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都立のアグレッシブ軍団・片倉の奮戦及ばず。「大器晩成の」大成が4度目の正直へ向けて準々決勝突破!

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お互いが持ち味を出し合った好ゲームは大成高が2年ぶりの西が丘へ!

[10.28 選手権東京Bブロック準々決勝 大成高 5-1 片倉高 駒沢補助競技場]

「ウチも『大器晩成の大成』なので、早咲きはなかなかできないんですけど、夏を越えて、チームも1つになってきていると思うので、集大成で言うとこの選手権の切符というのも獲れるぐらいに、パフォーマンスは上げてきてくれていると思っています」(大成高・豊島裕介監督)。

 お互いに攻め合う好バトルは、悲願達成に燃える大成に軍配。第102回全国高校サッカー選手権東京都予選Bブロック準々決勝が28日、駒沢補助競技場で行われ、初のベスト8へと勝ち上がってきた都立の片倉高と初の全国を狙う大成高が激突。双方が持ち味を出し合った試合は、FW舟山陽人(3年)とFW塚本類(3年)が2ゴールずつを挙げた大成が5-1で勝利を収め、2年ぶりとなる準決勝へと勝ち上がった。

 序盤から勢い良く飛び出したのは大成。前線に入った舟山とFW宮崎悠斗(3年)が時間を作りつつ、ドイスボランチを組むMF松井一晟(3年)とMF佐藤マイク将史(3年)が巧みに配球。そこから右のMF伊東亘(3年)、左の塚本が積極的に仕掛けることで、ゲームのリズムを掴む。

 先制点は前半14分。佐藤の力強いパスから抜け出した舟山がきっちりゴールを陥れると、20分にも9番を背負ったCB阿久津裕輝(3年)の正確なサイドチェンジから、塚本がクロスバーに当てたシュートのこぼれを、舟山が頭でプッシュ。10番が電光石火で連続ゴールをマークし、大成が2点をリードする。

 ただ、片倉は折れず。失点直後の22分。高い位置でボールを奪うと「自分が点を獲りたいのと、チームを勝たせたいという気持ちがありますし、あとは後ろから出ていくとつかまりにくいので結構攻撃参加はしちゃいますね」というCB熊谷慈玖(3年)がスルスルと上がってラストパス。「慈玖さんが持った時に『裏に来るな』とは思って、信じて裏に走ったらボールが来たので、それを決めるだけでした」というFW歳森杏介(2年)のシュートがゴールネットを鮮やかに揺らす。

 ここからはお互いに次の1点を窺う時間が続く。27分は大成。伊藤のドリブルから、塚本が枠へ収めたシュートは片倉のGK小野秀悟(3年)が懸命にキャッチ。34分も大成。左サイドを仕掛けた塚本のクロスから、宮崎のヘディングはここも小野がキャッチ。一方の片倉は右にMF小林漣(3年)、左にMF石坂垣空(3年)を明確に張り出させ、いわゆる“ピン止め“効果とワイドを使ったアタックの、攻守両面で相手を悩ませる戦術を遂行。得点以降は決定機こそ掴めなかったが、同点の可能性も漂わせながら、2-1で前半の40分間は終了する。

 ゲームの大きな分岐点は後半1分に訪れた。キックオフ直後に佐藤が左サイドへフィードを送ると、塚本がそのまま仕掛けてフィニッシュ。ボールはゴールネットへ鮮やかに吸い込まれる。

 これでスコアは3-1に。「相手がかなりハイラインを作ってくるのはわかっていましたし、2列目からの飛び出しはこの1週間でかなり準備をしてきたので、その形でしっかりと点が獲れたのは良かったかなと思っています」とは豊島監督。大成は16分にも右サイドを単騎で運んだ伊藤が、強烈なシュートをゴールへ突き刺し、4点目も奪ってみせる。

 だが、「自分たちは前から前から行こうというチームなので、そういう意味で片倉の形が出た時間帯だったのかなと思います」とキャプテンを務めるDF大川翔(3年)が話したように、片倉の前進するアグレッシブさは微塵も衰えない。ショートコーナーから石坂がヒールリフトでの突破を披露すれば、熊谷は果敢なオーバーラップからシュートまで。

「自分たちのサッカーはスイッチとかクロスオーバーだったり、相手を惑わすようなプレーが多いと思うんですけど、後半に自分たちの時間帯が来た時には、そういう崩しをして、T1クラスのセンターバックやディフェンダー相手にも惑わすことができたのかなって思います」と話した大川の言葉にも頷けるようなアタックを繰り返す。

 それでも、やはり試合運びという面では大成が1枚上手。34分にも途中出場のDF稲本兼伸(2年)のパスから、ラインの裏へ抜けだした塚本がGKとの1対1を冷静に制し、終わってみればファイナルスコアは5-1。「選手も僕自身も相手をしっかりリスペクトして試合に入れたので、そこは良かったかなと思っています」と豊島監督も話した大成が難しい相手との一戦にもきっちり勝ち切って、西が丘でプレーする権利を手繰り寄せた。

 近年の大成は2019年にバーンズ・アントン(町田)や宮脇茂夫(新潟経営大/沼津内定)を擁してインターハイで初の全国出場を勝ち獲るなど、都内でも各種大会で上位進出を繰り返してきた。とりわけ選手権予選では過去5年で3度のファイナル進出。これは國學院久我山高と並んで都内の高校で最多の数字となるが、その3度はいずれも悔しい敗戦を突き付けられており、まだ冬の全国切符を掴んだことはない。

 豊島監督はチームが積み重ねている歴史について、こう語っている。「ウチの選手たちにも『ローマは一日にして成らず』とカッコよく言っているんですけど(笑)、本当に悔し涙を流した先輩がいっぱいいて、今日の試合もそういう先輩がいっぱい来てくれていたんですけど、その先輩たちの1つ1つの結果が今に繋がっていることを、常々今の現役の選手たちにも言っています。『だから、将来の大成生も君たちが作ったものを受け継いでいくんだよ』という話はしているので、ファミリー感はできてきていますし、過去の涙を流した先輩が今は指導者として大成に戻ってきてくれたりしているので、より強い大成になってきているのかなと思います」。

 悲願とも言うべき選手権出場まではあと2勝。とはいえ、指揮官は自身のメンタルも含めて、例年とは少し違う空気を感じているという。「いつも以上にあまり浮き足立っていないところがチームにも僕自身もあるんですよね。だから、今年は平常心で準決勝も、もし勝てたら決勝も行きたいな、という感じなんです。いつもは力んでいたんですけど、それって選手に伝わっていたのかなという想いもあったので、みんなが自然体でいることが大事かなと思っています」。

 創部48年目で引き寄せたい『4度目の正直』へ。2年ぶりとなる西が丘の舞台で “2勝”を挙げるべく、大成の選手たちはポジティブなイメージを膨らませているに違いない。



(取材・文 土屋雅史)
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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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