beacon

「彼のおかげでチームが変わった」“努力の男”が攻撃のキーマンに…栃木出身の前育FW人見、準決勝は旧友対決

このエントリーをはてなブックマークに追加

PKで今大会初ゴールを決めたFW人見大地が雄叫びをあげながらガッツポーズ

[1.5 全国高校選手権準々決勝 滝川二高0-2前橋育英高 フクアリ]

 譲る気はなかった。1-0の後半36分、前橋育英高(群馬)はPA内で仕掛けたFW人見大地(3年)がDF今井悠樹(3年)に倒され、PKを獲得。「シュートしようとしたときに相手のスライディングが見えたので、切り返してから打とうと思った」。シュートの前に足をかけられ、主審の笛が鳴ったが、ゴール前に転がるボールをすぐに拾い、ペナルティースポットへ向かった。

「点が欲しかったので、PKをもらった瞬間、ボールを取りに行った」。チームとしてPKのキッカーは決まっていないという。「(PKを)もらった人が蹴るみたいな雰囲気がある」。ボールをセットした背番号24は「緊張はしなかった。PKは練習してきて、自信があった。落ち着いて蹴れた」と、冷静にゴール中央に決めた。

 2トップの一角を担う人見の今大会初ゴール。選手本人はもちろん、だれよりも山田耕介監督が「(人見)大地が取ってくれて良かった」と喜んだ。高校1年の冬に右膝内側側副靱帯を断裂する重傷を負いながら不屈の精神で這い上がり、今大会直前にレギュラーの座を射止めた。「夏までレギュラーではなかったし、選手権予選も途中出場。それでも、積み重ねてきた結果が今につながっている」と、山田監督は目を細める。

 努力の賜物だ。リハビリ期間中に筋トレなどで肉体を強化。復帰後、トップチームに絡めない時期も毎日の居残り練習を欠かさず、己を磨いてきた。視線の先にあるのは応援スタンド。「クロスを上げてもらってヘディングシュートをしたり、DFに入ってもらって競り合いの練習をしたり、今、応援席にいる選手たちに手伝ってもらってきた。そのおかげでこの大会も競り合いで負けていない。応援席にいる仲間のためにもという気持ちがある」と、感謝の思いを胸に戦っている。

 179cmの身長以上に高さを感じさせる空中戦の強さでターゲットとなり、体を張ったポストプレーでボールをおさめる。山田監督が「(人見が前線にいることで)周りが生きる。チームが彼のおかげでだいぶ変わった」と絶賛するほど、攻撃のキーマンにまで成長。4強入りの立役者の一人と言っていい。

 栃木出身の人見にとって、佐野日大(栃木)との準決勝は「絶対に負けられない」一戦だ。佐野日大の1トップを務めるFW野澤陸(3年)は中学時代にプレーしたヴェルディ小山でのチームメイト。野澤は当時、ボランチだったが、「今も連絡を取り合っている仲」という元同僚とのストライカー対決は注目だ。

 佐野日大で10番を背負うFW長崎達也(3年)とは栃木県トレセンで2トップを組んだこともある。「プレースタイルは違うけど、タフな選手で、中学からすごい選手だと思っていた」というシャドーストライカーに対しては、「(長崎)達也のいいところは知っているので、そこはDF陣に伝えたい」とニヤリ。旧友たちを破った先に2大会ぶりの決勝が待っている。

(取材・文 西山紘平)

▼関連リンク
【特設】高校選手権2016

TOP