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技巧派たちがボールを握り続け、新たな才能が決勝点!昌平が2年ぶりの選手権で日本一に挑戦

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昌平高がボールを保持し続けて快勝。全国大会で日本一に挑戦する

[11.13 選手権埼玉県予選決勝 昌平高 1-0 成徳深谷高 NACK]

 昌平が普段以上にボールを握りに行き、攻め続けて日本一への挑戦権獲得――。第101回全国高校サッカー選手権埼玉県予選決勝が13日、NACK5スタジアム大宮で開催され、昌平高が2年ぶり5回目の優勝を飾った。成徳深谷高と対戦した昌平は、後半17分に1年生MF大谷湊斗が決勝ゴール。1-0で勝ち、夏冬連覇を果たした。

 テクニックに注目の集まる昌平だが、ポゼッション、サイドからの崩し、背後への抜け出し、セットプレーと攻撃、得点パターンは多彩。「ボールをしっかり運ぶ、しっかり握りながら、主導権を握る」(藤島崇之監督)ことをテーマとしたこの日は、ボールを“握り倒す”ような戦いを表現し、難敵・成徳深谷に勝ち切った。

 昌平はチーム屈指のテクニシャンであるMF長準喜(2年)を普段の2列目ではなく、ボランチ起用。彼が圧倒的なスキルを発揮しながらボールを保持し、前進させ、会場を沸かせた。その長とMF土谷飛雅(2年)の技巧派ボランチコンビがゲームをコントロール。その昌平は、立ち上がりから左の武村圭悟(3年)と右の田中瞭生(2年)の両SBがアグレッシブに前へ出て、ゴール前のシーンを作り出す。

 対する成徳深谷は、インターハイ予選に続いて初の決勝進出。前回の対戦では堅守と前線の迫力ある攻撃、またセットプレーを駆使して昌平を大いに苦しめている。今回も安定感抜群のGK木村航大主将(3年)を中心に守りを固め、左SB辻本晴也(3年)やCB増子颯竜(3年)のシュートブロックで簡単には得点を許さない。

 17分、成徳深谷はロングボールで競り勝ち、FW平井心瑛(2年)の落としをFW秋本光瑛(2年)がシュートへ持ち込む。また、推進力のある秋本が昌平の鹿島内定CB津久井佳祐主将(3年)に対してドリブル勝負を挑み、左SB鈴木嵐(2年}のロングスローも交えてゴールを目指した。

 だが、前半のCKはゼロ。なかなかセットプレーの数を増やすことができなかった。要因の一つは前回の対戦よりも昌平にボールを支配されたこと。昌平の長は「自分たちのペースで、自分たちがずっとボールを持っているというのを大切にしていたので、相手のセットプレーを少しでも減らせたのかなと思います。(個人としても)ボランチからの方がドリブル侵入しやすい」。長は一発の切り返しで相手DF3人を置き去りにして見せるなど、自在なボールコントロール。そして、多くの選手がボールに係わって攻める昌平は、両翼の注目エースと次世代のエースも個の力を示す。

 FC東京内定の10番MF荒井悠汰(3年)は足の怪我でベストコンディションではなかったものの、右からの縦突破や目の前のDFを剥がす動きを連発。前半40分には、CB石川穂高(2年)の素晴らしいサイドチェンジから右の荒井が中へのドリブルでDFをかわし、左足を振り抜く。

 これはGK木村に弾かれてクロスバーをヒット。また、昌平はその技術力を高く評価されて先発起用された1年生左SH大谷や、インターハイ得点王のMF篠田翼(3年)の仕掛けも相手を苦しめた。だが、前半を無得点で終えた昌平は、後半立ち上がりに押し返されてしまう。
 
 成徳深谷はセットプレーを獲得し、変化を加えて相手に揺さぶりを掛ける。14分には、敵陣で奪い返したMF安野心富(3年)がそのままボールを運んで右足ミドル。ドライブのかかった一撃がゴールを捉えたが、これは昌平GK上林真斗(3年)が好セーブで凌いだ。

 迎えた後半17分、昌平が先制する。敵陣左中間でこぼれ球を拾った大谷が切り返しから左足を思い切り振り抜く。そこまでシュートブロックを連発していた成徳深谷DFがここでも体に当てるが、コースの変わったボールはそのままゴールイン。成徳深谷の為谷洋介監督は「(あの時間帯は)クリアの方向が後手後手になってしまった。シュートコースに(DFが)入ったとしてもコースが変わってしまった」と残念がる。一方の昌平は新星の一撃に大興奮。殊勲の大谷に覆い被さり、1年生のトップチーム公式戦初ゴールを祝福していた。

 昌平はこの後もボールを保持。的確なカバーリングで守りを支えた津久井は“昌平らしく”ボールを回せたことを評価し、「前半も後半も押し込めたので。シュートもそんなに打たれていないので、それはデカかったなと思います」と振り返る。

 成徳深谷はなかなかボールを奪い返すことができなかった。だが、終盤にMF高橋流(3年)らがマイボールに変え、セットプレーに繋げる。だが、1点をもぎ取ることはできず。昌平が1-0で勝利した。

 昌平は元コーチの石田聡さんが前日に亡くなり、喪章をつけて戦った試合で優勝。昨年はこじ開ける力が不足して全国舞台に立てなかったが、当時の課題が今年は強みになっている。藤島監督は、「パワーでこじ開けるやり方もありますし、技術力のやり方、コンビネーションのところもありますし、それが局面に応じて出せるのが今年の良さだと思います」。相手の出足の速さ、粘り強い守備の前に1得点に終わったことは反省点。だが、今後へ向けてまた戦い方の幅が広がるゲームとなった。

 インターハイは準々決勝で津久井主将が大怪我を負い、続く準決勝で涙。指揮官は「同じステージはもういらないので、日本一を獲るという目標を持って日々の活動をしています」と語り、津久井も「インターハイの負けが悔しすぎたので、そこは昌平のみんな気持ちを持っていると思うので、借りを返して(全国大会で)しっかり勝ちたいと思います」と力を込めた。

 インターハイは3度の3位。選手権も19、20年度の8強が最高成績だ。長は「今年、絶対に全国のトップを狙えるチームだと思っているので、この代で全国のてっぺんを獲りたいです」と言い切った。両CBと守護神を中心とした堅守、得点力、系列のFC LAVIDAから6年間磨き上げてきた個々の技術力・判断力の高さも全国トップレベル。その昌平が年々積み上げてきた力、また今年の武器を存分に発揮して今冬、新たな全国王者となる。

(取材・文 吉田太郎)
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