互いをリスペクトした激戦…“普段着”身にまとった明治大、筑波大下し3冠へあと2つ
[12.16 インカレ準々決勝 明治大1-0筑波大 味フィ西]
第68回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)は16日、準々決勝を各地で行い、味の素フィールド西が丘では明治大(関東1)と筑波大(関東6)が対戦。前半をスコアレスで折り返した試合は、後半39分にMF中村帆高(4年=日大藤沢高/FC東京内定)が決勝点を記録した明治大が1-0の完封勝利を収めた。準決勝へと駒を進めた明治大は、19日に関西学院大(関西2)と対戦する。
明治大の並びがいつもとは違う。3-2-3-2という“普段着”ではなく、この日は4-4-2でスタート。栗田大輔監督は、筑波大の左サイドに入るであろうU-22日本代表MF三笘薫(4年=川崎F U-18/川崎F内定)を「常本(佳吾)と帆高でケア」しようと、初戦は最終ライン中央に入ったDF常本佳吾(3年=横浜FMユース)を右サイドハーフに起用した。しかし、筑波大のスターティングメンバ―に三笘の名前はなかった。「逆の立場ならスーパーサブで三笘が出てくるのはすごく嫌だと思う」(小井土正亮監督)と、三笘を“切り札”としてベンチに温存。試合前から両チームがお互いをリスペクトし、ともに“普段着”を身にまとわずにスタートした試合。序盤から圧倒的に主導権を握ったのは関東リーグ、総理大臣杯を制し、インカレで3冠を狙う明治大だった。
ボランチに入るMF安部柊斗(4年=FC東京U-18/FC東京内定)とMF瀬古樹(4年=三菱養和SCユース/横浜FC内定)が積極的にボールに絡んでリズムを作り、MF森下龍矢(4年=磐田U-18/鳥栖内定)がスピードに乗った突破で左サイドを切り裂く。さらに前線から激しくプレッシャーをかけ、高い位置でのボール奪取を幾度となく成功させるなど、ワンサイドゲームに。しかし、ゴールは生まれない。DF山川哲史(4年=神戸U-18/神戸内定)、DF角田涼太朗(2年=前橋育英高)、DF森侑里(1年=大宮ユース)の3バックを中心とした筑波大守備陣が体を張り、明治大の攻撃をはね返し続けた。
その中でも明治大はチャンスを作る。前半32分には右サイドの常本からボールを受けたFW佐藤凌我(3年=東福岡高)が鋭いターンからフィニッシュに持ち込むが、山川の体を投げ出したブロックに遭ってネットを揺らすには至らず。同40分には常本、森下とつないだボールからDF蓮川壮大(3年=FC東京U-18)が狙うも、枠を捉え切れなかった。一方的な展開となった前半。筑波大のシュートはゼロに終わったが、小井土監督が「それでもいいんだというつもりでゲームプランを組んだ」と語ったように明治の攻撃に耐え、わずかな隙を突いてゴールを奪おうとしていた。
攻撃の手段は、最前線に入ったFW和田育(1年=阪南大高)を目掛けてロングボールを蹴り込むカウンター。和田はとにかく走った。タッチラインを割るかというボールにも全力で走り込み、何とかマイボールにして攻撃につなげようと奮闘。そして、その和田の頑張りが実を結ぶ。後半9分、MF知久航介(3年=國學院久我山高)が前線に放り込んだボールをMF加藤匠人(2年=柏U-18)が落とすと、そこに走り込んだのが和田。PA内で仕掛けた鋭い突破はDF川上優樹(4年=矢板中央高)のファウルを誘い、劣勢だった筑波大がPKを獲得した。千載一遇のチャンスとなったが、キッカーを務めたMF高嶺朋樹(4年=札幌U-18/札幌内定)のシュートはGK加藤大智(4年=名古屋U18/愛媛内定)に弾き出されてしまった。
この直後、明治大の栗田監督が動く。前半11分、川上に代えてMF中村健人(4年=東福岡高)を投入。中村健人をトップ下に置き、「ここが勝負所」と“普段着”の3-2-3-2にシステムを変更した。すると、筑波大ベンチも動く。「少し間延びしてきた」とスペースが生まれ始めた同17分、“切り札”となる三笘をピッチへと送り込んだ。
試合の流れをがっちりとつかんだのは明治大だった。後半15分に佐藤凌我、同17分に瀬古、同20分に中村帆高、同21分にFW狩土名禅(3年=桐生一高)がフィニッシュまで持ち込み、ゴールを脅かす。筑波大も同24分に三笘が独力でハーフウェーライン付近からPA内までボールを運ぶなど、何とかゴールに迫ろうとするが、同39分、ついに明治大がスコアを動かす。左サイドでボールを受けた中村健人が鋭いクロスを送ると、ボールはファーサイドの中村帆高へ。GK阿部航斗(4年=新潟U-18)の動きを見極めたループ気味のヘディングシュートは鮮やかにネットを揺らし、決勝点となるゴールが生まれた。
“普段着”を身にまとわせて勝負を決めた栗田監督は、「筑波大学さんとウチのプライドがぶつかり合った、大学サッカーを象徴するような、素晴らしいゲームだった」とお互いをリスペクトした熱戦を振り返る。「一歩間違えれば我々が負けていたかもしれないが、今日はウチに勝利が転がってきた」。厳しい戦いとなったが、1-0の完封勝利を収めたチームは、3冠への階段をまた一段上った。
(取材・文 折戸岳彦)
