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[選手権]V候補対決は桐光学園が4発勝利!J内定ダブルエースの四中工ねじ伏せる!

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[1.2 全国高校選手権2回戦 桐光学園4-2四日市中央工 三ツ沢]

 第91回全国高校サッカー選手権は2日、2回戦が行われ、16強が決まった。ニッパツ三ツ沢球技場の第2試合では、昨年度準優勝の四日市中央工(三重)と今年度のプリンスリーグ関東1部を制した桐光学園(神奈川)のV候補同士が激突。桐光学園がFW野路貴之(3年)の2ゴールなど4-2で勝ち、佐賀商(佐賀)と対戦する3回戦(3日)へ進出した。

 日本クラブユース選手権(U-18)大会優勝の柏U-18や同準優勝の横浜FMユース、F東京U-18などのJクラブユース勢や昨年度高校日本一の市立船橋などが覇権を争うプリンスリーグ関東1部で優勝した実力は伊達ではない。MF中村俊輔(現横浜FM)を擁して決勝進出した96年度の準優勝越え、日本一を目指す桐光学園が、前回大会得点王のFW浅野拓磨(3年、サンフレッチェ広島内定)と同得点ランキング2位のFW田村翔太(3年、湘南ベルマーレ内定)のJ内定2トップなど、昨年からレギュラー8人を残す四中工を寄り切った。

 強風が吹き付けたこの日、コイントスで勝って風下を選んだ四中工を前半、桐光学園が猛プッシュする。開始30秒にMF菅本岳(3年)が放った決定的な左足シュートはゴール左へ外れたものの、風を上手く利用して相手を押し込む桐光学園は5分に左アーリークロスからMF橋本裕貴(3年)、15分にもMF松井修平(3年)がダイレクトでつけた縦パスから野路がシュートへ持ち込むなど、長いパスを交えながら効果的な攻撃を繰り出していく。

 ただ序盤はディフェンスラインが我慢強く対応していた四中工は、中盤のダイレクトでのパスワークや右SB川本将太郎、左SB藤山智史(ともに3年)の技術と突破力を活かして反撃。18分には浅野の中央突破から川本がグラウンダーのアーリークロスを送るなど、強烈な向かい風の中、テンポよくボールを動かしていた。ただ樋口士郎監督が「奪ってからのミスが非常に多かった」と振り返った四中工は10番MF松尾和樹(3年)が怪我明けだった影響もあったか、細かなミスが多く、浅野と田村翔のダブルエースにいい形でボールをつなぐことができない。

 桐光学園はU-18日本代表CB諸石健太(3年)が前線で浅野に入ってくるボールを判断良く遮断していたものの、相手のダブルエースにマンマークをつけていた訳ではない。佐熊裕和監督が「今までやってきたことをやろう」と選手たちを送り出したように、普段通りのゾーンディフェンスで相手の攻撃を封鎖し、危険な位置に入り込ませることなくインターセプト。そして得意のカウンターから連続ゴールを奪って試合の流れを傾けた。

 まずは25分、桐光学園は右SB大田隼輔(3年)がPAへロングフィードを送ると、走りこんだ野路が絶妙なタイミングでヒールパス。これを元ラガーマンのFW市森康平(3年)が右足でゴールへ突き刺した。2トップの鮮やかな連係から生まれたファインゴール。地元・桐光学園と前回準Vの四中工との注目カードに駆けつけた観衆14,500人のスタンドが揺れる。桐光学園はさらに35分、GK長津大裕(2年)のパントキックが風に乗ってPAまで到達。対応を誤ったDFの前に潜り込んだ野路が右足で合わせると、ボールは飛び出していたGKの横を抜けてゴールへと吸い込まれた。

 桐光学園の勢いは止まらない。直後の36分には橋本の右クロスをファーサイドの野路がバックステップを踏みながら頭でプッシュ。GKの前を横切ったボールはそのままゴール右隅へ吸い込まれた。四中工にとっては“まさか”の0-3ターン。それも前半をシュートゼロで終えて完全に追い込まれた。それでもハーフタイムに樋口監督が「相手が風上で3点取れるんやったら、ウチも3点取れるぞとハッパをかけた」というチームは風上に立った後半、猛追を見せる。4分に桐光学園が立て続けに迎えたビッグチャンスをGK中村研吾(2年)が2本連続スーパーセーブで止めてチームを鼓舞すると、13分に浅野のポストプレーからMF川島大路(3年)が左足シュート。これは桐光学園GK長津のファインセーブに阻まれたものの、ようやく初シュートを放ったチームはこの直後のCKから連続ゴールを決める。

 MF田村大樹主将(3年)の左CKからファーサイドのCB坂圭祐(2年)がタイミングのいい跳躍から右足で追撃ゴールを決めると、15分には再び田村大の左CKから坂が打点の高いヘッドでゴールを破った。3点ビハインドはわずか2分間で1点差に。完全に息を吹き返した東海の名門は、一気に相手を飲み込もうとする。そして18分、浅野が左サイドでDFを振り切ると、中央の田村翔が後方へ落として田村大が決定的な右足シュート。だが、この決定的な一撃はクロスバーを叩いてしまう。

 これが勝負の分かれ目だった。逆に精度の高いカウンターで何度も四中工を脅かしていた桐光学園の技術と勝利への執念が結実する。29分、桐光学園は菅本の左クロスをファーサイドから「信じて走りこみました」という橋本が頭で合わせて、相手をねじ伏せる4点目を挙げた。四中工は後半アディショナルタイムに田村翔の豪快な右足FKがGKに阻まれて試合終了。昨年逃したあと1勝、そして日本一の夢は初戦で潰えた。

 2ゴールを決めた野路が「ここがヤマだと思っていた」という四中工戦。桐光学園は相手のストロングポイントを封じるのではなく、自分たちのサッカーを貫いて勝ち切った。橋本は「初戦を勝ったけれど、満足しないで、優勝目指してやっていく」と宣言した。日本一を目指して臨んでいる今大会。難関を突破したが、これで終わりではない。チームの目標は全国制覇。このまま頂点へ向かって突き進んでいく。

[写真]後半29分、桐光学園・橋本がダメ押しの4点目を決める
(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2012

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