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[MOM708]前橋育英FW外山凌(3年)_2年越しの矜持

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 全国高校選手権1回戦 前橋育英5-1宮古 駒場]

 初戦を大差で勝っても笑顔が見られなかった前橋育英(群馬)。それはこの試合で2ゴールをマークしたFW外山凌(3年)も同じだった。「ただ点を取ったというだけで、ピッチに慣れるまで時間がかかりました。ドリブルももっとできる」。試合後、厳しい表情で振り返るその姿からは、勝利の喜びや満足感が微塵も感じられない。

 10月に左もも前部を肉離れした。それがクセになってしまい、まだ全快とはいえない。県予選では30分までの出場が限度だったが、この日は初めてフルタイムでプレーした。「選手権は緊張しました。いつもなら移動中のバス内でも結構しゃべる方なのですが、周りのみんなもシーンとしていて…。試合もいつもとまったく違いました。ピッチに慣れなくてドリブルで持っていけなかったのは僕だけじゃない。みんなもいつもはしないようなミスをしていました」。

 歴戦の前橋育英であっても緊張してしまうという選手権という舞台。その裏には前橋育英だからこその事情もある。「昨年、県予選決勝で敗れて選手権に出ることができませんでした。その時、僕はFWで出場していて。先輩たちが涙を流しているのを見て本当に申し訳なく思った。その時、先輩たちに次は絶対に(選手権に)行ってくれと言われたんです。そのこともあるし、今年はケガで選手権にはみんなに連れてきてもらったという思いもある。だから今大会では自分が点を取ってみんなに恩返しをしたいんです。だから初戦で勝って満足するのではなく、次もその次も、ひとつひとつやっていきたいと思います」。ポジションはワントップから左SHへと移った。その方が得意のドリブルが生きてくる。普段からアザール(チェルシー)や宮市亮(ウィガン)など、同ポジションの選手のプレーをまとめた映像を見てイメージトレーニングをしてきた。

「今日の2ゴールはともに左足で奪ったもの。左足にボールをもっていってのシュートはずっと練習してきた形でした」。初戦での収穫はこの1点のみ。国体選抜がずらりとそろう才能集団の中にあっての「背番号10」。それは部員172名と鎬を削りあって勝ち取ったエースナンバーでもある。その誇りと意志を胸に、チームを国立へと導けるか。さしあたり、2回戦の鹿児島城西戦がひとつのポイントとなりそうだ。「鹿児島城西とは春のプーマカップで対戦していて3-2で勝っています。その時2ゴールしているので、次の試合ではマークが厳しくなることも考えないといけない。打ち合いに持っていかせないようにします」。外山凌の本領発揮は、まだまだこれからだ。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文/伊藤亮)

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