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勝利への水先案内人。駒澤大高MF松原智が東京王者を沈める貴重な2アシスト!

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2アシストで勝利に貢献した駒澤大高MF松原智

[10.24 選手権東京都予選Aブロック準々決勝 実践学園高 1-2 駒澤大高]

 1つは右足。1つは左足。それぞれから繰り出されたクロスが、劣勢を予想されていたチームに貴重な2つのゴールをもたらす。それでも、最後は気持ちの勝負だ。「気持ちの部分で絶対勝ってやろうと、それだけです。『自分たちが想定しているものより、相手が高く来られたら絶対に負けるから』と言われていたので、相手の想定をもっと自分たちで高くしていって、その上で『勝ってやろう』と思っていました」。

 気持ちと技術のハイブリッド。駒澤大高のナンバー8。MF松原智(2年=FC.GIUSTI世田谷出身)が大一番での2アシストで、赤黒軍団を西が丘の舞台へ導いた。

 まずは前半28分。左サイドで駒澤大高が手にしたCK。キッカーの松原はやや蹴りそこなった感覚があった。「少しボールが低めに入ってしまって、相手に跳ね返されたんですよね」。ただ、ここで攻撃は終わらない。再び自分の元へボールが帰ってくる。中央を見据え、右足を振るう。

「相手がプレスに来た中を外すような回転で蹴ろうと思って、その通りに蹴ったら入りました。回転は狙い通りでしたし、凄く嬉しかったです」。インスイングで蹴り込んだ軌道はDF古田和也(3年)の頭にドンピシャで合い、ヘディングは鮮やかにゴールネットを揺らす。大きな、大きな先制点。松原の確かな技術が光る。

 続いて38分。練習から積み重ねてきた連携が、この試合でそのまま生きる。「新井くんがボールを持って、濱田くんと3人で三角形を作って、ポケットの部分に“止まった動き出し”を入れました」。左サイドでMF新井璃久(3年)がボールを持った時に、“三角形”のイメージが湧く。あえて動かずにエリア内で待ち受けると、濱田から絶妙のスルーパスが送られる。

「2枚ディフェンスが来ていて、出すところがなかったので、『そこの間しかないかな』と思って、少し浮かせて出しました」。寄せてきた2人のマーカーの隙間を狙い、浮き球で流したクロスにFW加茂隼(2年)が豪快なボレーで応える。大きな、大きな追加点。ここも松原の冷静さと技術が、歓喜を呼び込んだ

 負けられない相手も力を振り絞って、前に出てくる。「実践は最後の最後で足を伸ばしてきますし、凄く強いチームでしたけど、その中で自分たちも『絶対勝ってやろう』という気持ちで、最後まで足を伸ばして戦えたと思います」。右サイドで攻守に奮闘し続けると、ようやく試合終了のホイッスルが耳に届く。

「『耐え切ったな』みたいな感じでした。実践ともなってくると最後の最後で追い付いてくるようなチームですし、『自分たちが跳ね返せたな』という想いがありました」。2-1。駒澤大高の2点を自ら演出したサイドアタッカーに、安堵の表情と笑顔が広がった。

 なかなか勝てない時期の続いた今年のチームの中で、3年生がどれだけ苦しんできたかを間近で見てきたからこそ、彼らに対する想いももちろん小さくない。「3年生の人たちは凄く優しくて、1人1人も上手いですし、戦う気持ちも持っていて、『最後の最後に絶対一緒に勝ってやろう』とは思っていました」。1試合でも多く、3年生と。その想いを、磨いてきた得意のキックに乗せ続けている。

 目指すのは東京制覇。ただ、まずは1つ1つ目の前の試合を、丁寧に、力強く。「1つ1つの試合もプレーも大事にして、保護者の方、応援してくれる先生方、試合に出られない部員たちの想いも背負って、絶対に1つずつ勝っていきたいなと思います」。

 勝利への水先案内人。駒澤大高の進むいばらの道を、松原のキックが鋭く切り裂いていく。

(取材・文 土屋雅史)
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