●第68回全日本大学選手権(インカレ)特集
第68回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)は16日、準々決勝を各地で行い、味の素フィールド西が丘では明治大(関東1)と筑波大(関東6)が対戦。前半をスコアレスで折り返した試合は、後半39分にMF中村帆高(4年=日大藤沢高/FC東京内定)が決勝点を記録した明治大が1-0の完封勝利を収めた。準決勝へと駒を進めた明治大は、19日に関西学院大(関西2)と対戦する。
明治大の並びがいつもとは違う。3-2-3-2という“普段着”ではなく、この日は4-4-2でスタート。栗田大輔監督は、筑波大の左サイドに入るであろうU-22日本代表MF三笘薫(4年=川崎F U-18/川崎F内定)を「常本(佳吾)と帆高でケア」しようと、初戦は最終ライン中央に入ったDF常本佳吾(3年=横浜FMユース)を右サイドハーフに起用した。しかし、筑波大のスターティングメンバ―に三笘の名前はなかった。「逆の立場ならスーパーサブで三笘が出てくるのはすごく嫌だと思う」(小井土正亮監督)と、三笘を“切り札”としてベンチに温存。試合前から両チームがお互いをリスペクトし、ともに“普段着”を身にまとわずにスタートした試合。序盤から圧倒的に主導権を握ったのは関東リーグ、総理大臣杯を制し、インカレで3冠を狙う明治大だった。
ボランチに入るMF安部柊斗(4年=FC東京U-18/FC東京内定)とMF瀬古樹(4年=三菱養和SCユース/横浜FC内定)が積極的にボールに絡んでリズムを作り、MF森下龍矢(4年=磐田U-18/鳥栖内定)がスピードに乗った突破で左サイドを切り裂く。さらに前線から激しくプレッシャーをかけ、高い位置でのボール奪取を幾度となく成功させるなど、ワンサイドゲームに。しかし、ゴールは生まれない。DF山川哲史(4年=神戸U-18/神戸内定)、DF角田涼太朗(2年=前橋育英高)、DF森侑里(1年=大宮ユース)の3バックを中心とした筑波大守備陣が体を張り、明治大の攻撃をはね返し続けた。
その中でも明治大はチャンスを作る。前半32分には右サイドの常本からボールを受けたFW佐藤凌我(3年=東福岡高)が鋭いターンからフィニッシュに持ち込むが、山川の体を投げ出したブロックに遭ってネットを揺らすには至らず。同40分には常本、森下とつないだボールからDF蓮川壮大(3年=FC東京U-18)が狙うも、枠を捉え切れなかった。一方的な展開となった前半。筑波大のシュートはゼロに終わったが、小井土監督が「それでもいいんだというつもりでゲームプランを組んだ」と語ったように明治の攻撃に耐え、わずかな隙を突いてゴールを奪おうとしていた。
攻撃の手段は、最前線に入ったFW和田育(1年=阪南大高)を目掛けてロングボールを蹴り込むカウンター。和田はとにかく走った。タッチラインを割るかというボールにも全力で走り込み、何とかマイボールにして攻撃につなげようと奮闘。そして、その和田の頑張りが実を結ぶ。後半9分、MF知久航介(3年=國學院久我山高)が前線に放り込んだボールをMF加藤匠人(2年=柏U-18)が落とすと、そこに走り込んだのが和田。PA内で仕掛けた鋭い突破はDF川上優樹(4年=矢板中央高)のファウルを誘い、劣勢だった筑波大がPKを獲得した。千載一遇のチャンスとなったが、キッカーを務めたMF高嶺朋樹(4年=札幌U-18/札幌内定)のシュートはGK加藤大智(4年=名古屋U18/愛媛内定)に弾き出されてしまった。
この直後、明治大の栗田監督が動く。前半11分、川上に代えてMF中村健人(4年=東福岡高)を投入。中村健人をトップ下に置き、「ここが勝負所」と“普段着”の3-2-3-2にシステムを変更した。すると、筑波大ベンチも動く。「少し間延びしてきた」とスペースが生まれ始めた同17分、“切り札”となる三笘をピッチへと送り込んだ。
試合の流れをがっちりとつかんだのは明治大だった。後半15分に佐藤凌我、同17分に瀬古、同20分に中村帆高、同21分にFW狩土名禅(3年=桐生一高)がフィニッシュまで持ち込み、ゴールを脅かす。筑波大も同24分に三笘が独力でハーフウェーライン付近からPA内までボールを運ぶなど、何とかゴールに迫ろうとするが、同39分、ついに明治大がスコアを動かす。左サイドでボールを受けた中村健人が鋭いクロスを送ると、ボールはファーサイドの中村帆高へ。GK阿部航斗(4年=新潟U-18)の動きを見極めたループ気味のヘディングシュートは鮮やかにネットを揺らし、決勝点となるゴールが生まれた。
“普段着”を身にまとわせて勝負を決めた栗田監督は、「筑波大学さんとウチのプライドがぶつかり合った、大学サッカーを象徴するような、素晴らしいゲームだった」とお互いをリスペクトした熱戦を振り返る。「一歩間違えれば我々が負けていたかもしれないが、今日はウチに勝利が転がってきた」。厳しい戦いとなったが、1-0の完封勝利を収めたチームは、3冠への階段をまた一段上った。
(取材・文 折戸岳彦)
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