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[MOM4613]市立船橋MF太田隼剛(3年)_一際光った左足と判断力。「オマエが市船を強く…」の言葉に背中を押されたリーダーが国立へ

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市立船橋高MF太田隼剛主将(3年=鹿島アントラーズつくばジュニアユース出身)が高精度の左足キックと判断力を発揮

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.4 選手権準々決勝 名古屋高 1-2 市立船橋高 柏の葉]

 初出場の名古屋高(愛知)は、市立船橋高(千葉)のエースFW郡司璃来(3年)をマンマークしたほか、守備ブロックを敷く形で構えてきていた。それに対し、名門の司令塔MF太田隼剛主将(3年=鹿島アントラーズつくばジュニアユース出身)は、「相手が引いて来るということで、自分が前行くよりも自分が少し後ろで配球役をやるということはチームの中で話があった」と説明する。

 ボランチの自分のところまで、パワーを掛けて奪いに来ない。そのことを逆手に取ったレフティーは、絶品の左足で好パスを連発。前半17分にPAへ絶妙なロングパスを通してチャンスを演出すると、21分には左サイドのSB内川遼(3年)への展開で先制点の起点となった。

「(中央が厚い分、)サイドが相手は手薄になるのは分かっていたので、サイドの局面でSH、SB、ボランチで優位性を作りながらという中で内川に良いパスを通すことができたので、そこは自分たちの狙いが出たかなと思います」。隣の選手へパスを繋ぐだけでなく、一つ、二つ遠くの選手を見て、配球することでスペースを作り出そうとしていた。

「自分の強みであるパスとかっていうのは出せたと思います」。また、相手選手が1人で寄せてきた際には巧みに逆を上手く取る形でキープし、中央から前進。そして、1点を追う相手が反撃に出てきていた試合終盤には、その背後のスペースを突く形で攻め上がり、追加点を目指していた。35分にはPAへスプリントして決定的な左足シュート。直後にもカウンターで自陣中央から一気にスプリントしてボールをPAまで運び、決定的なラストパスを通すシーンがあった。

 後半はやや攻撃が停滞する時間帯もあったが、体力的に苦しい時間帯にも相手の嫌なことを徹底。「相手が前掛かりになっていたので、そこは相手を見計らって一気に前に行こうと思っていたので、そこは自分の自信のある部分なので、得点に繋げられなかったのは少し残念ですけれども、相手を見た中での判断したプレーは良かったと思います」と胸を張った。守備でも味方とのバランスを取りながらスペースを埋めるなど、常に判断の速い動き。役割を全うし、勝利に貢献した。

 市船の絶対的なリーダーは、波多秀吾監督への恩返しと国立での活躍を誓う。2年時から名門校のゲームキャプテンを務めた太田だが、当時はチームをまとめることができず、「波多さんに『正直もう、辞めたいです』とと伝えたんですけれども」という。だが、指揮官は「オマエがまとめて、市船を強くするんだ」と鼓舞。背中を押された太田は、2年時、3年時とリーダーとして市船を強くするための行動を取り続けてきた。
 
「ここまで自分に信頼してくれる監督はいないと思って。もう一回、自分が強い市船を取り戻すためにやらないといけない、とそこがきっかけになりました。波多さんを国立決勝まで連れて行って、胴上げしたいという強い思いがあります」

 その強い思いを持って戦うリーダーは、声で、プレーで12年ぶりの準決勝進出に貢献。波多監督はその太田について、「チームを引っ張ってリーダーシップを取って、ゲームをしっかりコントロールして、というところは変わらずやってくれていますし、とにかくチームをまとめるというところは大会の中で凄く成長している。中日のミーティングでも浮かれそうなところでしっかり締めて、彼が引っ張ってくれているので、人間的な成長も凄く感じますね」と成長を認めていた。

 次は国立競技場で青森山田高(青森)との戦いが待っている。「(個人としては)今日も結果を残せずに終わっている。国立でゴールを決めたいなというのが強い。『国立は自分のために用意された場』だと思って、しっかり国立で暴れたい」。強い市船を取り戻すため、恩師を胴上げするために太田が国立で大暴れする。

(取材・文 吉田太郎)


●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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