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攻守に輝きインカレ4強導いた筑波大MF山内翔主将、神戸の初優勝から得た刺激「あそこに自分が入っていくために…」

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MF山内翔(4年=神戸U-18/神戸内定)

[12.13 インカレ3回戦 筑波大 2-0 中京大 AGFフィールド]

 筑波大に6年ぶりの関東大学リーグタイトルをもたらした頼れるキャプテンが、大車輪の働きで7年ぶりのインカレベスト4に導いた。MF山内翔(4年=神戸U-18/神戸内定)はボランチの一角で中盤のデュエルを制するだけでなく、0-0で迎えた後半には巧みなポジション取りから先制点をお膳立て。攻守に圧倒的な存在感を放っていた。

 対戦相手は前回大会でPK戦の末に敗れた中京大。前半はスコアレスのまま時間が過ぎていったが、動じることはなかった。

「間違いなく簡単な試合にならないという予想で入ったので、初めに押し込まれることもあったけど、それは想定内だった。時間を追うごとに自分たちのペースに持っていけば自分たちがやりたいことをできると思っていたので、我慢することをチームとして揃えてできた」。まずは冷静な守備対応で相手の攻撃の芽を摘み続け、攻めに出る機会を虎視眈々と狙っていた。

 そして後半に入ると、山内自身がスイッチを入れた。この日の筑波大は両サイドハーフに技術の高い選手を起用しており、ビルドアップでは彼らが内側を担い、外側にサイドバックが立つ仕組み。しかし、山内が左サイドに顔を出すことで、サイドハーフのMF瀬良俊太(4年=大宮U18/富山内定)を押し上げ、サイドバックのDF安藤寿岐(2年=鳥栖U-18)とともに攻撃に人数をかけられるようになっていった。

 すると後半13分、この狙いが奏功した。左に流れながらDF諏訪間幸成(2年=横浜FMユース)からのパスを受けた山内がスルーパスを送り込み、MF田村蒼生(3年=柏U-18)がペナルティエリア左を攻め込むと、クロスボールが相手に当たって跳ね上がり、ファーサイドへ。これにストライカーのFW内野航太郎(1年=横浜FMユース)が飛び込み、待望の先制点が入った。

「左でも右でもどっちでも良かったけど、相手のサイドのところで人数をかければズレができるだろうなという感覚があった。得点シーンでは諏訪間からいいボールが来て、相手をうまく外すことができて、蒼生がニアゾーンに入ってくれたのも良かった。自分がこうなれば良いなというイメージがうまく得点に出たので良かった」

 かつてMF藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)やMF田中聡(湘南)らとボランチを組んでU-17W杯に出場した経験を持つ山内にとって、そうした相手との駆け引きは育成年代からの真骨頂。この得点はベスト4進出を決める決勝点となったが、「相手を見ながらやるのは昔からよくやっていたし、チームのバランスを保った上で変化をつけるのは今季もできていた。それがうまく出たと思う」と自身でも手応えの残るワンプレーだった。

 そんな山内は昨季途中、24年から神戸のトップチームに加入することが内定。高校時代以来の復帰となる。今季は筑波大が7年ぶりの関東タイトルを獲得したが、奇しくも神戸もJリーグ初優勝を達成。愛するクラブの躍進劇は大きな刺激になっていたという。

「去年は苦しいシーズンを送っていたチームが優勝したのは自分としても嬉しかったし、試合の中身を見ても経験のある選手たちがチームのために戦うこと、そこの変化は感じた。あそこに自分が入っていくために必要なことを、いま筑波で求められていることに加えて、準備していきたいと思っていた」

「今年の神戸を見ていても、一人一人の選手がハードワークするところがありつつ、前の選手の力を活かすために中盤の選手が変化をつけていっていると思っていた。自分はボールのところもそうだし、守備のところでもう一歩寄せるところを意識していた。その上で自分の良さを失わないようにしたいと思ってやってきた」

 幅広いプレーエリアで存在感を発揮しつつ、中盤の潰し役もこなせるのが現代のボランチ。山内は高い競争力のある関東大学リーグ、U-22日本代表の一員として参加したアジア大会を戦いながら、高みを見据えた取り組みを続けてきていたようだ。

 もっとも山内はプロ入り前にもう一つ、筑波に残しておくべきものがある。インカレのタイトルは7年前を最後に獲れていないが、関東とのダブル制覇となれば43年ぶりの快挙。歴史的な世代の主将となるべく、まずは目の前の大会に集中していく構えだ。

 21日の準決勝の相手は関東の覇権を争ってきた明治大。「大学の中でトップクラスの相手なのは間違いない。今まで自分たちが積み上げてきたものがどこまで明治大学さん相手にチームとして通用するのか、また個人的なことでも今までやってきたことが出ると思うので、1週間空くので、チームとしても自分のコンディションも上げていきながらやっていきたい」。この日は足首を痛めて途中交代となったが、「次は大丈夫」と宣言。入念なコンディションを進め、決戦に挑む。

(取材・文 竹内達也)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集
竹内達也
Text by 竹内達也

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