[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ supported by sfida]
[10.22 選手権東京都Bブロック準々決勝 国士舘高 2-1 修徳高 南豊ヶ丘フィールド]

　全国で勝つチームを目指す国士舘高の中盤で1年生が存在感を放っている。MF島田龍は街クラブの強豪・クマガヤSCの同期5人とともに国士舘へ進学したボランチ。名将・本田裕一郎テクニカルアドバイザー(TA)の下で早くも先発起用されている1年生MFは、修徳高との強豪対決で試合を決める活躍をしてのけた。

　1-0の前半40分、右サイドでボールを持った島田は、「(右SHの)原田(悠史)さんが縦に行っておとりをしてくれたんで、あとは自分が上げるだけでした」。逆サイドにいた左SH濱田大和(3年)の要求に呼応。鋭い左足クロスを上げると、GKの目前で濱田が合わせ、決勝点となった。

　ピンポイントクロスで決勝点をアシストした島田は、「今までにないくらい左足が良くて自分でも驚いています」と微笑。国士舘は得点パターンのクロス練習を徹底的に行ってきたが、島田は中央で合わせる側だ。また、左足のクロスを得意としてきた訳では無い。それでも、「寮生なので朝練して段々と蹴れるように」なった成果を大一番で発揮した。

　チームが大いに盛り上がった得点シーン。加えて、「(自分のプレーは)あまり目立たない」と自己分析する1年生ボランチは、守備面でも利いていた。「自分の長所はヘディングとか守備で貪欲にやるところなので、あまり目立つプレーではないんですけれども集中して、一個一個セカンドボールとか回収するのは自分の役目」。普段よりも「調子が良かった」というこの日は相手の188cmFWンワディケ・ウチェ・ブライアン世雄(2年)の前に強引に潜り込むなど、セカンドボールの攻防戦で貢献していた。

「CBと自分たちのボランチの間合いが開きすぎないようにコンパクトにやって、競り合いでCBが勝ってくれると思っていたので、それを拾って前へ放り込むことだけを考えていました」。一つひとつのプレーをマジメに積み重ね、得意とするサイドチェンジで展開を変える。そして、チームを鼓舞する声も。本田TAもその活躍に頬を緩めていた。

　江南南サッカースポーツ少年団、クマガヤSCと強豪で活躍した島田は、高校進学時に選手権優勝歴を持つ複数の高校やJクラブユースからの誘いを受けたが、本田TAの言葉などに背中を押されて国士舘への進学を決断した。元々ヘディングやフィジカル面を強みとしてきたが、中学3年時からサイドチェンジの意識を高め、国士舘でも本田TAからパスの面で多くのアドバイス。MFジョルジーニョやMFエンゴロ・カンテのプレーもチェックしながらパスの質や守備力を磨いてきた。

　高校進学当初は3年生とのフィジカル差に苦戦。だが、経験を重ねながら際の部分でも戦えるようになってきている。全国大会で活躍し、高校選抜に選ばれること、また将来プロ入りすることが目標。その可能性を広げるためにも、1年生の自分に対しても優しく接してくれる先輩たちのためにも、まだまだ負ける訳にはいかない。

「(東京B準決勝進出は)嬉しいんですけれども、全国に出ることが自分のスタートラインだと思っているので、もっと全国で名を広めて有名になっていきたい」。2週間後の準決勝も目標への通過点。特別目立たなくてもチームのために泥臭く戦う1年生が、国士舘の決勝進出に貢献する。


(取材・文　吉田太郎)

---

●【特設】高校選手権2022