beacon

攻撃力に加え、雨中のバトルで示した逞しさ。「48番目の代表校」神村学園は昨年度を「超える」

このエントリーをはてなブックマークに追加

神村学園高が鹿児島県予選初の7連覇を達成

[12.16 選手権鹿児島県予選決勝 神村学園高 1-0 鹿児島城西高 白波スタ]

 48番目の代表校は神村学園に決定――。16日、第102回全国高校サッカー選手権鹿児島県予選決勝が鹿児島市の白波スタジアムで開催され、7連覇を狙う神村学園高と7年ぶりの優勝を目指す鹿児島城西高が激突。神村学園が仙台内定FW西丸道人主将(3年)の決勝点によって1-0で勝ち、7年連続11回目の全国大会出場を決めた。全国大会は12月28日に開幕。神村学園は同31日の2回戦で松本国際高(長野)と戦う。

 今年、両校は4度目の対戦。県新人戦、九州新人戦決勝は鹿児島城西が勝ち、インターハイ予選決勝は神村学園が雪辱していた。この日、鹿児島城西は全校応援に加え、系列校ですでに選手権出場を決めている日章学園高のサッカー部員たちも一緒になって友情応援。神村学園もサッカー部員や同級生の後押しを受けて雨中の激闘を演じた。

 前半4分、神村学園が先にビッグチャンスを作る。FW日高元(1年)のスルーパスでMF大成健人(2年)が抜け出し、ペナルティーアークでキープ。右中間でサポートした日高がPAへ持ち込んで右足を振り抜く。だが、シュートはニアポストを叩き、こぼれ球を狙ったU-17日本代表MF名和田我空(2年)のシュートも枠左へ外れた。

 神村学園は後方から正確にパスを繋いで前進。右の大成や左のU-17日本代表左SB吉永夢希(3年)がクロスへ持ち込む。対する鹿児島城西はロングボールを軸に押し返し、セットプレーでゴール前のシーンを創出。10分には、こぼれ球を右SB水口政輝(3年)が思い切り良く右足で狙った。

 鹿児島城西は相手の注目MF名和田相手にSB水口が健闘。また、声でDFラインを盛り上げるCB内田輝空(3年)ら各選手が集中した守りを続けて簡単には決定機を作らせない。それでも、神村学園は吉永の左足が違いを生み出す。30分に左クロスを大成の右足シュートに結びつけると、33分にはCB間の西丸へ斜めの絶妙なパス。西丸が巧みなコントロールから左足を振り抜いたが、これも左ポストを叩いてしまう。

 対する鹿児島城西もCB横山輝人(3年)のプレースキックでチャンスも。だが、神村学園はCB難波大和(3年)が「昨日の分析から、相手の特長だったり、やりたいことっていうのは分かっていたので、それの対応をしっかり徹底して、 (鈴木)悠仁と(有馬)康汰と、(吉永)夢希とGK(川路)陽も5人で守れたことは良かったです」と振り返ったように、CB鈴木悠仁(2年)、右SB有馬康汰(3年)、吉永との4バックでチャレンジアンドカバーを徹底しながらGK川路陽(3年)とともに守っていく。

 ライバル対決は0-0で前半を終了。だが、後半開始直後の4分に神村学園がスコアを動かした。神村学園はU-16日本代表MF福島和毅(1年)が左サイドへ展開。吉永がDFを剥がしてPAへパスを通す。これを動きながらコントロールした名和田がマークを外してクロスを上げる。MF新垣陽盛(2年)のコースを突いたヘディングシュートは、鹿児島城西GK橋口竜翔(3年)が横っ飛びでストップ。だが、こぼれ球を狙っていた西丸がゴールエリアからの豪快な左足シュートでゴールへ叩き込んだ。

 この日、神村学園はMF大迫塁(現C大阪→24年いわき)やFW福田師王(現ボルシアMG)ら昨年の優勝メンバーもスタンドで応援。その前で均衡を破った主将は昨年、福田が背負っていた「13」をアピールして喜んでいた。

 神村学園は有村圭一郎監督が「(鹿児島城西の)CBのところには2トップが行くことでスタートしたので、蹴られる位置をもう深い位置から蹴られるようにして、ゴール前まであんまり近づけないようにやったら、上手くいきましたね」と振り返ったように、西丸、日高の2トップが相手CBにプレッシングを掛け続けたことで、鹿児島城西の特長を削ることに成功していた。

 また、指揮官が高評価していたのがダブルボランチのプレーだ。1年生の10番MF福島が悪コンディションで躊躇しそうなパスも縦、サイドへ次々と通して見せる。また、新垣が守備面でも高さを発揮。加えて、この2人のセカンドボール回収力の高さは勝因に挙げられていた。

 後半、風上に立った鹿児島城西は押し込む時間帯を増やしていた。ハイサイドを取ってMF坂上日向(3年)がロングスロー。また敵陣でFK、CKを獲得し、相手に圧力をかける。だが、この日の神村学園はバトルでの逞しさが印象的だった。競り合いで強度を特長とする鹿児島城西に劣らず、ピンチを未然に防いでいた。

 鹿児島城西はMF山下慶人(3年)がドリブルシュートを打ち込んだほか、セットプレーのクリアボールを狙ってシュート。27分には藤枝内定MF芹生海翔(3年)の右クロスのこぼれにMF石内凌雅(3年)が頭から突っ込んでボールを残す。そして、これを拾ったFW岡留零樹(3年)が右足で狙うも枠右。また、31分には、芹生の敵陣左サイドでの奪い返しから、岡留がスルーパスを通す。そして、芹生がダイレクトで右足シュート。だが、ファーを狙った一撃は右外へ外れた。

 鹿児島城西は直後に長期離脱から復帰したFW福岡想太朗主将(3年)を投入。選手たちの気持ちを奮い立たせる。だが、相手の攻撃を確実に跳ね返す神村学園は35分、中央の名和田がスルーパス。鹿児島城西の連係がわずかに乱れ、ペナルティーアークの溢れ球を狙った神村学園MF佐々木悠太(1年)と処理しようとした鹿児島城西GK橋口が交錯する。そして、橋口にレッドカードが提示された。

 鹿児島城西は10人での戦いとなったが、直後の名和田の右足FKをDFがブロック。諦めずに攻め返す。だが、神村学園の守りは最後まで揺るがず、1-0で試合終了。王者は鹿児島県予選で初となる7連覇を達成した。

 神村学園は昨年度の選手権で16年ぶりの準決勝進出。国立競技場のピッチに立った。だが、3-3からのPK戦の末、岡山学芸館高に敗れて3位。「国立に戻る」を強調してきた西丸は「やっぱりここで今日も勝たないと、ほんとにそれは見えてこなかったんで、まずは勝って、そこに戻るために、また明日からチームとしてやっていきたいなと思います」と力を込めた。

 今年、チームは初参戦のプレミアリーグで鍛えられ、守備の部分も成長。ライバル・鹿児島城西を超える力にした。加えて、「神村のサッカーっていうものは、やっぱり人を楽しませるような、そういうサッカー」(有村監督)というチームの多彩な攻撃は選手権出場校屈指。今年も有力校として選手権に臨む。予選前に父母たちから送られた鶴文字に記された文字は「超」。全国大会までの準備期間はどのチームよりも短いが、昨年度の全国3位を超えて新たな歴史を刻む。 

(取材・文 吉田太郎)



●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

TOP