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[選手権]姿消す米子北、誰もが認めるエースFW定本「宝物になる3年間でした」

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[1.3 全国高校選手権3回戦 米子北高 1-2 星稜高 駒場]

 誰もが認めるエースだ。指揮官も、キャプテンも、そして敵将でさえも、その存在を認める。米子北高の背番号10を背負うFW定本佳樹(3年)は、エースとして絶大なる存在感を放ち続けた。

 星稜に押し込まれる時間帯こそ長かったものの、米子北はカウンターから好機を生み出そうとする。そして、ボールを奪った選手は多くの場面で、最前線に構える定本目掛けてロングボールを放り込んだ。自由を奪おうと星稜DF高橋佳大(3年)とDF鈴木大誠(3年)が背後から迫り来るが、決して逃げない。たとえマイボールにならなくとも、体を投げ出してどうにかしてボールを収めようと奮闘した。

 そして、前線で戦い続ける定本にチームメイトは全幅の信頼を置いており、何度はね返されようとも前線へとロングボールを供給し続ける。キャプテンのMF君垣隆義(3年)は「体の使い方がうまいので、そこに当てればどうにかしてくれるし、彼を信じています。定本がチームのエースなので」と信頼を口にしている。

 その期待に応えるように、2CBを置き去りにする場面を徐々に作り出し、前半36分と後半25分には得点にこそつながらなかったもののシュートまで持ち込んだ。そして、1点のリードを許して迎えた後半26分にはDF鶴ヶ久保哲太(2年)のフィードをきっちりとヘッドで落として、君垣の同点ゴールを演出した。

 しかしその後、星稜に勝ち越しを許してチームは3回戦で姿を消すこととなった。「悔しい。とにかく、悔しいです」と唇を噛んだ定本は、「1-1になったときに自分で決めてやろうと思っていましたが、そこで決め切れませんでした。やっぱり点がほしかった」とエースとしての役割を果たせなかったことを悔やんだ。

 だが、誰もがその存在を認めていた。君垣が信頼を口にしただけでなく、定本が決勝点を挙げた2回戦の中京大中京戦後には城市徳之監督が「彼があそこまでの選手になるとは、想定にはありませんでした。相手が定本を意識してくれるので周りの選手が生きてくるし、彼がゴールを取ることによって、チームが勝てる雰囲気になります」と語り、3回戦で対戦した星稜の木原力斗監督代行にも「定本くんは一人でゴールをこじ開ける力があるので、とても苦戦しました」と言わせたように、米子北のエースは間違いなく定本だった。

 3年間で代えの利かないエースへと成長した男の高校サッカーは、ここで幕を閉じることとなる。「きつかったです。…でも、きつかったけど、今振り返ってみると楽しかったし、本当に3年間頑張ってきて良かったと思います。チームが初めて3回戦に行けたことも素晴らしかったですし、僕にとって宝物になる3年間だったと思います」と最後には悔いのない表情を見せて3年間を振り返った。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 折戸岳彦)
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