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先制も追いつかれPKに敗れた大阪桐蔭。近畿大会優勝で得た自信の根拠は後輩たちへ託される

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近畿大会優勝から自信を深めチームとしての絆を深めた大阪桐蔭(写真協力:高校サッカー年鑑)

[1.3 全国高校選手権3回戦 大阪桐蔭高1-1(PK3-5)明秀日立高 駒沢]

 初戦となる2回戦を6-0で大勝し、波に乗る大阪桐蔭高(大阪)だったが、後半開始早々に先制するもその後同点に追いつかれ、PK戦で涙を飲む結果となった。

「後半は蹴る前に周りを見て、考えてトライできるようになりました。だから後半はよかったんですけど、攻から守の切り替えで、守備意識を持っていないとは言いませんが、落ち着いて対応していれば違う結果になったかもしれません」と永野悦次郎監督が振り返るのは、後半21分の明秀日立高(茨城)のCKからの一連のシーンについてだ。

「ちょっと予測が足りていないのはいつもの課題なのですが、スペースを与えないポジション取りをしていれば……」。CKからのこぼれ球をつながれ、ゴール前のスペースを突かれ失点。これがPK戦へつながり、結果、敗戦につながってしまったと考える。

 PKは3番手のMF西山翔大(2年)がバーの上へ外してしまったが、本来は「絶対決める選手」と監督はかばう。「だから残り5分を切ったところで代えて、3番手に指名しました。もともと精度の高い左を持っています」。この試合ではPKを外したとはいえ、まだ2年生。「まだまだ成長段階」と、今回の失敗を来年に活かすことを期待する。

 大きな注目を浴びて臨むことになった選手権だったが、もともと今回のチームも立ち上げ時から順風満帆だったわけではない。「大阪の春季サッカー大会では3位、遠征先の大会でも3位、そしてインターハイ予選でも3位、ずっと3位止まりでした」と振り返る永野監督。転機になったのはインターハイ予選後に行われた近畿大会での優勝だった。

「それまでは自分で何か仕掛けても相手に読まれてしまった。その結果が3位止まりになっている原因でした。でも、近畿大会で優勝して自信を得た。仲間を信じ、味方の関係性を重視して、チームメイトの特徴を引き出そうとするプレーがチームとしてできるようになった。それがカバーの動きであったり、相手をけん制する動きであったり、というチームプレーの芽生えにつながりました」

 チームに確かな変化と感触を得て迎えた選手権。結果は3回戦で終わったが、「これまで2年生が3年生を支えてきた部分もあるし、今日のPKでは逆に3年生が2年生に見せた。そして2年生は今度3年生になる。おごらず、自分たちが見てきたものを下級生に伝えていってほしいと思います」。自身、北陽高(現・関大北陽高)出身。教えられたのは「高校サッカーの素晴らしさ、すなわち周りへの気遣い、心遣い」という。そのイズムを大阪桐蔭にも注入しつつ、目指すサッカーは「世界的な内容」という壮大な目標を持っている。

 インターハイ、選手権と、一歩一歩実績を残してきている大阪桐蔭。簡単にはいかない道のりも、先輩から後輩へ、はっきり受け継がれていくものがあれば、それは伝統になる。今日の悔しさがいつの日かの栄光へつながるように、指揮官の目は既に2年生たちの1年後の姿に向けられているようだった。

(取材・文 伊藤亮)

●【特設】高校選手権2017

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