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[MOM3751]高川学園MF西澤和哉(3年)_「自分ではわからないけど…」持ってる男。ファーストタッチで80+3分劇的V弾!

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MF西澤和哉(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 選手権3回戦 高川学園高 1-0 仙台育英高 等々力]

 お家芸のセットプレーから沈めた劇的な決勝弾。高川学園高に勝利をもたらしたのは、指揮官も認める“持ってる男”だった。

 0-0で迎えた後半40分、MF西澤和哉(3年=エベイユFC神戸)は2枚目の交代カードでピッチに送り込まれた。PK戦も見えてくる時間帯だったが、目的はあくまでも決勝点。アディショナルタイムの3分間で結果を残せという江本孝監督からのミッションだった。

「監督からは1点ぶち込んでこいとだけ言われた」(西澤)。昨年度の山口県予選決勝・西京高戦(○1-0)でも、途中出場から劇的な決勝ゴールを決めていたスーパーサブ。江本監督には「そのシーンが頭をよぎった。ラストで使ってみたら決めてくれると思って出場させた」という“予感”があった。

 そうして迎えた後半40+2分の右CK。西澤はゴール前で6人が手を繋いで回転する“トルメンタ”の一員としてキックに備えたが、蹴り出されたボールは相手GKが弾いてファーサイド側のゴールラインへ。次は左CK。今度はニアサイドにボールが送られると、西澤は冷静な判断でやや離れた位置から待つ決断をした。

「最初は飛び込んでヘディングで合わせようと思っていたけど、ボールが短くて、セカンドボールになると思って、セカンドの立ち位置をとっていた。そうしたらグラウンダーとか低いボールが返って来るなと思ったけど、ふんわりした山なりのボールが返ってきて、ちょうど自分がいたところに来たので、思い切って左足で振り切った」(西澤)

 待ちに待ったファーストタッチは、インサイドでのボレーシュート。丁寧に放たれたボールは相手GKの脇をすり抜け、ゴールネットに突き刺さった。「彼のいいところはシュートをふかさないし、おさえた蹴り方ができること。かつシュートの振りが速い」(江本監督)。指揮官が認めるストロングポイントどおりのプレーで勝負を決めた。

 また西澤によると、シュートシーンには伏線があったという。「もう一人選手がいてその人がたぶんボールに触ろうとしていたけど、自分が『どけぇ!』って大きい声で言って、それを聞いてどいてくれたから振り抜くことができました」。セカンドボールにはDF岡楓太}(2年)も反応していたが、直前でプレーを停止。その裏には“持ってる男”の自信に満ちた指示があったようだ。

 一方、西澤は自身の決定力について「たしかに去年も(県大会の)決勝で点を決められて、自分ではわからないけど、運を持ってるんじゃないかと思っています」と言いつつも、同時に「自分では勝負強いとはなかなか思わない。持ってる男とはよく言われますけど……」と苦笑いも浮かべる。

 昨年の県予選でヒーローとなった西澤だったが、全国大会は出番がないまま終了。今季も思うように出番を掴めず、「すごく悔しいことしかなくて、自分の中でもうまくいく1年間では全然なかった」と振り返る。

「監督にもたくさん怒られたし、試合にもなかなか出られなかったし、練習でも自分の思うようなプレーが全然できなくて、1年生の時に比べて試合に出る機会がどんどん減っていって、非常に悔しい気持ちばかりだった」(西澤)

 今大会でも1回戦の星稜高戦で後半13分から起用され、2回戦の岡山学芸館戦では先発出場しながらも、ゴールに絡めないままハーフタイムに交代。“持ってる男”どころか、ここままでは活躍できなかった思い出が残るところだった。

 だからこそ、“持ってる”ことよりも、その機会を与えられたことが何より重要だった。

「1回戦も2回戦も江本監督が自分のことを信じてくれたのに応えられなくて、裏切ることばかりだったけど、こうして3回戦でベスト8をかけた試合で裏切る形じゃなく、期待に応えられて本当によかったと思っている」(西澤)

 そんな西澤の活躍には、江本監督もほっとした様子。「代わった選手がしっかりと結果を残してくれた。西澤選手は1、2戦ともいい感じで結果を出せていなかったけど、それでも何かやってくれるという思いがあった。起用して当たってよかった」と目を細めた。

(取材・文 竹内達也)

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