beacon

「すげぇなこいつら」と指揮官も涙…勝ちに拘る名古屋、愛工大名電に逆転勝利で初の全国まであと一つ:愛知

このエントリーをはてなブックマークに追加

逆転勝利の名古屋高が初の選手権出場に王手

[11.4 選手権愛知県予選準決勝 愛工大名電高 1-2 名古屋高 CSアセット港サッカー場]

 第102回全国高校サッカー選手権愛知県予選準決勝が4日に行なわれた。愛工大名電高名古屋高の一戦は、名古屋が2-1で勝利した。11日の決勝では刈谷高と対戦する。

 試合後、見事な逆転劇に湧く選手の傍には、目に涙を浮かべる山田武久監督の姿があった。「この展開はさすがに成長したなと思えた。“すげぇなこいつら”と思うと込み上げてきた」。今年に入ってからの成長は著しい。苦しい試合を諦めずに勝ち試合へと持ち込んだ名古屋が選手権初出場に大きく前進した。

 序盤に存在感を放ったのは、圧倒的なスプリント能力がプロからも注目されるMF原康介(3年)。「名電とはリーグ戦で2回やっているけど、相手があまり対応できていない気がしていた。相手は2枚で対応してきたけど、間が生まれるので2枚で来てくれた方が抜きやすい」。言葉通り思い切りの良い突破で見せ場を作ると、前半6分には原の仕掛けからMF川瀬陸(2年)がゴールを狙う。続く7分には原がショートCKの折り返しからドリブルを仕掛けてシュート。こぼれ球をDF井上款斗(2年)が拾って、FW小川怜起(3年)が再びゴールを目指したが、相手DFに阻まれた。

 14分にはCKから愛工大名電DF桒山鉄人(3年)にヘディングシュートを打たれたが、GK小林航大(3年)が好セーブで防ぐ。以降は飛距離十分なDF月岡陸斗(3年)のロングスローなど飛び道具を交えながら先制点を狙ったが、1点を奪えないまま試合を折り返した。

 ゴールは奪えなかったものの、守備での危ない場面は少ない。「この試合のポイントは、11番(高木和)の管理に尽きると思って、1週間徹底してトレーニングしてきた」と話すのは山田監督。前半は上手く守備陣がケアしていたが、後半4分にはクリアボールを相手に拾われると一気に高木がサイドを突破。ゴール前に入ったボールを後方から走り込んだFW後藤梨久(3年)に決められて、愛知工大名電に先制を許した。

 追い掛ける展開を強いられた名古屋だが、失点は想定内。後半の立ち上がりだったこともあって、落ち着いて立て直す時間はある。「下を向かずに全員で声を掛け続けた」と振り返るのは月岡だ。12分には小川が前に運んだこぼれ球を川瀬が拾って左に展開。原が切り返しからシュートを打つなどしたが、ゴールが生まれずにいると後半半ばからは選手とシステムを変えて攻めに出る。

「劣勢というかビハインドだったので、点を取りに行くしかなかった。3-4-3にして中盤のサイドも突破力がある選手を置いた。3人で守って7人で攻めるのが意図。トーナメントなのでそれで0-2にされたら、仕方ない」。山田監督の策がハマり、29分にはDF田中響貴(3年)が左からクロス。左ポストに当たったこぼれ球を途中出場のFW山本凜蔵(2年)が押し込んだ。さらに32分には左サイドから入れた月岡のロングスローを田中が頭で合わせ、一気に逆転。怒涛の追い上げを見せた名古屋の逆転勝ちとなった。

「前半にあれだけ攻めていて、セットプレーで惜しいシーンもあって、最終的には一発で泣いてきたのが今までのうちだった」。山田監督の言葉通り、今日の試合展開は今までの名古屋なら負けていただろう。初の選手権出場が目の前に迫った2年前の決勝も良いサッカーをしながら、中部大一高に敗れている。「良いサッカーをしても負けたら意味がないと今年はずっと言われてきた」と月岡が話す通り、良いサッカーができなくても勝てるチームを目指してきたのが今年の名古屋だ。

 大会初失点を許しても気持ちを切らさず最後まで戦い続けた。負ける展開を勝ちに持ち込めたのは、取り組みの成果と言える。「こういう苦しい試合を勝ち切ったのは大きい」と山田監督が口にする通り、決勝にも生きるゲームだったのは間違いない。決勝でも勝ちに拘り、最後まで粘り強く戦ってチームの新たな歴史を切り拓く。

(取材・文 森田将義)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
森田将義
Text by 森田将義

TOP