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「失うものは何もない」「今年はやるだけ」。宇部工が0-5の365日後に雪辱し、19年ぶりの山口決勝進出!

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19年ぶりの決勝進出を喜ぶ宇部工高の選手たち

[11.7 選手権山口県予選準決勝 宇部工高 0-0(PK4-3)西京高 維新公園ラグビー・サッカー場]

 第100回全国高校サッカー選手権山口県予選準決勝が11月7日に行われ、宇部工高が0-0からのPK戦を制して西京高を下し、14日に行われる決勝進出を決めた。

 序盤から西京がMF内田和輝(2年)を基点としたビルドアップでチャンスをうかがい、宇部工がしのいでカウンターを狙う攻防が続く。宇部工はCB大橋巧基(3年)が前半13分(40分ハーフ)で負傷交代するアクシデントに見舞われながらも、粘り強く守って得点を許さない。

 前半途中からは双方にゴール前のチャンスが生まれ、宇部工は主将のFW原陽向(3年)やDF清水隼人(3年)、西京はMF石田駿一(3年)やFW菊本翔太(2年)がシュートを放つ。しかし精度を欠いて得点とはならず。そのままスコアレスで前半を終えた。

 後半に入ると宇部工の前に出る力が弱くなり、西京が前半以上に押し込んでゴールに迫るものの、12分のMF石田の左足シュートはクロスバーの上へ。15分には右からのセンタリングをMF岡海陽(3年)がヘッドで合わせたが、宇部工GK福永光起(3年)の見事なセーブに阻まれた。

 なおも攻める西京は24分、FW菊本の右サイドからの折り返しを、エリア内中央でフリーになっていたMF正木一成(3年)が右足で合わせる決定機を迎えたが、大きく上に外してしまう。29分には再びエリア内中央からFW菊本が左足で狙ったが、これも左に外れた。

 さらに後半アディショナルタイムの40+1分には、右からのパスが宇部工の選手に当たってエリア内左サイドに流れ、フリーで待っていたMF石田が左足で狙ったが、宇部工GK福永が素早く前に詰めてブロック。結局80分間を戦い終えて得点は生まれず、10分ハーフの延長に突入した。

 延長も西京が攻め、宇部工が守る展開は変わらず。西京は5本のシュートを放ち、前後半と合わせてシュート23本と攻め立てたが、宇部工は最後まで守り切り、勝負の行方はPK戦に持ち込まれた。

 先攻1人目が決めた宇部工は、西京の後攻1人目・MF正木のキックをGK福永がセーブ。しかし西京GK藤井信人(3年)も、直後の先攻2人目・宇部工MF長木皓飛(3年)のキックを見事に止めて譲らない。GK福永が西京の後攻3人目・MF大城大輝(3年)を止めたときも、GK藤井が直後の先攻4人目・宇部工MF岡田拓巳(3年)のキックを止め、再びイーブンに戻す。

 激闘に決着がついたのは6人目だった。先攻の宇部工はDF野村駿(3年)が先に成功。後攻の西京DF佐古翔海(2年)のキックを、GK福永が3本目となるPKストップで阻み、決勝進出を決めた。

 宇部工は昨年11月7日、選手権予選準決勝で西京と対戦。現在の3年生も多く先発に名を連ねていたが、大和健一監督が「ビビってしまった」と振り返る消極的な戦いが災いし、0-5の完敗を喫した。ちょうど365日後、同じ準決勝の舞台で「相手は西京なのだから、ウチが負けても誰も驚かない。失うものは何もない」と大和監督が送り出した選手たちは、1年前の悔しさを胸に粘りに粘って、PK戦の末に雪辱を果たした。

 2002年以来19年ぶりとなる選手権予選決勝進出を果たし、初出場が懸かる14日の決勝では、3年連続27回目の出場を目指す高川学園高と対戦する。1年前も出場していたFW原は「去年は緊張してしまったけど、今年はやるだけ。キャプテンとして自分が背中で引っ張ることはもちろん、みんなにいい声を掛けることなどを意識した」と雪辱への道のりを振り返り、「(決勝の会場となる)維新みらいふスタジアムにあこがれていました。初めてプレーすることができるので、頑張りたい」と大舞台に思いを馳せていた。

(取材・文 石倉利英) 
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