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伝統の一戦はPK戦決着。新体制の遠野が盛岡商を下し、2年ぶりの全国へ前進:岩手

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PK戦終了後、GK山下夏輝と喜びを分かち合った遠野高イレブン

[11.1 選手権岩手県予選準決勝 遠野高 0-0(PK4-2) 盛岡商高 いわぎんB]

 第99回全国高校サッカー選手権岩手県予選準決勝が1日、いわぎんスタジアムBグラウンドで行われ、第2試合は2年ぶりの全国大会出場を目指す遠野高と、実に9年ぶりとなる全国を目指す盛岡商高の伝統校対決となった。試合は0-0で延長戦でも決着がつかなかったが、4-2でPK戦を制した遠野が決勝進出。県高校総体の代替大会「2020岩手県U-18サッカー大会」で優勝した盛岡商だったが、またも選手権での全国大会出場は夢と消えた。

 立ち上がりは盛岡商が勢いよく試合に入り、「相手は5バックなので、サイドを使っていこうという流れでした」と中田洋介監督が語る通り、伝統のサイドアタックを見せた。前半17分にはDF佐藤慎一郎(2年)のクロスからMF下又奎人(3年)がシュートするも遠野GK山下夏輝(3年)がセーブ。前半30分にもMF欠畑魁星(3年)のクロスから下又がシュート、と中盤の選手も積極的に前に出て決定機をつくり出す。一方の遠野も前線の選手のスピードを生かし、前半17分にはFW平賢心(3年)、前半23分にはFW朝日田圭太(3年)がDFラインの背後を突いてシュートを放つが、ゴールを奪えなかった。

 0-0で迎えた後半、盛岡商はキャプテンFW村上絢太(3年)を満を持して投入する。「ケガをしていたので後半から投入しました」と盛岡商・中田監督は後半からの投入の理由を語った。村上はゴールへ向かう気持ちこそ強かったが、「パフォーマンスが上がってこなかった」と中田監督も認めた通り、いつもは強靱なフィジカルを武器に前線でしっかりとボールキープできるのだが、前線でなかなかボールをおさめられなかった。

 両チームとも決定機はつくるものの、最後のところで決めきれず延長戦に突入。延長後半3分には遠野MF菊池翔瑛(2年)がシュートを放つが、盛岡商GK羽田碧斗(2年)が頭上のボールをパンチングでかき出すファインセーブを見せた。対する盛岡商も村上が延長戦で2本のシュートを放ったが決めきれず、0-0のままPK戦に突入した。

 PK戦は両チーム2人ずつが決め、遠野が3人目を決めた後、盛岡商3人目DF宮野隼(2年)がゴール左へ外してしまう。遠野は4人目も決めて迎えた盛岡商の4人目はキャプテン・村上。村上が右へ放ったシュートは遠野GK山下に止められ、試合終了。PK戦を4-2で制した遠野が決勝へ駒を進めた。

 遠野は昨年まで指揮を執っていた長谷川仁監督が不来方高へ異動となり、これまでコーチを務めていた佐藤邦祥監督が就任1年目。「コロナ禍で試合が少なかった関係で、今年初対戦になりましたが、昨年と同じ相手に雪辱したかったです」と昨年も準決勝で対戦し、その時はPK負けを喫したことから強い気持ちで試合に臨んだ。

「チャレンジャー精神を持って、他と比較せずに自分たちのやるべきことをやろうと選手に伝えてきました」と就任初年度、コロナ禍と難しさがあった中、チームを徐々につくり上げてきた。キャプテンのDF高橋和志(3年)は夏まで中盤の選手だったが「(県高総体の)代替大会の後から3バックに変わり、自分が真ん中に入るようになりました。昨年のセカンドチームで3バックをやっていて慣れていました」とスーパープリンスリーグ東北で手応えを得た3バックでの戦いも機能し、守備が堅かった。佐藤監督は「今日のような試合展開になると思うので、自分たちの良さを出し、粘り強く戦いたい」と堅守と速攻、セットプレーを武器に専修大北上高へ挑む。

 一方の盛岡商・中田監督は「欠畑やDF中村涼(3年)、村上など全国でもやれるメンバーだったので今年は自信があったのですが…」と悔しさをにじませた。「相手の状況を見てやれれば良かったです」と選手が緊張からなかなか周りを見られなかったことを無得点の要因に挙げた。「チャンスを決めきれないのは日本サッカー全体の課題ですが、押し込むだけという場面をどれだけつくるかが課題です。そういう場面もあったのですが…」と決定機はつくりながらもゴールを決めきれなかった展開に、悔やんでも悔やみきれない様子の中田監督。来年こそ選手権で全国の舞台に立つため、攻撃の精度向上に力を注ぐ。

(取材・文 小林健志)
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