beacon

[選手権]「本当に人間的に凄いやつ」。左SB吉村太陽主将が“環境を忘れさせる声”と、開志学園JSC高を救う同点弾:新潟

このエントリーをはてなブックマークに追加

後半17分、開志学園JSC高の左SB吉村太陽主将(3年=ビアンコーネ福島出身、10番)が同点ゴール

[11.3 選手権新潟県予選準決勝 上越高 3-4(延長)開志学園JSC高 五十公野公園陸上競技場]

「学校生活も、寮生活も彼が全部仕切ってやっているので。リーダーシップを発揮できるし、苦しい時に声を掛けることもできるし、本当に人間的に凄いやつです。ピッチの中もアイツに任せておけば(大丈夫)。凄いキャプテンです」。開志学園JSC高の宮本文博監督は左SB吉村太陽主将(3年=ビアンコーネ福島出身)について絶賛する。歴代でもトップクラスという主将が、声とプレーで開志学園JSC高を6年ぶりの決勝へ導いた。

 この日は1800人の観衆の中での戦い。吉村は「今日はこういう良いピッチで、観客もたくさん入っている中で緊張とか不安という面が強かったと思うので、いつも以上に一つ一つプレーに敏感に反応してあげて、やっぱり少しでも良いプレーが出たら褒めて、そいつのプレーに集中させる。“環境を忘れさせるような声”を意識していました」と振り返る。

 両チームの大応援の中、普段よりも細部まで意識して声がけ。「このチームは本当に個が強くて、一人ひとり強力な個人の力とか質を持っている」という集団が上手く噛み合うように、同じ方向を向くように、欠けているところを声とプレーで埋めようとしていた。

 試合は2-0からの3失点で追う展開に。だが、吉村は率先して球際で戦い続け、ゴールで歓喜をもたらした。後半17分、CB大鈴将吾(3年)のヘディングシュートがポストをヒット。このこぼれ球に吉村がいち早く反応し、左足でゴールへ蹴り込んだ。

「勝ち越された上越の3点目は自分が防げた失点だったので、『このままで終わったらいけない』と思っていましたし、ウチはセットプレーで良いボールが入るし、中で競れる人間もいるので、やっぱりセカンドがこぼれてくることは信じていましたし、そこは疑わずに入ってそこに(ボールが)こぼれてきました」

 後半立ち上がりに喫した失点は、シュートのこぼれ球への反応が一瞬遅れて上越高に押し込まれたモノだ。それを取り戻すことを目指し、チームを救う同点弾。感情を表に出して喜んだ主将は、その後も味方の好プレーに対する賞賛など思いを全身で表現していた。

 延長前半の味方の決勝点のシーンでも、喜びの輪から遠く離れた位置で歓喜。4-3の延長後半4分に負傷交代したが、「(チームメートを)信じていましたし、やってくれると思って、ただ祈って見ているだけでした」。仲間たちが成し遂げた勝利にまた喜びを爆発させていた。

 キャプテンマークと10番を託されている吉村。個性の強い仲間たちを授業やウォーミングアップからピッチ内外で集中させることは大変だったようだ。入学当初から意識高く取り組んできたという吉村だが、「今年キャプテンに任命されてからやんなきゃなという気持ちはさらに増えましたし、そういう部分ではありがたい指名でした」。ピッチ内外で声がけを継続を続け、チームは目に見える変化。この日は苦しい状況でも粘り強く戦うなど、開志学園JSC全体一つになって立ち向かっていたことをとても喜んでいた。

 2年前の選手権予選で敗れた上越との戦いで「気合は入っていました」という主将は、あと1勝。「もちろん、(全国トップクラスを持つチームで)相手に不足はないと思っています」と評した帝京長岡高との決勝でも、積み上げてきたことを全てぶつけ、一緒に成長してきた仲間たちと勝利を喜ぶ。

(取材・文 吉田太郎)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

TOP