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国立での選手宣誓から決勝へ…誰よりも濃い13日間過ごした東山主将DF新谷陸斗「歴史を作れたことを誇りに思う」

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東山高DF新谷陸斗(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.9 選手権決勝 岡山学芸館高 3-1 東山高 国立]

 国立競技場での選手宣誓から誰よりも濃密な13日間を経て、選手権決勝の舞台に立った東山高DF新谷陸斗(3年=C大阪U-15)は試合後、凛とした姿でミックスゾーンに登場した。「東山は決勝に来たことがなかったし、歴史を作れたことを誇りに思う。先輩方が作ってくれた歴史に名を刻めたと思うし、負けたことは悔しいけど誇りに思いたい」。頼れるキャプテンは同校史上最高の準優勝という結果に胸を張り、チーム全員での奮闘を称えた。

 岡山学芸館との選手権決勝、東山は立ち上がりから一方的に主導権を握っていたが、たった一つのピンチから劣勢を強いられた。セカンドボールの拾い合いで後手に回ってカウンターを許すと、相手FW今井拓人(3年)のシュート性のクロスがゴール前へ。新谷が懸命に戻ってクリアしようとしたが、なんとか触ったボールは自陣のゴールマウスに吸い込まれた。

 全国決勝という大舞台でのオウンゴール。さすがの新谷にも「自分の不甲斐ない形で失点して申し訳ない。この舞台でやってしまった」と動揺が走った。それでも福重良一監督が「人間的に素晴らしいので、みんながリスペクトしている」と認める主将の危機に、これまで何度も救われてきた仲間たちが手を差し伸べた。

「焦りがあったけど、チームメイトが声をかけてくれて立て直すことができた。『冷静にやれ。慌てることはない』と声をかけられた」

 その後も東山は失点などなかったかのように、冷静にボールをつなぎ、攻勢の機会を狙い続けた。新谷自身も落ち着いた対人対応を続け、ややリスクをかけて攻める攻撃陣を後方で支えた。そして前半44分、見事なサイドアタックからMF真田蓮司(3年)がスーパーゴールを突き刺し、主将のミスを帳消しにしてみせた。後半の攻勢は及ばなかったものの、新谷はこのチームへの誇りを何度も語った。

「3年間通して苦しい時期、勝てない時期があったけど、チームワークで乗り越えてきた。このチームのキャプテンができてよかった」。昨年12月28日の選手宣誓でも言及したように、新型コロナ禍で過ごした3年間。それでも「チームワークがより強くなったのはコロナ期間があったからだと思うし、ネガティブだけでなく、ポジティブなこともあった」という結束力は、最後まで東山の強みであり続けた。

 そんな主将が唯一悔やんだのは、スタンドの応援団に思いを向けた時だった。「結果としてここまで来れたので、自分の宣誓で勢いづいたのはよかった。11人だけでなく、応援席のみんながいたからこそここに来れた。決勝は負けたけど、最後まで声をからして応援してくれた。日本一の応援団にさせてあげたかった」。第101回大会という新時代の幕開けを告げる選手宣誓を担い、国立決勝で誇り高くピッチに立ち続けた主将の夢は、きっと次世代に受け継がれるはずだ。

(取材・文 竹内達也)
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