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[MOM932]筑波大FW内野航太郎(1年)_U-20W杯落選、パリ世代抜擢、アメリカでの負傷…すべてを糧にインカレ4強導く決勝弾!

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FW内野航太郎(1年=横浜FMユース)が「心臓を捧げよ」パフォーマンス

[12.13 インカレ3回戦 筑波大 2-0 中京大 AGFフィールド]

 U-20W杯メンバーからの落選、パリ五輪世代への抜擢、その矢先の負傷離脱を経て、たくましさを増した1年生ストライカーが筑波大をインカレベスト4に導いた。FW内野航太郎(1年=横浜FMユース)は13日の3回戦・中京大戦で4か月ぶりに公式戦先発。決勝ゴールとなる先制点を記録し、「0を1にするところにはすごくこだわっている」というストライカーとしての使命を果たした。

 中京大の守備ブロックを崩せないまま時間が過ぎる中、後半13分に試合を動かした。中盤でゲームコントロールを担うMF山内翔が左サイドに流れ、相手のスペースを突くと、スルーパスにMF田村蒼生が反応。鋭いクロスは相手DFに当たって跳ね上がり、イレギュラーな回転でゴール前にこぼれたが、内野はそこに走り込んでいた。

「綺麗な形ではなかったけど、自分の良さのゴール前の駆け引きであそこにポジションを取れたことがよかったし、だからこそ生まれたゴールだったと思う」。最後は胸でボールを押し込み、均衡を破る先制点を奪取。応援団の陣取るスタンド前で、いまや代名詞となりつつある『進撃の巨人』の“心臓を捧げよ”パフォーマンスを披露した。

 チームはその後もなかなかゴールを奪えず、後半アディショナルタイムにようやくダメ押しゴールを決めたが、内野の得点がなければ大苦戦の試合展開。「自分に求められているのはゴールのところだと思うし、0を1にするところにはすごくこだわっている」。小井土正亮監督も「あの場面であそこにいることがストライカー」と称賛を送るゴールセンスが一発勝負の舞台で輝いた。

 内野は今年10月、U-22日本代表の一員として参加したアメリカ遠征で左膝内側側副靱帯を負傷し、この日は久々の先発復帰戦。公式戦では8月5日の関東大学リーグ法政大戦以来4か月ぶりの先発だった。「すごく期間が空いたなと思ったし、だからこそすごく気合が入った。やってやろうという強い思いを持ってピッチに立つことができた」。高いモチベーションを結果につなげてみせた。

 それでも大きな思いを持っていたがゆえ、この日のパフォーマンスには課題も感じていた。悔やんだのは試合を通じて何度かあった相手GKのスーパーセーブに阻まれた場面。「1点しか取れなかったのはすごく悔しい。チームが勝ったから次があるので、この悔しい気持ちを次に活かせるのはラッキーだなと思う」と冷静に語った。

 内野はルーキーイヤーの今季、開幕第2節で初ゴールを含む2ゴールを決めると、続く第3節でも2得点を決める鮮烈なデビュー。しかし、同世代が名を連ねたU-20W杯メンバーからは落選し、大きな挫折も経験した。

 ところがその後も内野は関東大学リーグで結果を出し続け、9月にはU-22日本代表のアジア競技大会メンバーに追加招集。初戦での初ゴールを皮切りに4得点の大活躍を見せると、10月には欧州組も多く名を連ねたアメリカ遠征メンバーに入り、そこでもメキシコを相手にゴールを決めてみせた。

「良い感じに来ていて周りからも『アイツ乗ってんな』って思われていたかもしれないけど、自分としては普段とやっていることは変わらなかった。レベル感に順応できたことで結果を出せたんだと思う。最初は『俺のレベルが追いついていないな』と思ったけど、時間が経つにつれて自信がついて、逆にやってやろうという気持ちになれた」

 不運にもアメリカ遠征中の接触プレーにより、左膝内側側副靱帯の怪我を負うことになった内野。しかし「怪我をしてしまったけどマイナスでは全然なく、逆に俯瞰して見られた良い期間だった」といい、いまでは苦しい経験すらも前向きに捉えている。

「W杯に選ばれずすごく悔しかったし、だからこそ次の代表活動があった。その悔しさをバネにやったからこそ、また呼ばれたと思っている。怪我をしてしまったことはすごく悔しかったし、今か……と思うこともあったけど、そこで自分の弱いところを俯瞰して見ることができた。リーグ優勝でピッチに立てず、悔しい思いもあったけど、その悔しさが今を作っていると思う」

 無念の怪我を負ったアメリカ遠征についても「時差もあって、移動もあってキツかったけど、自分としてはそこにチャレンジできたし、点は取れたので良い期間だったのかなと思えている」と総括。リハビリ期間中も「細かいところの体の使い方や、やろうやろうという力みがあって怪我につながってしまった部分もあったと思う」と自身のプレーを顧みることで、さらなる成長への足がかりにしているようだ。

 このインカレは一回り大きくなった姿をアピールするための絶好のチャンスだ。準決勝は優勝候補と目される明治大。今季、6年ぶりに関東制覇を成し遂げた筑波大はリーグ最終節で下しており、相手は高いモチベーションで向かってくるとみられる。

 それでも内野はルーキーイヤーに掴んだ自信を胸に堂々と向かっていく構えだ。「自分が怪我から復帰して10分間出させてもらったのが最終節だったし、大学サッカーといえば明治強いよねというのがある中で、明治相手に決勝ゴールを決めて、決勝につなげられるように頑張りたい」。熱く活躍を誓った。

(取材・文 竹内達也)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集
竹内達也
Text by 竹内達也

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