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リーダーシップとサッカーIQを兼ね備えた昌平の門番。DF佐怒賀大門が突き進む絶対的闘将への道

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昌平高のキャプテンマークを託された闘将、DF佐怒賀大門(3年=FC LAVIDA出身)

[9.16 高円宮杯プレミアリーグEAST第14節 昌平高 6-0 FC東京U-18 昌平高校グラウンド]

 危ないと思ったシーンには、だいたいこの男が現れて、きっちりピンチを回避していく。チームメイトも指揮官も一目置くようなサッカーIQは、このテクニック集団の中でも絶対に欠かせない。

「自分はディフェンダーとしては小さくて、しっかり頭を使ってプレーしないと守れないので、そういうところを小さい頃から常に意識してきていることが、自分の強みになっていると思います」。

 タレントが居並ぶ昌平高(埼玉)のセンターバックを託された仕事人。DF佐怒賀大門(3年=FC LAVIDA出身)が持ち合わせる唯一無二の存在感、圧倒的。

 横浜F・マリノスユース戦、柏レイソルU-18戦と連続ドローで迎えた、後半戦3試合目の相手はFC東京U-18。年代別代表の選手も顔を揃える強力アタッカー陣に対し、昌平の守備陣は立ち上がりから高い集中力を携え、未然にチャンスの芽を摘んでいく。

「今日はサイドバックの瞭生も大翔も1対1も負けないで、優海と僕もチャレンジアンドカバーを意識してやれていましたし、そこまでシュートまでも行かせずにできたので、そこは良かったですね」と話す佐怒賀とDF田尻優海(3年)とのセンターバックに加え、右のDF田中瞭生(3年)、左のMF西嶋大翔(3年)と両サイドバックも含めた4バックは総じて安定。良い守備から良い攻撃という好循環が、チームに次々と得点をもたらす。

 5点をリードしていた後半28分には、印象的なシーンがあった。相手の強烈なミドルをGK佐々木智太郎(2年)がファインセーブで凌ぐも、ボールは相手フォワードの目の前へ。しかし、そのこぼれ球へ佐怒賀は誰よりも早く反応すると、きっちりクリアで掻き出して、鮮やかにピンチを救ってしまう。

「以前の試合では、ああいう時間に失点することが多かったので、あそこは本当に全員で集中しようという話もしていましたし、普段のシュート練習の中でもああいうクリアもやってきたので、そこはチームとして練習の成果が出たと思います」。かなりのファインプレーを、事もなげにさらりと振り返るあたりも頼もしい。



 また、後半戦からはその左腕にキャプテンマークが巻かれている。「主軸だった穂高がケガをしてしまっている中で、穂高のためにも勝利しないといけないので、そこは自分も責任感を感じています」。本来のキャプテンを務めるDF石川穂高(3年)の負傷離脱を受け、副キャプテンとしてチームをまとめる役割も託されているが、必要以上の気負いもこの男には見られない。

「小学校からもキャプテンはやってきていますし、いろいろなことが円滑に進むように周りと上手く話して、練習からもコミュニケーションを多く取ることで、試合も練習のような雰囲気でやれればいいなと思っているので、そんなにプレッシャーは感じていないです」。

 この日の試合は、終わってみれば6-0で快勝。「気持ちのいい勝ち方でしたね。入りも良くて、監督からも1点だけじゃなくて、2点3点獲っていこうと言われていたので、圧勝したいと思っていた中で、無失点で抑えて6-0で快勝できたので、チームの雰囲気も良いと思います」と話した佐怒賀を中心に、試合後には選手たちに笑顔の輪が広がった。

 藤島崇之監督も佐怒賀に対する大きな信頼を隠さない。「今日のマン・オブ・ザ・マッチはアイツです。チームの柱ですね。サッカーIQが高くて、ちゃんと潰す、ちゃんと対応するという部分は、経験値だけではなくてゲームの中で修正できるので、それがまた1ランク2ランク上がってきたかなと。日々の取り組みの意識レベルが違いますからね。アイツがやられたらしょうがないです」。

 思い出すのは昨年度のインターハイ準決勝の帝京高戦。キャプテンの津久井佳祐(現・鹿島アントラーズ)が負傷欠場し、空いたセンターバックのポジションには2年生だった佐怒賀が抜擢されたのだが、試合前に指揮官は「アイツはサッカーIQが高いので、何も心配していません」と言い切っていた。試合には0-1で敗れたものの、確かに“急造センターバック”はまったく破綻なし。当時から今シーズンの活躍を予感させるようなパフォーマンスを披露していたことも印象深い。

 メンバー表の身長には“172センチ”という記載があり、センターバックとしても決して大柄ではないものの、それを理解した上で抱えているという守備者のメンタルが振るっている。

「試合中は自分が小さいとは思っていなくて、何なら180センチぐらいの感覚でやっているので(笑)、自分の身長をネガティブには思っていないですね。空中戦も自信はなくはないですし、相手も自分を見て勝てると思っているはずなので、そこに勝てたら嬉しいです」。

 好きなタイプの選手は気持ちが前面に出るタイプ。「試合前にはデ・リフトの映像を見ていますね。あとはカンナバーロです。自分の世代ではないですけど『いいなあ』と思います。やっぱり熱さがいいですよね。『絶対に負けない』という感じと、『自分はやられないぞ』というような、闘将みたいな感じの雰囲気が好きなんです」。

 ここから先は負けられない試合が続く。残された昌平での時間に向けて、佐怒賀は改めて決意を口にする。「前期やインターハイも含めて、ちょっと自分たちも下を向いてしまうような時期もあったんですけど、この夏休みで力を付けてきましたし、後期は監督からも『絶対に毎試合勝ち点を獲るぞ』ということは言われているので、選手権も含めてこれからも負けなしで、ずっと勝っていければなと思っています」。

「大きい門のように堂々として、誰でも受け入れられるような優しい子になってほしい」という願いを込めて付けられた名前を持つ、昌平が誇る強固なゴールの門番。佐怒賀大門が高いレベルで持ち合わせているサッカーIQとリーダーシップは、これからもチームを逞しく束ねていくはずだ。



(取材・文 土屋雅史) 
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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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