体現した“中央突破”“切り替えゼロ秒”。立正大淞南MF石橋主将「チームとして『本当に成長したな』と感じられた1点」
[12.31 選手権1回戦 富山一高 2-2(PK4-3) 立正大淞南高 浦和駒場]
PK戦5人目、失敗すれば後攻・立正大淞南高(島根)の敗退が決まる場面でMF石橋克之主将(3年)が右足を振り抜く。次の瞬間、乾いた音とともにボールは背番号10の目の前を横切って外側へと外れて行った。「(ポストに当たる)音鳴った瞬間は、『入ってくれ』という祈りがあったんですけれども……」。石橋は突っ伏すようにピッチへ倒れ込むと、仰向けの状態となって両手で目を覆っていた。
「自分が3年間やってきたことの『甘さ』というのが出たのかなと今、思っています」
インターハイ準優勝校の富山一高(富山)相手に2度リードを奪い、運動量が落ちて押し込まれた試合終盤も身体を張って良く守っていた。強敵相手に好ゲームを演じたが、残念過ぎる敗退。ただし、立正大淞南の南健司監督はPK戦での敗退について全く問題視しなかった。
「攻撃のできる回数は想定通り。決めるところで決めてくれた。守備も決定的な場面がたくさんあったんですけれども、身体を張って良くやってくれたと思います。さっき生徒に『駆け抜けるような高校生活を歩んできて、これからもそれを続けてくれ』という話をしました。内容云々よりも良くやったと思います。何かに活かしてくれれば良いと思います」と選手たちを労った。
PK戦で失敗した石橋は試合後、敗退の責任を背負って涙。そして、自身の高校3年間の「甘さ」が出たことについて、悔やんでも悔やみきれない様子だった。だが、彼はこの試合で、仲間たちとともに立正大淞南の3年間で学んできたことを表現している。
1-1の後半27分、立正大淞南はDFラインから連続での縦パスで中央突破を試みる。MF山田真夏斗(3年/松本内定)の縦パスは相手DFに阻まれてしまったが、その瞬間に石橋が相手との距離を詰めてクリアをチャージ。このこぼれ球を拾ったFW伴木翔(3年)が、強引に仕掛けて右足シュートをゴール左隅に突き刺した。石橋は立正大淞南の伝統である“切り替えゼロ秒”“高速プレス”を体現。同じく伝統の“中央突破”からのゴールを仲間たちとともにもたらした。
石橋は「あそこ簡単に蹴らせてしまうと、ピンチになる。でも、ブロックできれば凄くチャンスになるという話をされていましたし、そこが相手も一番嫌がることだと思っていました。自分があそこの距離を詰めれたことは本当に、去年負けてからこの1年間の成長が見れたと思いますし、それでゴールを決められたというのは、チームとして『本当に成長したな』と感じられた1点でした」と頷いた。
石橋は昨年もレギュラーとして選手権を経験。キャプテンを務めた1年間で自身も、個性派揃う立正大淞南も成長させてきた。やるべきことを瞬時に体現した石橋に、伴木が呼応して生まれたゴール。彼ら含めてピッチ、ベンチ、そしてチームを後押しし続けたスタンドの選手たち全員で奪った1点だった。
PK戦で敗れ、大目標とする全国制覇に手が届かなかったことは確か。だが、石橋をはじめとした3年生は「駆け抜けるような高校生活」で培った力をしっかりと大舞台で表現し、後輩たちの目にその姿を焼き付けて次のステージへのスタートを切った。
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019
PK戦5人目、失敗すれば後攻・立正大淞南高(島根)の敗退が決まる場面でMF石橋克之主将(3年)が右足を振り抜く。次の瞬間、乾いた音とともにボールは背番号10の目の前を横切って外側へと外れて行った。「(ポストに当たる)音鳴った瞬間は、『入ってくれ』という祈りがあったんですけれども……」。石橋は突っ伏すようにピッチへ倒れ込むと、仰向けの状態となって両手で目を覆っていた。
「自分が3年間やってきたことの『甘さ』というのが出たのかなと今、思っています」
インターハイ準優勝校の富山一高(富山)相手に2度リードを奪い、運動量が落ちて押し込まれた試合終盤も身体を張って良く守っていた。強敵相手に好ゲームを演じたが、残念過ぎる敗退。ただし、立正大淞南の南健司監督はPK戦での敗退について全く問題視しなかった。
「攻撃のできる回数は想定通り。決めるところで決めてくれた。守備も決定的な場面がたくさんあったんですけれども、身体を張って良くやってくれたと思います。さっき生徒に『駆け抜けるような高校生活を歩んできて、これからもそれを続けてくれ』という話をしました。内容云々よりも良くやったと思います。何かに活かしてくれれば良いと思います」と選手たちを労った。
PK戦で失敗した石橋は試合後、敗退の責任を背負って涙。そして、自身の高校3年間の「甘さ」が出たことについて、悔やんでも悔やみきれない様子だった。だが、彼はこの試合で、仲間たちとともに立正大淞南の3年間で学んできたことを表現している。
1-1の後半27分、立正大淞南はDFラインから連続での縦パスで中央突破を試みる。MF山田真夏斗(3年/松本内定)の縦パスは相手DFに阻まれてしまったが、その瞬間に石橋が相手との距離を詰めてクリアをチャージ。このこぼれ球を拾ったFW伴木翔(3年)が、強引に仕掛けて右足シュートをゴール左隅に突き刺した。石橋は立正大淞南の伝統である“切り替えゼロ秒”“高速プレス”を体現。同じく伝統の“中央突破”からのゴールを仲間たちとともにもたらした。
石橋は「あそこ簡単に蹴らせてしまうと、ピンチになる。でも、ブロックできれば凄くチャンスになるという話をされていましたし、そこが相手も一番嫌がることだと思っていました。自分があそこの距離を詰めれたことは本当に、去年負けてからこの1年間の成長が見れたと思いますし、それでゴールを決められたというのは、チームとして『本当に成長したな』と感じられた1点でした」と頷いた。
石橋は昨年もレギュラーとして選手権を経験。キャプテンを務めた1年間で自身も、個性派揃う立正大淞南も成長させてきた。やるべきことを瞬時に体現した石橋に、伴木が呼応して生まれたゴール。彼ら含めてピッチ、ベンチ、そしてチームを後押しし続けたスタンドの選手たち全員で奪った1点だった。
PK戦で敗れ、大目標とする全国制覇に手が届かなかったことは確か。だが、石橋をはじめとした3年生は「駆け抜けるような高校生活」で培った力をしっかりと大舞台で表現し、後輩たちの目にその姿を焼き付けて次のステージへのスタートを切った。
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019