観客だけではない。「優勝できましたが、勝ち切れていないから、なんかモヤモヤが残っているんですよね。(フウガ)Fリーグに上がってきてほしい。もう一回、こういう試合をやりたいし、決着をつけたい」。2年連続でFリーグ得点王に輝く森岡も、フウガすみだとの再戦を熱望した。
(取材・文 河合拓)
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