beacon

[選手権]初戦敗退も、PKを止めた聖光学院GK高橋「選手権で区切りと思ったけど…」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[1.2 全国高校選手権2回戦 東海大仰星1-0聖光学院 駒沢]

 全国高校サッカー選手権は、前後半各40分で勝敗が争われる。3年生の選手たちにとっては、高校生活の集大成だ。80分という短い時間は、数年分の感情を凝縮するような濃密なモノとなる。今大会が初出場となった聖光学院(福島)のGK高橋南斗(3年)も、さまざまな感情に包まれた。

 前半39分、相手の中盤から出たロングボールに対し、飛び出すかどうするか躊躇した。東海大仰星のFW日下部孝将(3年)にボールを取られ、ゴールを決められた直後に襲ってきたのは『後悔』だった。

「飛び出せば良かったんですよね。僕らが練習している人工芝だと、もっと弾むので思い切って飛び出せたと思うのですが、今日の芝はあまり跳ねなかった。加えて、向かい風でボールが伸びて来なかったので。でも、9番(日下部)は狙っていましたし、そこを狙ったボールも出てきた。あそこで迷ったのがいけなかった」

 後半10分には、強い『責任』を感じた。山田喜行監督は「あそこで決められていたら、もっと大敗していたかもしれない」と振り返る。チームメイトが、PA内で東海大仰星のMF萬雄大を倒してしまい、PKをとられてしまった場面だ。

「あそこで止められなかったら、この試合は終わると思いました。いろんなことを考えましたよ。何かの雑誌で『右利きのキッカーは、6割がGKの右側に蹴る』って書いてあるのを読んだな、とか。でも、最後は無我夢中でした。『気持ちが弱ければ、コースに飛んでいても、止めきれない』と思って、思いっきり飛んだ結果です」

 事前に持っていたデータでは、4割以下しか蹴らないという左に飛んだ高橋は、ボールを枠外へ弾き、一瞬の『歓喜』に浸った。

 しかし、その後も聖光学院は、なかなか反撃に出ることはできず。80分を終えたとき、高橋の頬には涙がつたった。ロッカールームで『悲しみ』、『悔しさ』、『寂しさ』を流し終えた高橋に残ったのは、『感謝』だった。

「元GKの山田監督も、素晴らしい指導をしてくれましたし、3人いた高校の先輩GKも、みな素晴らしい人たちでした。その人たちにいろんなことを教えてもらったから、僕は全国の舞台に立てました。それに中学校時代、GKを始めたときに指導してくれた2つ上の岩崎翔先輩には、一番感謝したいです。あ、それと両親も!! 僕は最初、身体能力を評価してもらって聖光学院に誘ってもらえたので。両親はバレーで国体に出ているし、姉もバスケで国体に出ていたので、僕も絶対に全国に出ないといけないっていうプレッシャーもあったんですけどね(笑)。僕も全国に出られて良かったです」

 実は、この選手権を最後に、サッカーは引退しようと思っていたという。全国の舞台に立つ目標も達成でき『悔いはなし!』のはずだったが、試合終了のホイッスルから数十分後の高橋は迷っていた。

「これで区切りをつけようと思っていたんですよ。でも、こうやって、あらためて『引退』って考えると……続けたくなりますね(笑)。上のレベルを経験して、もっとうまくなりたくいなとも思いました。東北学院大に進学することは決まっているので、サッカーを続けるか、もう一回、これから考えます」。

 誰もが一度は高校サッカーを引退する。それでも、サッカーはきっと続いていく。自分から、その扉を締めない限り。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 河合拓)

▼関連リンク【特設】高校選手権2012

TOP