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結果が出ず、苦しい時期もブレなかった日本一という目標。昌平が感謝の埼玉連覇!

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日本一を狙う昌平高が埼玉連覇

[11.14 選手権埼玉県予選決勝 昌平高 2-0 浦和南高 埼玉]

 第102回全国高校サッカー選手権埼玉県予選決勝が14日に行われ、2連覇を狙う昌平高と5年ぶり優勝を目指す浦和南高が激突。昌平が2-0で勝ち、2年連続6回目の全国大会出場を決めた。

 昌平は今年、インターハイ予選準決勝で浦和南にPK戦で敗戦。昇格1年目での優勝を狙ったプレミアリーグEASTも現在8位と十分な結果を残すことができていない。7月末に大黒柱のU-17日本高校選抜候補CB石川穂高主将(3年)が膝の大怪我で離脱し、10月にはチームの礎を築いてきた藤島崇之監督が退任。難しい1年だったことは間違いない。

 思うような戦いができない中、「今年の昌平は厳しい」という声も選手たちの耳に届いていたという。だが、ゲーム主将のCB佐怒賀大門(3年)が、「自分たちは練習前から円陣をするんですけれども、その時から一人ひとり意見を言う中で、そういう(周囲からの)言葉もあるのは知っていたので、それは本当に『見てろ』という気持ちで挑んでいたので、ひとまず良かった」。ブレずに目標の日本一を目指して成長してきた昌平が、まずは激戦区・埼玉を突破した。

 昌平は準決勝で大量7得点、浦和南も準決勝で5得点をマークしている。だが、決勝は手堅い展開となった。立ち上がり、ボールを保持して押し込む昌平は5分、U-17日本代表MF山口豪太(1年)が左サイドを個人技で突破。ラストパスをU-17日本高校選抜FW小田晄平(3年)が1タッチで狙う。最終ラインからボールを動かし、両翼のMF西嶋大翔(3年)と山口を活用。そこから連係で崩そうとするが、浦和南はCB長谷川葵巳(3年)や左SB橋本優吾主将(3年)らDF陣が集中してスペースを消し、入ってきたボールをクリアする。

 なかなか攻め切る回数を増やすことのできない昌平に対し、序盤からシンプルな攻守を徹底する浦和南はロングボールで押し返し、FW石川慶(3年)がDFを背負っての動きで健闘。また、10番MF伊田朋樹(3年)が右サイドからの仕掛けやプレースキックで攻撃を牽引していた。23分には、伊田が左サイドからゴール方向へ向かうストレート軌道のFK。好キックに複数の選手が走り込んだが、昌平GK佐々木智太郎(2年)が飛び出して大きく弾く。

 浦和南は26分にも右サイドからのラストパスをMF志田出帆(3年)が1タッチで狙う。昌平はU-17日本高校選抜MF長準喜(3年)が相手MF荻野凌我(3年)にマークされたこともあり、全体的にドリブルや高い位置からの連動した崩しが少ない。それでも、正確にボールを動かして揺さぶり続け、先制点を挙げた。

 前半28分、準決勝3得点のU-17日本高校選抜候補MF土谷飛雅(3年)が左でボールを運ぶと、中央のMF大谷湊斗(2年)を経由して逆サイドへ展開する。右サイドでボールを受けた右SB田中瞭生(3年)はカットインから左足を一閃。ボールはブロックしようとしたDFの足とニアポストを弾いて、ゴールへ吸い込まれた。

 先制した昌平だが、前半のシュート数は4対1。攻撃面の特長を十分に出せた訳では無い。それでも、指揮を執った村松明人コーチが勝因として「堅いゲームの中でもバックラインとGKが崩れなかったのは一つかなと思っています」と挙げたように、CB佐怒賀とCB坂本航大(2年)、GK佐々木を中心に安定した守りを続ける。前半の被CK数はゼロ。相手が得意とするセットプレーの機会を与えなかった。

 浦和南の野崎正治監督は0-1で迎えたハーフタイムの指示について、「何しろ向こうの10番、8番、7番に全部拾われてしまうので、そこの出足のところだけですよ。そこで回収できなかった。後手後手に回った」と説明していた。昌平は10番MF長準喜(3年)と8番MF 大谷湊斗(2年)のダブルボランチとトップ下の7番MF土谷の攻撃的な中盤トリオがセカンドボールの回収で健闘。後半も大谷が幅広い動きを続け、長が球際で強さを見せていた。

 浦和南は後半8分に投入されたMF日高大祐(2年)が投入直後にテクニカルなドリブルで前進。空気感を変えると、直後にはMF濱口陽央(3年)の左クロスに荻野が飛び込んだ。対する昌平は西島の仕掛けなどサイドからチャンスを作るも、ラストの精度が上がらない。

 それでも、DF陣の集中した守りによって1-0を継続。そして、前半35分の投入から好プレーを見せていたMF三浦悠代(2年)が貴重な追加点をもたらす。後半32分、三浦は左サイドで左SB前田大樹(3年)からのパスを受けると、ゴール方向へのドリブルから右足を振り抜く。ファーサイドへのネットを揺らし、2-0とした。

 村松コーチは、準々決勝・細田学園高戦の後半に追いつかれてからの戦いにチームの成長を感じていたという。追い込まれると単調な攻撃になりがちだったチームが、落ち着いて空いているサイドへ振ってから仕掛け、または中央突破も。「色々なことを最後までやり続けていた」チームは延長後半に決勝点を決めた。この日も相手のタイトな守りに苦しめられたが、「どこかで空いて、PAの中に入れるのかなと思っていました」(村松コーチ)。焦れずに攻め続けて2つめのゴール。白星へ大きく前進した。

 浦和南は2枚替え直前のタイミングで痛い失点。この後、MF竹内翔馬(3年)のロングスローなどセットプレーからゴール前のシーンを作り出す。40+1分にはゴール前の混戦から交代出場FW掛谷羽空(2年)がゴールネットを揺らしたが、オフサイドの判定。浦和南の名将・野崎監督も、「隙が無かったですね」と認める戦いで昌平が2連覇を達成した。

 昌平の長は、全校応援で後押ししてくれた仲間たちに感謝する。「色々な問題があったんですけれども、その中で応援してくれる仲間がいるというのは嬉しいですし、その中で自分たちは勝たないといけないという責任があるので、勝てて良かったです」。学校関係者、同級生ら様々な人たちの支えを受け、チームが難しい時期も成長することにこだわってきた。

 長は「勝てていなかったので、(他のことに目を向けるよりも)『自分たちの心配をしろ』って仲間で話していたので、そういう面でブレずにやってきたことがこういう結果に繋がったと思います」と語り、「(自分たちは)日本一を取らないといけないチームだと思っています。色々な責任がありますし、本当に今年で日本一になって色々な人に恩返ししたいです」と力を込めた。

 また、佐怒賀も「インターハイで負けたり、プレミアリーグも悪い時期が続いたんですけれども、村松さんから『日々成長』ということで自分たち練習にこだわっていますし、日本一という目標掲げて、自分たちはできると思っているので、これからも練習からこだわってやっていきたい」。昌平はインターハイで3度3位に入っているが、選手権の最高成績は8強。日本一の難しさは十分に理解しているが、自分たちもまだまだ成長できる。長期離脱していたU-17日本高校選抜DF上原悠都(2年)も間もなく復帰予定。プレーできない悔しさを堪えながらチームを支えてくれる石川主将や、応援をしてくれる仲間たちに必ず選手権で恩返しする。

(取材・文 吉田太郎)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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