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流通経済大、札幌大の堅守に苦戦も被シュート0でインカレ初戦突破! 近年の傾向に勝機?「甲府さんが天皇杯で優勝したり…」

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MF八木滉史(4年=流通経済大柏高)がFKで先制ゴール

[12.7 インカレ1回戦 流通経済大 2-0 札幌大 第一カッターフィールド]

 第72回全日本大学サッカー選手権(インカレ)は7日、首都圏各地で開幕し、千葉県の第一カッターフィールドでの第2試合は流通経済大(関東5)が札幌大(北海道1)を2-0で下した。セットプレー絡みで2ゴールを奪い、守れば被シュート0で初戦突破。10日の2回戦では、ニッパツ三ツ沢球技場で昨季準優勝の新潟医療福祉大(北信越)と対戦する。

 前半は5-3-2でコンパクトな守備ブロックを敷いてきた札幌大に対し、なかなか目立ったチャンスを作れなかった流経大。21分、DF田村陸(3年=流通経済大柏高)からのロングフィードに抜け出したMF中島舜(3年=柏U-18)がネットに流し込むも、これがオフサイドで取り消されると、その後は決定機に至らないまま0-0でハーフタイムを迎えた。

 それでもトーナメント巧者の流経大に焦りはなかった。

「初戦はやっぱり重たい雰囲気があるし、相手がスペースを与えないで戦ってきたので、0-0で折り返しても慌てずにと(ハーフタイムに伝えた)。選手に悪いイメージを与えるわけにはいかないけど、えてしてこういう試合では後半にセットプレーで先制点を与えたりして自滅してしまうのがトーナメントの戦い。後半も0-0だったとしてもストレスを溜めず、延長があってももう30分間やれるわけだから、あと75分やるつもりでシュートが入らなくてもストレスを溜めないでという話だけした」(中野雄二監督)

 すると後半14分、流経大はFW松永颯汰(2年=静岡学園高)がカットインで仕掛け、ゴール正面でFKを獲得。札幌大は幅広い壁を組み、GKがニア寄りのコースを埋めてきたが、キッカーのMF八木滉史(4年=流通経済大柏高)が空いたコースに鋭く落ちるシュートを突き刺した。「自分が蹴った後は壁でボールが見えなかったけど、感触的には悪くないと思った」(八木)。高校時代から“流経一筋”の主将が値千金の先制ゴールを奪った。

 さらに勢いを保った流経大は後半20分、左サイドからのスローインを田村が中に入れると、これを受けた中島が松永とのワンツーから右足一閃。低弾道のシュートをゴール右隅に叩き込み、瞬く間に追加点を奪った。決して多くのチャンスが巡ってきたわけではなかったが、相手のスキを見逃さない勝負強さが光った2ゴールだった。

 一方の札幌大は前線のFW小笠原大将(4年=札幌U-18)とFW向井ひな太(4年=JFAアカデミー福島/沼津内定)が身体を張り、インサイドハーフのMF河合駿樹(3年=旭川実高)とMF井波勇太(3年=北海高)が献身的な姿勢を見せていたことに加え、DF原田拓真(4年=秋田U-18)ら最終ラインも奮闘したが、重くのしかかる2失点。その後は交代選手を入れながら反撃を狙ったが、シュートを1本も打てないまま無念の敗退となった。

 試合後、流経大の中野監督は「トーナメントの大会なので当然、理想的なことができて勝ち上がっていくのが一番いいけど、理想的なことができない、自分たちのペースにならない、逆に先制されてしまう、そういう状況でも勝ち上がるためにどうするかがトーナメント。別に僕はいつも延長でもいい、PK合戦でもいいんだよと言っている。サッカーは実力差がスコアに表れにくい競技だから、別にPK合戦でもなんでも勝ち進めることが大切というのがインカレ。だから2-0というのは初戦にしてはクリアできたのかなと思います」と手応えを口にした。

 さらには「逆に言うと僕らは1番、2番に期待されているチームじゃないから気楽ですよね。優勝候補の筆頭というわけではない。でもこういう時のほうが勝ち上がるかもしれないですよね」とニヤリ。「去年はヴァンフォーレ甲府さんが天皇杯で優勝したり、明秀日立がインターハイで優勝したり、今日負けてしまったけど富士大が総理大臣杯で優勝したり、ジュニアユース(昨年の高円宮杯)ではFC多摩が優勝したり、共通しているのは本命じゃないところが勝っていること」と勝機を見つめつつ、その理由を次のように分析した。

「指導者ライセンスがちゃんと全国に行き届いて、戦力が整っていなくても戦い方を知っている指導者が増えたのもある。また全国で小さい頃から良い指導をする人が多いから、技術のしっかりした選手が日本中にいるんですよ。どのエリアにもきちんとした選手がいる。JFAがしっかりやってきた指導者ライセンス制度がいろんなところに表れているからトーナメントが混戦状態になるんだと思います」

 この日の札幌大もまさにそうした積み重ねを感じさせる好チームだったが、したたかに勝ち切った流経大。中野監督は「リーグ戦はある程度実力の差は出やすいけど、トーナメントはこの大会で勢いをつけたチームが勝っちゃう。強いチームが勝つんじゃなくて、勝ったチームが強いんですよ。そうやって割り切ってやっていったらいいかなとミーティングでいつも言っています」と勝負にこだわる姿勢を強調した。

(取材・文 竹内達也)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集

竹内達也
Text by 竹内達也

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