beacon

躍進から驕らずに10か月。心の持ち方変わった高川学園が5-0で山口準決勝進出

このエントリーをはてなブックマークに追加

前半29分、高川学園高FW梅田彪翔(右)が決めて2-0。後方には“トルメンタ”が描かれた横断幕も

[10.30 選手権山口県予選準々決勝 高川学園高 5-0 山口県鴻城高 おのサンサッカーパーク]

 躍進から10か月。高川学園高が、第101回全国高校サッカー選手権山口県予選準決勝へ進出した。30日、準々決勝で山口県鴻城高と対戦した高川学園は5-0で快勝。11月6日の準決勝で小野田工高と戦う。

 前回全国3位の高川学園は、今予選3試合目の準々決勝で初めて主力組が出場。開始2分に右クロスからU-16日本代表候補FW山本吟侍(2年)が決定的なヘディングシュートを放つ。その後も先制点を目指してサイドから連続攻撃。ただし、緊張で硬さが見られた序盤は、連係ミスや自陣でのファウルなど乗り切れない部分もあった。

 山口県鴻城は178cmCB星出一弥(3年)が相手エースFW山本相手に空中戦で健闘。また、CB大島幸也(3年)のカバーリングやGK吉原凜太朗(3年)のシュートセーブ、MF上山正典主将(3年)の巧みなドリブルなどで食い下がって見せる。

 高川学園は20分にFW梅田彪翔(3年)の放った対角の右足シュートが左ポストをヒット。なかなか1点を奪うことができなかったが、素早い奪い返しとサイド攻撃を継続する。2年生ながらチームの特別な番号「13」とキャプテンマークをつける右SB藤井蒼斗の効果的なキックや、左SB西村大和(1年)の思い切った攻め上がりも交えて相手にプレッシャーを掛け続けた。

 0-0の時間が続いたものの、先発として選手権3位を経験しているCB岡楓太(3年)は「(前半の)飲水の時に『自分たちやっていることは悪くないからこのまま変えずにやり続けよう』と意識してやりました」と振り返る。
 
 そして25分、高川学園はPAでMF大下隼鋭(2年)が粘り、右の藤井がクロスを上げる。これに反応した山本がDF頭上からヘディングシュートを打ち込み、先制点を挙げた。高川学園はその2分後にも大下の仕掛けから山本がヘッド。そして29分、大下が再び右サイドから仕掛ける。PAでラストパスをコントロールした梅田が右足で決め、2-0とした。

 畳み掛ける高川学園は31分にも加点する。この一年間で1番下のカテゴリーから這い上がってきたというMF松原朋榮(3年)が左サイドからCK。これをMF岸本航太(2年)がダイビングヘッドで決めると、後半3分にも藤井の右クロスを山本が左足で合わせて4-0とした。

 高川学園は後半、前に出ようとする山口県鴻城の背後を突く形でチャンスを作り出す。なかなか仕留めきれずにいたものの、32分、PAでこぼれを拾った梅田がDFを外してからの左足シュートで5点目。山口県鴻城は後半、MF徳田渓人(3年)の強烈なシュートがゴールを襲うなど4本のシュートを放ったが、高川学園の堅守をこじ開けることはできなかった。

 10か月前、高川学園は話題をさらった“トルメンタ”など多彩なセットプレーや堅守を駆使して混戦ブロックを勝ち上がり、14年ぶりの選手権ベスト4。山口県の小中高生に勇気を与えるような戦いを見せた高川学園は今年、周囲からの見られ方が変わる中で1年間を過ごしてきた。

 ただし、江本孝監督は「1年間奢ることはほぼ無かったと思います。あの素晴らしい舞台で青森山田に(0-6で)叩きのめされて、嬉しい反面、悔しさ、不甲斐なさを感じたから」と説明する。

 一方で、「技術的な部分がめちゃくちゃ上がったかというとそうではないけれども、チーム全体、スタッフとしても心の持ちようとか、求め方とか、求めるものとか変わっていると思いますね」。対戦相手の分析ももちろん大事だが、自分たちがやるべきことを全員でしっかりと表現することがより重要。勝ち方にも視線を向けてきた。選手権での躍進をピッチで、もしくはスタンドで見ている彼らは、全国で勝つため、勝ち上がるために何が必要なのか、イメージすることができている。

 チームは今大会、初戦を25-0、2戦目を12-0で連勝。この日は特別なことをしなくても、やるべきことをやり続けて5-0で快勝した。岡は「上に行くためには初戦が大事。今年の1回戦はサブの子たちが入りから良い試合をしてくれた。その流れできょうも来ている」と感謝する。初戦からの3試合で登録選手のほぼ全員がピッチに。自分たちの戦いを見つめ直しながら、ここからの戦いでさらにギアを上げて行く。

「去年のチームに比べたら自分たち一人ひとりの能力は低いので、その分運動量であったりがむしゃらに戦う姿勢であったりを今年はより意識して戦えるようにしたい。自分たち(DF陣)が点を取られなかったら負けることはないので、あとは前の選手を信じてクリーンシートで絶対に勝つだけ、この大会は無失点を意識して全勝したい」と岡。青森山田に敗れた選手権準決勝直後に現2、3年生たちが「来年も絶対国立」と誓ってから10か月、高川学園は驕らず、一戦一戦に集中して白星を掴み続ける。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2022

TOP