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遠かった“2度目の選手権”へ…「矢印は全員が前だ!」阪南大高が6年ぶりに大阪制覇!

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阪南大高が2度目の選手権へ

[11.13 選手権大阪府予選決勝 阪南大高 3-0 履正社高 パナスタ]

 13日、第100回全国高校サッカー選手権大阪府大会決勝がパナソニックスタジアム吹田にて開催され、阪南大高履正社高を3-0で破り、6年ぶり2度目となる出場権を手に入れた。

 試合終了のホイッスルを聴き、選手・スタッフと喜びを分かち合ったあと、阪南大高・濱田豪監督はこんな言葉を漏らした。

「やっとここで勝てました」

 2015年度の第94回大会で初出場を果たした阪南大高だが、“2度目”が遠かった。決して力のないチームではなかったが、全国屈指の激戦区となっている大阪の壁に阻まれて苦杯を舐めてきた。初出場翌年の第95回大会では府予選決勝で東海大仰星高に敗れ、2019年度の第98回大会も府予選決勝で興國高に及ばず、惜しくも出場を逃すことが続いていた。

 今大会に向けて濱田監督の行ったアプローチは、そうした苦い経験からのフィードバックだった。それぞれ異なる選手で構成された違うチームの敗退だが、「僕が連れてくる、育てる選手というのは大人しい子が多い。ここ一番でそれが出てしまう」と改めて分析。「私個人の反省も踏まえて、それを彼らに伝えて戦いました」。

 迎える決勝の舞台はパナソニックスタジアム吹田。制限付きとはいえ有観客の試合でもあり、のしかかるプレッシャーは特別なモノになる。普通に考えれば、より慎重に、より丁寧にというメンタリティが先行するところだが、指揮官が伝えたのは、より激しく、よりアグレッシブにということ。シンプルかつ明確な言葉を全員に共有させた。

「矢印は全員が前だ!」

 主将のFW鈴木章斗(3年)が「今日だけは自分も走っていたかな」と冗談めかして振り返ったように、いつもとは違う立ち上がり。決勝だからこそのエンジン全開で前からのプレッシングをかけていく。相手の履正社が後方から繋いでくるタイプのチームだからこそ、この「前へ」の姿勢が噛み合うというより現実的な算段もあった。そして、この狙いがハマった。

 まずは開始早々の3分に得たCKが明暗を分けた。DF今西一志(2年)の入れたボールのこぼれをMF櫻井文陽(3年)がボレーシュート。速い弾道のボールがDFの手に当たってPKとなり、これを「緊張は特にしなかった」というJ1湘南内定のFW鈴木が落ち着いてゴールへと流し込んだ。

 やや動揺の観られる履正社に対し、阪南大高は1点に満足せずに攻勢を継続。8分のFW石川己純のシュートは、J3富山内定の履正社GK平尾駿輝(3年)の好セーブに阻まれたが、その2分後だった。MF松本楓悟(3年)のパスから抜け出した石川のシュートは再びGK平尾がビッグセーブを見せるが、そのこぼれ球に対するDFのクリアが短くなったところに詰めていたのはMF稲垣大耀(3年)。頭で合わせて流し込み、2-0とリードを広げる。

 そしてトドメの一発となったのは、やはりエースの一撃。27分、左からカットインした鈴木が、DFの間を縫って枠に飛ばす見事なミドルシュートを沈めて、3-0。前半の半ば過ぎでほぼ勝負を決めてみせた。前半のシュート数は9対0。立ち上がりから「前へ」の姿勢を打ち出した阪南大高が圧倒した40分間だった。

 後半、履正社も立て直し、最後まで諦めない姿勢でチームを引っ張ったFW廣野大河(3年)が反撃の糸口を探ったが、この流れで献身的な選手が揃う阪南大高の良さが生きて隙を作らせない。最後は5バックに切り替える守備固めも見せて、手堅く3点のリードを保っての逃げ切りに成功。6年ぶりとなる全国出場を快勝で決めた。

(取材・文 川端暁彦)

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