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遊学館がこだわる「石川県でNo.1の挨拶」。後半ATに星稜から2点もぎ取り、「今日イチのデカい声」で選手権に幕

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2-5で敗れた試合後、遊学館高の選手たちは「今日イチの声」で保護者や仲間に挨拶

[10.30 選手権石川県予選準決勝 星稜高 5-2 遊学館高 金沢市民]

 全国への道が断たれた試合後、遊学館高の岸玲衣監督は選手たちへ向けて「今日、一番デカい声で挨拶しよう!」と言葉を掛けていた。赤色のユニフォームは胸を張り、スタンドの保護者、仲間たちへ向けて「ありがとうございました!!」と大声で挨拶。その声に指揮官は「今日イチ、デカい声で挨拶してくれました」と感謝していた。

 岸監督が、強豪・遊学館の監督に就任したのは3年前。「試合前の挨拶、(試合後も)勝っても、負けても挨拶だけは笑っていても、泣いていても、勝者になっても、敗者になっても、キチッとした挨拶を。まだまだなんですけれども、石川県でNo.1の挨拶を私はこだわっていたので」と挨拶を大事にしてきた理由を説明する。

 この日、インターハイ全国3位の星稜高に挑戦した遊学館は、試合前のウォーミングアップから青森山田高(青森)を彷彿されるような大声で自分たちの気持ちを高めていた。試合直前も、スタジアム内のロッカールームからピッチに聞こえるほどの声。そして、大声で挨拶して試合をスタートした遊学館は、気持ちの込もった戦いを見せた。

 縦への速い攻撃とサイドからのクロス、セットプレーで次々とゴール前のシーンを作ってくる星稜に球際で健闘。前半7分にロングスローのこぼれ球を押し込まれたが、その後はCB朝内拓真主将(3年)中心に各選手が良く戦い、10番MF佐藤真之介(2年)のドリブルやパスからFW澤野柊登(3年)が鋭い抜け出しを見せるなどチャンスを作り返していた。

 1失点は覚悟の上。遊学館は「どうやって点数を獲るか。私たちの良いところを出して点を獲りに行こうと」(岸監督)と攻撃にチャレンジした。だが、前半30分過ぎから3連続失点。切り替えて臨んだ後半にも1点を奪われた。それでも、コンビネーション、個での仕掛けなどを駆使し、諦めずにゴールへ向かい続ける。

 交代出場のMF横腰塁(2年)や澤野がシュートへ持ち込むが、星稜の守りを破るのは簡単ではなかった。跳ね返され続けた遊学館は40+2分、MF多田龍心(2年)が右サイドを破り、横越が合わせたが、これも星稜GK山内友登(3年)にかき出されてクリア。しかし、点差が開いても1点を目指し続けた彼らの執念が、ゴールに結びついた。

 40+3分、遊学館はMF疋田渓到(3年)のアーリークロスを交代出場FW中島輝羅(1年)が頭で星稜ゴールを破った。スタンドが沸く。直後には右クロスから怒涛の3連続シュート。これは星稜DF陣に阻止されたものの、40+5分、左CKを横越が頭で合わせて2点目を奪い取った。

 岸監督も「次に繋がるというよりは、見に来てくれている保護者や応援してくれている人たちに一番の歓声を……。『ありがとうございます』『またよろしくお願いします』というのが伝えられたかなと思います」と頷く2得点。この2発は11月のプリンスリーグ北信越参入戦や来季にも繋がるゴールだった。完敗したことは、もちろん悔しい。それでも、最後まで全力。最後まで戦った遊学館は、「今日イチ」の声、“石川県でNo.1の挨拶”で選手権の幕を閉じた。

(取材・文 吉田太郎)
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