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[プレミアリーグEAST]「終わった」大怪我から、今は前向きに「伝えること」。CB石川穂高主将はピッチ外から昌平を引っ張り続ける

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昌平高のU-17日本高校選抜候補CB石川穂高主将(3年=FC LAVIDA出身)は来年4月の復帰へ向けてリハビリ中。チームメートたちと高校生活をやり切る

[9.30 高円宮杯プレミアリーグEAST第16節 昌平高 1-3 流通経済大柏高 昌平高G]

 1-3で2連敗となった試合後、昌平高(埼玉)の選手たちは円になってクールダウンをしていた。そこには、CB石川穂高主将(3年=FC LAVIDA出身)の姿も。7月31日の練習中に左膝を大怪我し、8月29日に手術、全治8か月の診断を受けている主将はチームメートに声をかけ、前を向かせようとしていた。

「上から見ていて、入りはそんなに悪いようには見えなかった。相手の流れで決めた訳ではなくてショートカウンターからオウンゴールもあったけれど、前半、自分たちの流れで決めていたらきっと勝てていたと思うし、自分たちの流れで失点してしまうと相手も勢い乗るし、というところが反省点かなと思います」

 石川は入学直後から先発を務め、U-16日本代表候補、U-17日本代表、そして、U-17日本高校選抜候補にも選出されている高校年代屈指のストッパーだ。クレバーで強度の高い守備。また、攻撃性能も高いDFは最終学年の今年、タレント軍団の主将を務めてきた。

 だが、インターハイ出場を逃し、プレミアリーグEASTも五分の戦いを続けているものの優勝争いから後退した。石川は夏に一度怪我で離脱し、復帰後に大怪我。「(膝の受傷時は)音も聞こえたので、気持ち悪い音が……。『終わったな』、みたいに思ったんですけれども。やった瞬間に覚悟はしました。あんまり結果も出ていなくて、夏にしっかり強化して後期のプレミア、選手権をみんなで戦うというところで、(自分は)ちょっとした怪我をやっていて、せっかくの夏の強化期間にちょっと休むというちょっとした焦りもあって、無理した訳ではないけれど復帰でやってしまった」。

 石川は高卒でのプロ入りを目指していた選手。だが、自分のことよりも、仲間たちとサッカーができなくなることが悔しかった。「一番は6年やっていた仲間と急に終わりを告げられた感じで……」。昌平のAチームは系列組織であるFC LAVIDA出身の選手が大半を占める。最も大事なラスト半年。中学時代から一緒に戦ってきた仲間とプレーすることは叶わなくなった。

 中盤の要・MF土谷飛雅(3年)は「(石川の離脱は)デカいです。(守備面に加えて)CKで点が入っていない。(セットプレーの一つとして)ストレートのボールを穂高がファーで折り返していた。穂高がいるだけで全然違う」。それでもいる選手たちで戦わなければならない。代わりにキャプテンマークを巻くCB佐怒賀大門(3年)や土谷、MF長準喜(3年)といった下級生時からの経験者たちが戦い、この日は2年生CB坂本航大が好守。石川もピッチで戦う仲間の活躍を期待していた。

「バック陣が凄く頑張ってくれているし、今は頑張って欲しいという気持ちです」

 手術から1か月。外からチームを見ることには“慣れた”。「たまに来るんですよね、波が」。どうしても、試合に出たいという思いや悔しさを押し殺せない時もある。それでも、自分のことを考えすぎず、残りのシーズンはピッチ外からチームを引っ張る考えだ。仲間も石川の分も、と奮起してくれている。

「手術の後のFC東京戦、FW工藤聖太郎(3年)とか『オレのために決める』とか言ってくれて、(試合も6-0で勝ち)自分の怪我が少しでも力にしてくれるならば嬉しいです。自分は外からしか分からないことを伝えることかなと思います、それしかできない。(今年の代は力があり、)結果出なかったらもったいないので、世間にまだ知られない実力とか結果を出せていないので、まだ全国1位を取れる舞台もあるし、ここからポジティブに良い方向にいけばいい」と前を向いた。

 石川は関東の強豪大学へ進学予定。大学側は石川に対して親身に復帰へ向けた練習メニューを提案してくれているのだという。「(プロを目指し、)大学でベースとか作っていけたらというのがある。良くしてくれた大学に恩返しというか、最初から試合に係わって、貢献したいです」。その前に昌平での残り数か月をやり切ること。最後まで一緒に戦い、国立で仲間たちと日本一を喜ぶ。

(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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