beacon

[選手権]指揮官が何よりも喜んだ「成長した姿を見れたこと」。開志学園JSC高が上越との延長戦を制し、決勝進出!:新潟

このエントリーをはてなブックマークに追加

延長前半開始直後、開志学園JSC高FW中家一優が決勝ゴール

[11.3 選手権新潟県予選準決勝 上越高 3-4(延長)開志学園JSC高 五十公野公園陸上競技場]

 成長した姿を見せた開志学園JSCが全国王手! 3日、第102回全国高校サッカー選手権新潟県予選準決勝が行われた。第2試合は上越高開志学園JSC高が激突。延長前半に交代出場FW中家一優(3年)が決勝ゴールを決め、開志学園JSCが4-3で勝った。

「ここまで彼らが身体を張って粘れると私自身も思っていなかったので、一戦一戦成長してくれていると思っています。(もちろん、)優勝したいとかありますけれども、それ以上に彼らが成長した姿を見れたことが嬉しいですね」。激闘を制して6年ぶりの決勝進出。開志学園JSCの宮本文博監督は選手たちの成長を心から喜んでいた。

 今季、新潟県1部リーグでの対戦成績は1分1敗。優勝してプリンスリーグ北信越参入戦へ進む上越に対し、開志学園JSCは3位でその道を断たれている。「モチベーション的にもウチにとっては良い相手だったのかなと思います」と宮本監督。その開志学園JSCは最高の入りを見せる。

 前半5分、MF岩渕葵羽(3年)が獲得した右CKを右SB石橋尚士(3年)が蹴り込む。中央へ飛び込んだCB小林和歩(3年)が頭で合わせて先制。さらにMF浅野夏輝(3年)のドリブルシュートやFW小谷野叶(3年)の抜け出しからのシュートで相手ゴールへ迫る。すると16分、MF土山都吾(3年)のパスから右中間を突いたSH阿部日夏太(2年)が右足シュートを叩き込み、2-0と突き放した。

 23分、相手のシュートを頭部でブロックしたCB小熊啓汰(3年)がそのまま交代するアクシデント。その後も岩渕やMF西野仁就(3年)がセカンドボールの攻防で奮闘し、アグレッシブにシュートを打ち込んでいたが、上越も球際でのバトルで負けない。29分には、MF小林優大(1年)が右サイドから左足で蹴り込んだCKがそのままゴールを破り、1点差とした。

 上越はキープ力に秀でた長身FW今井律杜(3年)と、一際落ち着いてボールを運ぶ10番MF望月洸聖(3年)が特に存在感。彼らにMF白井翔(3年)が係わる攻撃で攻め切るなど反撃を続ける。そして、39分、右サイドからのクロスをFW石戸珠莉也(3年)が落とし、今井が右足で同点ゴールを決めた。

 上越は16年創部の新興勢力。元Jリーガーの藤川祐司監督に率いられたチームは土のグラウンド(現在は人工芝)、県4部リーグからスタートし、周囲のサポートを受けながら一つ一つ積み重ねてきた。指揮官が「我慢強くなりました」という今年の世代は、コーチ陣の予想を上回る県1部リーグ制覇と選手権予選ベスト4進出。この日も前半のうちに追いつくと、後半2分に今井のシュートのこぼれをMF梅澤龍翔(3年)が右足で押し込み、逆転して見せる。

 開志学園JSCは2-0からの3失点で苦しい展開に。だが、GK蒲澤海翔(3年)のファインセーブなどで踏ん張ると、ハードワークと精力的に発し続ける声が印象的な左SB吉村太陽主将(3年)に後押しされて流れを徐々に取り戻す。17分には、右サイド後方のFKから交代出場CB大鈴将吾(3年)がヘディングシュート。ポストの跳ね返りを吉村が左足で押し込み、同点に追いついた。

 上越は望月がボールを失わずに前進させ、ロングスローなどから勝ち越し点を狙う。対する開志学園JSCは、切れ味鋭いカウンターで相手ゴールを強襲。特に阿部は抜群の推進力を発揮するなど、個の力で相手を押し返していた。

 上越もシュートブロックを徹底するなど集中力を切らさずに守り、試合は3-3のまま延長戦へ突入。その開始40秒、延長前半開始から投入された開志学園JSCの中家が大仕事をしてのける。この日、強さと正確な配球を見せていた土山が右中間から浮き球のスルーパス。「土山がボール持った時に、顔が上がったので、自分が斜めに動き出して(良く覚えていないが)ダイレクトで。本当に気持ち良かったですね。最高でした」という中家が右足ダイレクトでゴールを破った。

 これで4-3。殊勲の中家は「結構点の取り合いみたいな状況で延長の前半から入ったので、絶対に点を決めてチームを勝利へ導こうと思っていた」。この中家が同じく交代出場したFW菊池壮吾(3年)とともに前からのチェイシングを繰り返す。上越もスルーパス、クロスから同点のチャンスを作っていたが、シュート精度を欠くなど追いつくことができない。そして、試合終了の笛。開志学園JSCの選手たちは、まるで優勝したかのように喜びを爆発させていた。

 開志学園JSCは、一時逆転されながらも非常に一体感のある戦いで逆転勝ち。準々決勝で前回王者の日本文理高を撃破し、この日は上越へのリベンジに成功した。宮本監督は「(甘さもあったが、)高校3年生のこの時期になって伸びてきた。人のことを考えてあげることとかができ始めて、チームとして機能してきた。この子たちの持っている力は計り知れない。良い意味で読めないです。今回も『こんなこともできるんだ』と発見したり、私自身も成長させてもらっている」と微笑む。

 また、吉村は「間違いなく、前回の(ベスト)8で文理とやった時よりも成長できた試合だと思いますし、やっぱり技術面での成長というよりも、精神面での劣勢に立たされた時のどう立ち向かっていくか、という成長が見られたので良かったと思います」とコメント。そして、帝京長岡高との決勝(12日)へ向けて「ここまで自分たちのサッカーを信じてやってきたので、ここまで積み上げてきたものを信じて自分たちのサッカーをするだけかなと思っています」と宣言した。相手はプリンスリーグ北信越1部で優勝目前の強豪。だが、成長を続ける開志学園JSCがその壁を乗り越え、14年度以来の選手権切符を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

TOP