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鹿児島の攻撃集団、神村学園が前橋商の堅守こじ開けて逆転勝ち!

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後半33分、神村学園高MF下川床勇斗が決勝ゴール

[12.31 選手権1回戦 前橋商高 1-2 神村学園高 ニッパ球]

 鹿児島の攻撃集団が攻めて、逆転勝ちした。第99回全国高校サッカー選手権が31日、開幕。ニッパツ三ツ沢球技場の第1試合では神村学園高(鹿児島)が前橋商高(群馬)に2-1で逆転勝ちした。神村学園は21年1月2日の2回戦で近江高(滋賀)と戦う。

 前橋商MF石倉潤征主将(3年)の思いの込もった選手宣誓の余韻が残る中、16年ぶり出場の“ゼブラ軍団”が開始直後にスコアを動かす。MF山口涼太(3年)の左ロングスローをニアのFW仲宗根純(3年)が頭で合わせると、これが神村学園GKの頭上を越えてそのままゴールに吸い込まれた。

 いきなりビハインドを負った神村学園だが、その後は落ち着いてチーム全体でボールを支配する。中央での身のこなしと1タッチパス、スルーパス光るU-16日本代表MF大迫塁(1年)や MF永吉飛翔主将(3年)らが細かくボールを繋ぎ、中を閉じられれば、永吉が正確なキックでサイドへ展開する。

 そして、U-17日本代表FW福田師王(1年)が果敢にゴールへ。9分、右サイドのスペースでボールを受けると、対応するDFをねじ伏せるように振り切ってPA中央まで運び、左足を振り抜く。20分にも左クロスから放ったヘディングシュートがクロスバーをヒット。貪欲にシュートまで持ち込む福田と中央で違いを生み出す大迫の注目の2人が“選手権デビュー戦”でその攻撃力を発揮するなど、神村学園は多彩で分厚い攻撃を続けていた。

 前橋商は大半の時間帯でボールを握られていたものの、4バックとフラットな中盤4人、2トップがコンパクトさを保ってディフェンス。中央に絞って相手の強みを消し、サイドに追いやる形がハマっていた。コンビネーションやロングクロスでこじ開けようとしてくる相手の攻撃を封鎖。セカンドボールへ素早く反応し、クリアするなど決定打を打たせない。

 そしてボールを奪うと、相手のSBの背後を狙ってサイド攻撃。11分にはMF坂本治樹(3年)の突破を起点に仲宗根の右クロスからファーサイドの山口が決定的なヘッドを撃ち込む。その後も狙っていたという、クロスからファーの選手が飛び込む形であわやのシーンを2度3度と作り出した。

 攻めながらも0-1で前半を終えた神村学園は後半、トップ下の大迫が意識的に高いポジションを取って相手DFラインを押し下げようとする。有村圭一郎監督は「サイドチェンジとドリブルを増やして相手のブロックを崩しにかかるのと、焦れずにやっていけば相手はだいぶ走っているのでバテてくるだろうなということでゲームプランを進めました」。だが、前橋商はCB本間輝(3年)、CB庄田陽向(2年)中心にゴール前で粘り強く、石倉のシュートブロックやGK長谷川翔(3年)の好守で同点を許さない。

 前回大会の神村学園は2試合連続無得点で2回戦敗退。この日、ゴールへの意識が高い一方、やや強引なシュートも増えていた神村学園は今年も嫌な空気が流れた。だが、サイド攻撃から、「本人たちが練習でもやっているような得点シーンだった」(有村監督)というゴールで前橋商の守りをこじ開ける。

 28分、左サイドでのキープから大迫が横パスを入れると、中央の永吉がダイレクトのスルーパス。これに走り込んだMF小林力斗(3年)が左足ダイレクトで同点ゴールを奪う。前橋商は笠原恵太監督が「ずっと押されていたのでウチがボールを握る時間を前半も含めて増やしていかないと、と思っていたのでそこは反省点」と振り返ったように、守備の時間が長くなり過ぎてしまった。本来はボールを握ってリズムを作るチームだが、この日は切り替えの速い相手の前になかなかボールを繋げず、押し込まれる展開に。そして逆転を許してしまう。

 神村学園は33分、交代出場のMF若水風飛(2年)が右サイドからアーリークロス。小さなクリアに走り込んだMF下川床勇斗(3年)が左足ダイレクトでゴールネットを揺らし、2-1とした。前橋商は交代カードを立て続けに切り、また俊足CB本間を前線へ入れて反撃。だが、神村学園が逃げ切った。

 鹿児島の攻撃集団、神村学園は今年、福田と大迫のスーパールーキー2人を加えて進化。予選後にビルドアップの質をより高めたチームは、2試合連続無得点の昨年からレベルアップしていることを示した。精度の部分や強引過ぎた部分は反省点だが、有村監督は「得点シーンは2つしか無かったですけれども、ゴールへの意識は高まっていると思いますし、今後に繋がるような試合だったと思います」と前向き。永吉は2回戦へ向けて「自分たちの強みを出すためのポジショニングだったり細かいところをやっていきたい」。2回戦でもボールを握って主導権を握り、攻め勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
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