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「取り返せる自信はあった」仙台大が延長戦制してインカレ8強!! 26年ぶり中国王者・広島大の進撃をストップ

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DF和田昂士(4年=横浜FMユース)が決勝ゴール

[12.10 インカレ2回戦 広島大 1-3(延長) 仙台大 保土ヶ谷]

 第72回全日本大学サッカー選手権(インカレ)は10日、首都圏各地で2回戦を行い、神奈川県立保土ケ谷公園サッカー場の第1試合は仙台大(東北1)が広島大(中国)を延長戦の末に3-1で下した。13日の3回戦では、ブリオベッカ浦安競技場で明治大(関東3)と対戦する。

 1回戦シードの仙台大にとっては緊張の大会初戦。一方、26年ぶりとなる中国王者に輝いた広島大は1回戦で夏の総理大臣王者の富士大(東北2)を下し、2回戦にたどり着いた。

 まずは前半16分、先に試合を動かしたのは広島大だった。中盤で持ち上がったMF倉惟雲(3年=桃山学院高)が右足アウトサイドでスルーパスを送ると、これに中国大学リーグ得点王のFW酢谷元哉(4年=西尾高)が反応。背中でDF相馬丞(4年=山形ユース/山形内定)を制しながら、右足で冷静にゴールネットを揺らした。

 仙台大はその後、右ウイングバックのMF得能草生(4年=青森山田高/水戸内定)のドリブル突破を中心に攻撃を展開。広島大は倉とDF岡田心平(4年=広高)がダブルチームで対応し、勢いを落とすことに成功していたが、前半26分には得能のクロスからFW佐々木翔(4年=横浜FCユース)が惜しいボレーシュートを放った。

 そのままのスコアで迎えた後半は仙台大がハイプレスを強めたことで、ややオープンな展開に。広島大はGK井上大也(4年=瀬戸内高)の精度の高いロングキック、岡田とMF酒井大斗(3年=東福岡高)のオーバーラップ、FW瀬口廉太郎(1年=名東高)のポストプレーで攻撃に迫力を加えた。

 ところが後半4分、仙台大が相馬に代わってDF山内琳太郎(3年=京都橘高)を入れると、直後の6分にこの交代が奏功。山内のロングフィードが左サイドのDF石尾陸登(4年=JFAアカデミー/仙台内定)に通り、クロスを佐々木が胸で落とすと、MF與那覇航和(4年=浦和ユース/岐阜内定)が右足一閃。シュートは枠を外れたが、良い攻撃の形をつくった。

 そうして迎えた後半22分、仙台大が追いついた。左サイド起点の攻撃で細かいパスをつなぎ、右サイドに展開すると、得能のシュートはDFにブロックされたが、大きく浮き上がったボールがクロスバーに当たり、跳ね返りをMF玉城大志(4年=浦和ユース/群馬内定)がヘディングパス。これに反応した佐々木がワンタッチで押し込んだ。

 そのまま試合は延長戦へ。仙台大がセットプレーで押し切った。延長前半8分、MF本田真斗(2年=青森山田高)の右CKがファーサイドに送られると、玉城が空中戦を競り勝ち、ヘディングで折り返しのパス。これに反応した186cmの長身DF和田昂士(4年=横浜FMユース)が頭で狙い、GKが弾き切れなかったボールがゴールラインギリギリで入った。

 さらに延長前半アディショナルタイム1分、仙台大は再び本田の右CKがファーサイドに向かうと、今度は和田が競り勝ち、折り返しのヘディングパス。ニアサイドに飛び込んだMF根岸恵汰(3年=浦和ユース)が押し込み、リードを2点に広げたそのままタイムアップ。東北王者が苦しみながらもベスト8入りを果たした。

 攻撃の軸を担った玉城は試合後、前半の戦いぶりを「相手がブロックを敷いてくる中で後ろに人が多いなと思いながらやっていたけど、相手のブロックに入って壊したいと思っていた。前半なかなかそこに入っていけるシーンが少なかった」と振り返りつつも、「能力的には自分たちのほうが上だと思っていたし、オープンになれば質が出せるし、こっちが勝てるかなと思っていた」と自信を口にした。

 また逆転の2ゴールに絡んだ和田も「取り返せる自信はあったし、こっちはいい選手が揃っているので、正直チームでうまくいかなくても、個のところでやってくれる選手がいるので自信を持っていた。後ろはこれ以上、失点しないようにやるだけだった」と冷静に総括。そうした揺るがぬ姿勢が逆転突破を導いたようだ。

 3回戦の相手は明治大に決定。試合後の囲み取材時点では、明治大が関西学院大を3-0でリードした試合途中だったが、玉城は十分に勝機があるとみている。

「自分たちの代の能力には自信があるし、去年も明治には勝っている。デンソーでも結果を出したし、能力には自信がある。いま試合を見ていても強いし、リスペクトはありながらも、自分の能力とみんなの能力を掛け合わせて絶対に勝ちたい。勝てると思っています」。延長戦の末に2-1で勝利した昨季の再現を力強く誓った。

 一方の広島大は無念の逆転負けで、地方国立大の希望となる躍進劇は2回戦でストップした。それでも完成したばかりの人工芝グラウンドで鍛えたコレクティブなサッカースタイルと、質の高いMF中村蒼(3年=帝京長岡高)とMF香取潤(2年=広島ユース)、1浪の末に入学した1年生ストライカーの瀬口らタレント勢は全国でも通用。未来に希望を示す大会となった。

 この日、全国初ゴールを挙げた酢谷は卒業後に一般就職するため、この日が現役最終戦。文武両道を志して1浪で入学し、工学部での忙しい学業をこなしながらサッカーに全力を注いできた4年生ストライカーは「去年は1回戦負け、今年は2回戦負け。確実に強くなっていると思うので、ベスト8以上を目指せるように頑張ってほしい」と後輩たちのさらなる躍進を願っていた。

(取材・文 竹内達也)

●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集

竹内達也
Text by 竹内達也

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