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鹿児島準々決勝の強豪対決!「執念」テーマに奪還目指す鹿児島城西が2-0で鹿児島実突破!

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後半10分、鹿児島城西高MF崎野隼人(14番)が先制ゴール

[11.5 選手権鹿児島県予選準々決勝 鹿児島城西高 2-0 鹿児島実高 桷志田サッカー競技場]

 注目の強豪対決は鹿児島城西が制す――。第99回全国高校サッカー選手権鹿児島県予選準々決勝が5日に行われ、鹿児島城西高鹿児島実高が激突。準々決勝随一の好カードは2-0で鹿児島城西が制した。

 前半は両校ともにこれまでの印象が変わるようなテクニカルな40分間。鹿児島城西は立ち上がりこそシンプルに相手の背後を狙った攻撃を見せていたが、安易にクリアすることを避けて丁寧に下で繋ごうとする。そして、「ビデオ見た時に相手のボランチのスピードがない。一枚剥がしたら有利かなと考えていました」というMF川原琉翔(2年)が幾度か中央をドリブルで抜け出し、スルーパスも。川原やMF崎野隼人(2年)が違いを生み出すようなプレーをしていた。

 一方の鹿児島実も、MF川路友斗(3年)らが低い位置からショートパスでボールを繋ぎながら相手ゴールを目指す。前半は特にFW小濱駿主将(3年)が存在感ある動き。ボールを何度も収めて起点を作ると、そこからスピーディーにボールを動かして見せる。鹿実伝統のハードワークする部分は失わずに、繋ぐサッカーを徹底。20分には鹿児島城西GKヒル袈依廉(3年)のファインセーブに阻まれてしまったものの、FW平樹龍(2年)の右足シュートがゴール右隅を捉えるシーンもあった。

 前半は繋ぎ合いの展開。鹿児島城西の狙いはショートカウンターだったが、球際の厳しさを欠いたことで鹿児島実の特長を引き出してしまう。新田祐輔監督は「もっと厳しくやりたかった。でも緩くて。これだけ緩い守備でどこに勝てるのよ、と」。チームは試合前、鹿児島実相手でも特別意識せずに戦うことを共有。だが、それが緊張感を欠くことに繋がってしまったか、試合当日の朝からわずかな緩みが出てしまい、そこからしっかりと切り替えられなかった。

 それでも、CB山下玲主将(3年)が「(ハーフタイムに)新田先生からも『やれることを徹底して』と言われていたので、自分たちも円陣で確認して、後半は入りから行けたと思います」と振り返るように、後半は鹿児島城西の強度と運動量が上がる。

 そして後半10分、鹿児島城西は敵陣で奪い返すと崎野が持ち込み、最後は混戦から右足で決めて先制点を奪う。鹿児島実も前半から危険な存在となっていた“高速ドリブラー”MF宇宿響世(3年)が大きく前進するシーンなどがあったが、相手のプレッシャーの速さの前に徐々にロングボールが増えてしまう。

 これを山下とCB和田秋斗(3年)が封鎖した鹿児島城西は、いずれもキープ力の高い右SB桑原滉(3年)と左SB中川洋輔(3年)が相手のプレスを剥がして前進。司令塔のMF川原が「後半はサイドにボールが入った時に追い越す選手が多くなった。あとSBが落ち着いてボールを持ってくれた」と感謝したように、どこからでもボールを運び、攻めることができる力を示した鹿児島城西は後半24分に追加点を奪う。

 交代出場MF南龍之介(3年)の右クロスをファーの10番MF永井利政(3年)が左足ダイレクトボレー。ボールはGKの脇を抜けてゴールを破った。鹿児島実の森下和哉監督は攻撃面について「ビビらずにやるという姿勢を持ってやってくれた」と評したが、一方でいずれも防げたような2失点を残念がる。また、2点差となったあと、鹿児島実はなかなかギアを上げることができなかった。

 鹿児島城西はGKヒルがゴール前で圧倒的な高さを発揮したほか、山下、和田が跳ね返したボールをMF永吉雅弥(2年)が回収するなど、試合終盤は相手に十分な攻撃機会を与えずに2-0で勝利。ただし、山下が「後半は自信になったと思いますけれども、前半のようなサッカーをやっていたら勝てないと思うので、朝からの準備からしっかりしていきたい」と言うように、チームは大喜びすることなく、次へ視線を向けていた。

 今年の鹿児島城西が掲げている言葉。それは「執念」だ。山下は「『執念』という言葉を調べたら、『忘れない』という意味もあるので、去年の悔しさを忘れずに『執念』をしっかりと出して戦いたい。個人としては昨年PK外して負けたというのもあるので、個人としては絶対に返したいというのがありますし、チームとしても3年間(全国へ)行けていないので優勝したいという思いが強いですね」と誓う。鹿児島城西が3連覇したあとの3年間はいずれも神村学園高が優勝している。今年は「執念」を持って奪還へ。まずは出水中央高との準決勝で、前半から自分たちの良さを発揮して必ず勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
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