beacon

岩手最速ドリブラーの矜持。盛岡商MF佐藤航はとにかく持ったらドリブル勝負

このエントリーをはてなブックマークに追加

岩手最速クラスのドリブラー、盛岡商高MF佐藤航

[10.31 選手権岩手県予選準決勝 遠野高 0-3 盛岡商高 いわぎんスタジアム]

 ボールを持ったら、勝負。そこに一切の躊躇はない。逆にボールを持たれたら、最後。あっという間にサイドを切り裂かれ、決定的なシーンを作られてしまう。「得意なのはドリブル全般ですね。中学校に入った時から、自分はスピードが武器だったので、その時から速くドリブルすることを考えていて、それが練習でも少しずつできてきて、今になってきているなという感じです。スピードでは県内だったら負けない自信はあります」。

 盛岡商高の左サイドを疾走するスピードスター。MF佐藤航(3年=レノヴェンス・オガサFC出身)を一度“乗せて”しまうと、止めることは限りなく困難だ。

 2年前。今回と同じ高校選手権予選準決勝。当時1年生だった佐藤は、1点ビハインドの後半に貴重な同点ゴールを叩き出し、チームもPK戦で決勝進出を勝ち獲った。また、10月9日に開催されたプリンスリーグ東北でも、チームは2-3で敗れたものの、佐藤自身は1得点を記録。「遠野戦は結構今までも点が獲れていて、そういういいイメージはありました」。自信を持って、この日のゲームのピッチへ向かう

「相手も縦に対策して、2枚とかで守備に来ていたんですけど、監督からも『どんどん仕掛けろ』と言われているので、いつも通りに仕掛けていました」。縦へ、縦へ。スピード勝負。とにかく縦へ、縦へ。

 1点のアドバンテージを握っていた前半34分。とうとうそのアグレッシブな姿勢が結実する。「スペースにいつも通りパスを流してくれたので走って、『あそこにクロスを上げれば、中に入っているかな』と信じていたので、速いボールを意識して上げました」。佐藤は左サイドでグングン加速しながらクロスを上げると、逆サイドから飛び込んできたMF工藤春(2年)がきっちりとゴールネットへボールを流し込む。

「サイド攻撃はリーグ戦でも得点に繋がっていますし、右も左も個の強さがあるので、そこはちょっと意識して、どんどん仕掛けることは今日もできたかなと思います。でも、右のヤツがドリブルで相手を抜いたりすると、こっちも『ちょっとやってやろうかな』という感じにはなりますね」。ある意味でライバルと捉えている“右のヤツ”、工藤への見事なアシスト。さらに1点を追加した盛岡商は、3-0と逞しく勝利。『遠野キラー』とも言うべき佐藤の切れ味鋭いドリブルは、最後まで相手の大きな脅威となっていた。

 決勝の相手は専修大北上に決まった。2年前に同じ舞台で敗退を突き付けられた相手であり、今年のインターハイ予選でも準決勝で敗れている。どちらの試合のピッチにも立っていた佐藤は、もちろん県大会最後の1試合に強い覚悟を抱えている。

「高総体(インターハイ)の準決勝で1回負けている相手なので、リベンジの気持ちはありますし、自分が得点に絡んで、絶対に勝ちたいですね。相手はたぶん結構大事にボールを持って攻めてくるので、逆にボールを取った後のカウンターがチャンスだと思いますし、そこでどれだけ相手より早くスプリントを入れて、前でいかに勝負できるかというのがポイントで、あとは守備で粘り強く、絶対にシュートを打たせないように、絶対にゴールを獲られない守備をして、絶対に勝ちたいですね」。決して多弁ではないタイプの佐藤から、熱い言葉がこぼれ出した。決意は、続く。

「やっぱりアシストもそうですけど、得点を獲るということも意識したいです。試合を決めるのが10番の仕事だと思うので、そこに対しては強い気持ちでやっていきたいです。10年全国に行っていないという、“ジンクス”という感じになっているモノを崩して、また盛商が全国で活躍していければなと思います。自信は100パーセントあります」。

 プレーを一目見れば、おそらくその意味はすぐに理解できる。『自信は100パーセントある』。キレキレを超えつつある高速ドリブラー。一度“乗って”しまった佐藤は、そう簡単に止まらない。

(取材・文 土屋雅史)

●【特設】高校選手権2021
▶高校サッカー選手権 地区大会決勝ライブ&アーカイブ配信はこちら

TOP