beacon

長所を発揮して同点アシストも日本一には届かず…市立船橋主将MF太田隼剛「自分に足りないものが見つかった」

このエントリーをはてなブックマークに追加

市立船橋高を牽引した太田隼剛主将(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.6 選手権準決勝 市立船橋高 1-1(PK2-4) 青森山田高 国立]

 90分を通して出色の出来だった。市立船橋高(千葉)の波多秀吾監督が試合後に「今日のプレーも彼中心」と評したように、ビルドアップからラストパスまでピッチ狭しとボールに絡んでいたのが、青いユニフォームの背番号7だった。

「前半は縦パスが少ない」と波多監督が見ていた前半、ハーフタイムには「ディフェンスラインと中盤のラインの間で受けることができたらチャンスになるぞ」と指示を出すと、「縦に対する意識をすごく持って後半に入ったんじゃないか」と反撃に転じる。

「可変の3バックにしたら相手もこないというのは話であったんですけど、誰が落ちるというのは特に決めていなかった」というなかで、役割を担ったのは、ボランチのMF太田隼剛(3年)だ。後半に入ってからはビルドアップの場面で3バックの左にポジションを下げると、素早く縦パスをつけていく。後半8分には、一気に最前線のFW郡司璃来(3年)につけると、郡司はターンしてシュートに持ち込む。「相手を見ながら、相手の弱みを突いていくっていうのは自分が得意としている部分」。太田の左足が市立船橋にリズムをもたらしていく。

 0-1で推移していた後半34分には、右サイドのスペースに飛び出してDF佐藤凛音(3年)のパスを引き出す。「自分が抜け出したときについてこないし、FWのマークについてCBがつられるので、スペースが空くのはわかっていたので、狙いとしていたところ」。ペナルティエリアでボールに追いついた太田は、青森山田DFを3人引きつけるとダイレクトで中央へ。これをFW久保原心優(2年)が右足で決めて、市立船橋が1-1の同点に追いついた。

 90分の死闘の末も決着はつかず、大会の規定によって延長戦はなく勝者はPK戦に委ねられた。両チームの1番手は主将が務める中、後攻となった太田のシュートはGK鈴木将永(3年)に止められてしまう。「相手のキーパーに飲まれた」。PKについては悔いが残った。

 試合後の会見で、指揮官の口から出たのは、主将に対する感謝と賛辞だった。

「攻撃の組み立てもそうですし、チーム全体をコントロールする、ゲームコントロールするといったところも彼の良さですし、これまでメンバーだけじゃなくてBチームも含めて、リーダーシップをとって引っ張っていってくれて本当に感謝しかないです。昨年からゲームキャプテンをやって、いろいろ思い悩んだり、うまくいかなくてイライラしたこともあったんですけど、特に僕は何も教えたりせず、彼自身で切り開いていった、彼自身が身につけて成長していったのがチームをまとめた大きな要因」

 太田主将のもと、12年ぶりの優勝を目指した市立船橋の選手権は、ベスト4で幕を閉じた。市立船橋の最後の日本一を幼稚園生のときに見ていた太田は、その再現をかなえることはできなかったが、「この敗戦をきっかけにどんどん上り詰められるように」と、下を向いているヒマはない。「1日1日を大切にしないといけないですし、この大会で自分に足りないものがたくさん見つかった」と、「守備の強度やフィジカル面」などに課題を見出した太田は、大学でのレベルアップを誓い、目標であるプロへと視線を定めた。

(取材・文 奥山典幸)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
奥山典幸
Text by 奥山典幸

TOP