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自分を見つめ直し、“目覚めた”逸材。阪南大FW山口が来季自身、チームの目標に挑戦

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[12.15 全日本大学選手権準決勝 筑波大3-0阪南大 NACK]

 逸材が「目覚めた」1年だった。阪南大の全日本大学選抜FW山口一真(3年=山梨学院高)はこの日、中盤で前を向けば、一瞬でDFを置き去りにするような力強いドリブルで前進。また、サイドへ流れてからのクロスやセットプレーで味方のゴールを演出しようとした。2点を追う後半40分にはコンビネーションから中央へ持ち込んで、クロスバー直撃の右足シュート。中央、サイドからゴールを狙い続けた10番は対戦相手にとって“危険な存在”であり続けたが、勝利に貢献することはできなかった。

 1年前、スタンドから見た決勝には手が届かず。「去年は遅刻で試合出れなくて、この1年、そういうところを見つめ直してやってきたと思うんで、そういう(改善してきた)ところが最後試合に出れば良かったんですけど、決めきれないところはまだまだ自分のツメが甘いんだなと感じました」と悔しがった。

 それでも今年は、彼にとって、今後へ向けて大きな1年だったことは間違いない。1年時から注目されていたアタッカーが関西学生リーグ1部で優秀選手賞を獲得し、アシスト王にも輝いた。15試合に出場して14アシストと才能を結果で証明した一年。それは悔しさから決意したFWが「変わった」ことを示すものだった。

 昨年、2年生ながら関西を代表する強豪の10番を背負った山口。だが、インカレ直前の12月上旬に寝坊し、チームの方針によってインカレは帯同こそしたものの、最後までピッチに立つことができなかった。関西学院大に0-4で完敗した決勝もスタンドから観戦。「決勝まで行ってスタンドからだったんで来年絶対にやってやろう」という決意から、この1年は自身を見つめ直して日々に取り組んできた。

「抜けちゃっていた」私生活の部分から改善。誘惑を退け、サッカーを優先する生活に変えた。“やんちゃ”な雰囲気もいい意味で変化すると、徐々について来た結果。怪我の影響で前期は満足にプレーすることができなかったが、後期については主軸として欠かさずに出場を続けてインカレでチームのベスト4に貢献した。1年間を総括した彼の口から出てきたのは「やり切った」という言葉。自分が、自分がという利己的なプレーで得点することに満足を感じていた昨年までから、チームを勝たせることに喜びを見出した今年は、プレーヤーとしても成長を遂げた1年となった。

「楽しいですね。今年は楽しさが変わったというか。昔は自分が点取ったりすることが楽しかったんですけど、勝つことの楽しさというか、今年1年その味をしめたというか、そういう感じでしたね」。逆転勝ちした準々決勝の試合後は先輩である4年生たちの頑張りに涙し、この日の敗戦後は現状の自分を正確に分析して次の成長へ向けてやるべきことを掲げていた。

 大学サッカー界屈指のアタッカーの目標はプロ。だが、「自分のサッカー人生もあと1年で終わるかもしれない」という覚悟がある。上のステージに立てるように、継続してサッカーに集中し、努力するだけ。「身体の強さだったり、点の取り方をもっと覚えたいですね。ドリブルでシュートっていう点の取り方とかだけじゃなくて、頭で取ったり、スペースへ流れていって1対1で決めたり、FWらしい動きを覚えていけばプレーの幅が広がっていくと思うので、やっていきたいです」。自身が楽しみながら、チームとともに成長すれば、その先には阪南大にとって初のインカレ日本一がある。

「阪南は3年連続ベスト4。(今年は)決勝まで行く力がまだ足りないと思っていた。来年はそこに勝ち進めるように、もう一歩成長していきたい」。「目覚めた」FWはより対戦相手にとって“手に負えない選手”へ。そして自身、チームの目標を達成する。

(取材・文 吉田太郎)
●第65回全日本大学選手権(インカレ)特集

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