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[MOM4473]星稜GK佐藤竣基(3年)_「止める自信はある」…与えられた出番で輝いたPK職人が決勝へと導く

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PKセーブで勝利を引き寄せた星稜高GK佐藤竣基(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.28 選手権石川県予選準決勝 遊学館高 0-0(PK2-4) 星稜高 金沢市民サッカー場]

「チームで一番止めくれている。今日も1本、2本は止めるだろうと思っていた」。河合伸幸監督が口にすれば、主将のDF倉畑鉄将(3年)も「セービングが上手くて、毎回PKになったら出てくる。いつも結果を残してくれるので助かっています」と続ける。星稜のPK職人、GK佐藤竣基(3年)が期待通りの働きでチームに勝利を引き寄せた。

 今大会、ここまでスタートで出てきたのはGK橋本育磨(2年)。「PKには昔から自信があった。小学校の頃から止めている」と胸を張る佐藤はベンチで万が一の展開に備えてきた。遊学館との一戦も「80分で勝ってくれると思っていた」が、前後半でも決着が付かず延長戦に突入すると、延長後半に入るタイミングでPK戦を見据えて投入される。

 緊迫した展開で途中からピッチに入るのは簡単ではない。「失点しないようにDFに声をかけていた」と話す佐藤は落ち着いた対応で無失点を継続し、見せ場であるPK戦を迎える。「PKは止める自信があるので、勝てるなと思っていた」。そう自信を覗かせる守護神のPKストップのコツは、試合中に相手の特徴を見ておくことだという。

 迎えた相手のトップバッターは、技術に優れた中盤の選手。「テクニックがありそうな選手だったで、(動きとはコースを)変えてくると思った」と振り返る佐藤は思い切って左に飛ぶと読みが見事に的中し、シュートセーブに成功する。3本目のキックもコースを的中させて手に触れたが、ボールの勢いに負けてしまった。結果的に1本のストップに終わったが、星稜は4人のキッカー全員が成功し、0-0(PK4-2)で勝利した。

 勝利の立役者となった佐藤だが、高校入学後に歩んできた道のりは平坦ではない。「県内で一番強いチームに行こうと思った」ものの選手権優勝の経験を持つ強豪とあり、同じポジションのライバルは多い。同学年のGKは佐藤のみだったが、上級生には7人もの先輩がいたため、序列は下から数えた方が早かったという。

 何より、腰痛に苦しめられてきた。特に2年生だった昨年は断続的に負傷し、満足にサッカーができなかった。昨年11月に行なわれた県の新人戦でゴールマウスに立ったものの、以降は再び怪我が続く。公式戦に出場したのは10月8日に行なわれたプリンスリーグ2部、星稜高2ndと丸岡高の試合のみだ。

 だが、プレーできる期間に行なった練習試合ではPKを止め続けていたため、スタッフからの信頼は厚い。コーチから「準決勝と決勝はPK戦になるかもしれない」と声を掛けられた佐藤はPK練習を重ねて、キッカーの蹴り方を観察するなど出番に備えてきた。そうした姿を周りも見ていたため、信頼は厚い。延長戦に入る前には橋本から、「ゼロで行くからPKはお願いします」と声を掛けられていたという。

 PK職人ぶりを発揮した佐藤だが、公式戦でPK戦に挑むのはこの日が初めて。チームが快勝すれば自らの出番は訪れないため、自らの出番が来るのは複雑な心境かもしれない。下級生にスタメンを譲る悔しさもあるだろう。だが、与えられた出番で輝ければ良いと思っている。「ずっと橋本がスタメンで出ているので、割り切ってサポートをしていきたい。でも、PKになったら自分が出て勝たせたい。止める自信はある」。決勝も80分以内での勝利を願いつつも、万が一に備えて万全の準備を進めていく。

(取材・文 森田将義)

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森田将義
Text by 森田将義

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