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今度は主将考案のセットプレーで決勝点。高川学園は自分たちで判断、行動する力、団結力も強みに国立へ!

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全員で掴んだ国立切符。準決勝進出を喜ぶ高川学園高イレブン(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.4 選手権準々決勝 桐光学園高 0-1高川学園高 等々力]

 第100回大会選手権を沸かせている山口の雄が、過去最高成績に並ぶ準決勝進出だ。高川学園高は、初戦でのFK時に5選手が円陣を組み、回転をしながら相手のマークを外す“円陣回転”FK「トルメンタ」のゴールを皮切りに、2回戦、3回戦と多彩なアイディアのセットプレーでゴールを連発。17年ぶりの4強入りを懸けた準々決勝でも、負傷離脱中の左SB奥野奨太主将(3年)が考案したという新たなセットプレー戦術で決勝点を叩き出した。

 0-0で迎えた後半15分、高川学園は右CKを獲得すると、ニアとファーポストに3人ずつが分かれ、ニアの選手が空けたスペースへ飛び込む形のサインプレーにチャレンジ。ニアの“門”がイメージ通りに開かなかったが、「ニアのスペース空いていないなと思ったので、ファーに残っていたら流れるかな」と状況判断してファーに残ったMF西澤和哉(3年)の下へDFのクリアが落ちる。コントロールした背番号14が右足を振り抜き、値千金の先制点となった。

 対戦した桐光学園高の鈴木勝大監督が「高校生らしい凄くアイディアのあるセットプレーユーモアがあってチームの一つのストロングポイントなんだなと感じていました」と評し、同ゲーム主将のFW三原快斗(3年)も「映像と違って迫力があって、もっと徹底して(守備を)やればよかった」と悔んだ高川学園のセットプレー。「奥野を国立のベンチへ」を合言葉に戦う高川学園は、ピッチを離れてもチームと一緒に戦う主将のアイディアを活かして勝利した。

 代役として出場し、連日の好キックで快進撃に欠かせない存在となっている左SB山崎陽大(3年)は「全員で勝ち取れた」白星を喜ぶ。そして、奥野の負傷離脱によって「団結力、一体感は増したと思います」と説明した。

 セットプレーが話題となっているが、高川学園の強さの源になっているのが、団結力や自分たちから行動できる力だ。高川学園は筑波大のパフォーマンス局を参考に17年度から「部署制度」を採用。各部員が選手の体重管理や練習後のアイシングチェックなどを行う強化部、自チームのプレー分析をし、自分たちで映像を編集してミーティングを行う分析部、新聞の作成、SNSの投稿などを行う広報部、校内の畑で季節に応じた野菜を作ったりする農業部、用具部、おもてなし部、生活部、グラウンド部、審判部、企画部、総務部のいずれかに所属し、チームの運営に全員が何かしらの形で携わっている。

 他人事ではなく、自分が係わっているからこそ生まれる責任感と一体感。江本孝監督は「1年間通して部署活動であったり、我々高川で求めることであったり、時間が経つに連れて自覚が出てきました。部署のグループでの団結力であったり、輪がしっかり出てきた。今大会においても選ばれた30名やそれ以外の選手たちが、自分がピッチ上で何ができるか、ピッチ外で何ができるか、判断して子どもたちからアクションを起こせるようになっていることが今、このような状況になっている要因だと思います」とその力が17年ぶりの4強入りの要因となっていることを認める。

 山崎が「奥野が怪我した分、自分が頑張らないといけないと思いますし、その気持ちは誰よりも強いと思うので、プレーの面で奥野の分までしっかりと戦うことを意識しています」と語ったように、「自分以外の誰かのために」が大きな力に。ピッチ上では味方にミスが出てもマン・オブ・ザ・マッチ級のパフォーマンスを見せたGK徳若碧都(3年)やゲーム主将のMF北健志郎(3年)ら全員でカバーし、試合に出られない奥野も含めて、それぞれが自発的に今できることへ取り組み、チームの力になってきた。

 そして、再び接戦を制して4強入り。3日間の休養期間を経て準決勝で対戦するのは今年、インターハイ、プレミアリーグEAST2冠の青森山田高だ。山崎は「部署活動とか、サッカー以外の部分でも自分たちは成長してきているんだと、この大会で証明できていることはとても良いことだと思いますし、この選手権で、チーム全体で成長してきているので、まず山田に勝って、決勝に行きたいと思います」と宣言。チーム全体で成長を続ける高川学園が話題のセットプレーや団結力、行動する力も武器に、初の決勝進出を果たす。
 
(取材・文 吉田太郎)

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