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[選手権]「置田をこのまま帰らせていいのか」星稜GK置田が恩返しのPKストップ

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[1.5 全国高校選手権準々決勝 星稜1-1(PK5-4)東海大仰星 フクアリ]

 汚名返上のセービングは、チームメイトに恩返しする渾身のセーブでもあった。1-1で突入したPK戦。先攻・東海大仰星(大阪)の一人目、MF萬雄大(3年)のキックを星稜(石川)のGK置田竣也主将(3年)が横っ飛びで弾き出した。

「7割は勘、3割は(助走の)入り方。相手の10番(萬)は2回戦でPKを一回蹴っていたので、その情報も頭にあった。方向だけは頭に入れていた」。萬は2回戦・聖光学院戦でもPKを蹴ってGKに止められていた。同じ左方向に飛んだ置田の“読み勝ち”だった。

「自分のミスで失点して、申し訳ない気持ちで戦っていた。仲間が助けてくれて、PK戦まで持ち込んでくれて、自分が止めるしかないと思っていた。仲間に助けられた気持ちがあったので、その仲間ともう一回サッカーをしたいと強く思った」

 前半39分の失点シーン。味方DFからバックパスを受けた置田がコントロールをミスし、東海大仰星のFW日下部孝将(3年)にボールを奪われた。日下部からパスを受けたFW田中翔(3年)が無人のゴールに押し込む先制点。置田とすれば、悔やんでも悔やみ切れない失点の仕方だった。

「気持ち的に難しかったけど、試合の中で僕が消えたら10人対11人になる。何とか気持ちを切り替えようと思った」。そんな守護神を勇気づけたのが河崎護監督の言葉だった。ハーフタイムのロッカールーム。「置田だけのせいじゃない。チーム全体が委縮している。置田をこのままの気持ちで帰らせていいのか。もっとがんばれ」。河崎監督のゲキで置田は立ち直り、チームも後半から出場したFW今井渓太(3年)のゴールで追い付いた。

「監督自身、あきらめてない強い気持ちがすごく伝わってきた。自分が暗い顔をしていたらチームにうつる。仲間を信じて後半は戦った」。1-1の終盤は立て続けにピンチを招いたが、置田がビッグセーブを見せ、ポストにも救われた。そしてPK戦での勝利。河崎監督は「自分でチョンボして、PK戦に持ち込んで、見せ場をつくって止めて。一人でやっているみたいだった」と、良くも悪くも守護神の独り舞台となった準々決勝を笑顔で振り返った。

 大阪出身の置田はC大阪U-15からC大阪U-18に進む選択肢もあったが、「1日中、サッカー漬けにしたかった。寮生活でサッカーに専念できるし、選手権に出たい気持ちもあった。武者修行みたいな感じ」と、星稜への進学を決めた。そして最高学年でたどり着いた準決勝の舞台。しかし、MF本田圭佑を擁した04年度大会以来となる4強入りを果たしても、まだ満足はしていない。

 昨年12月30日に国立競技場で行われた開会式では、代表48校のキャプテンの一人としてメインスタンドに上った。「優勝したら、ここでカップを掲げられる。もう一度立ちたいという気持ちになった」。日本一まで、あと2勝。置田は頂点だけを見据え、ゴールを守り続ける。

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2012

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