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筑波大の神戸内定GK高山汐生、プロレスファンの注目も「嬉しい」「頑張っているおじさんにこれからもいい報告を」

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GK高山汐生(左)。右のDF諏訪間幸成も父親がプロレスラーの諏訪魔ということで知られる

[12.10 インカレ2回戦 筑波大2-1鹿屋体育大 AGFフィールド]

 あの日と同じ涙を流すわけにはいかなかった。1年前の大学選手権(インカレ)も初戦をAGFフィールドの2回戦で迎えていた筑波大は、中京大にPK戦の末に敗戦。GK高山汐生(4年=湘南U-18/神戸内定)はPK戦で一本も止めることが出来ずに勝利に導くことは出来なかった。

「去年、ここで中京に負けたことは忘れていない」

 心を強くして臨んだ一戦。筑波大は前半で2点のリードを奪って試合を優位に進めると、鹿屋体育大の反撃を1点に凌いで、90分勝利で初戦突破を決めた。1失点を「改善点」とした高山汐も、「初戦の難しさは分かっていて、チーム全体として応援を含めて、いいメンタリティで挑めたと思います」とホッと胸を撫で下ろした。

 プロ内定選手としてこの場に帰ってくることが出来た。Jリーグ入りが有力視される注目GKとして最終学年を迎えた高山汐だが、なかなか進路を決めることが出来なかった。シーズン前に高校時代までを過ごした湘南から獲得がないことを告げられた。その後もJクラブの練習参加を繰り返したが、「保留」ばかりでいい返事を貰うことが出来なかったという。

 ただ大学で成長してきたという自信はあった。そして練習参加ばかりを繰り返し、「焦り」があったことを反省。「部のためにやろう」と初心に帰ったことで、プレー面がさらに安定してきたという。そして夏が過ぎたころ、タイミングも重なり、のちのJ1王者となるヴィッセル神戸から獲得のオファーが届くことになった。

「発表はされていなかったけど、2か月前くらいに決まって、8試合くらいリーグ戦もやれた。だから今日も特に気負うことなく、いつも通りにやれました。大学ではシンプルにGKとしての安定感が出たと思っていて、高校時代まではミスをしたらコーチの顔を伺ったりしてネガティブだったんですけど、今は一つ一つのプレーに集中できていると思います」

 今月7日に神戸から内定発表がされたが、人気プロレスラーの高山善廣さんの甥ということでも話題を集めた。高山汐のもとにもSNSを中心に「こんなに来るんだ」というほど、連絡が届いたという。「俺の力じゃなくて、今はおじさんの力だけど、それで注目してもらえるのは嬉しいです」。

 その中には闘病中の善廣さんに代わっておばさんからのメッセージもあったことを明かす。「おめでとうとショートメッセージが来た。自分もシンプルに尊敬している人の一人だし、今はプロレスをできない状況だけど頑張っている。これからもいい報告が出来るようにと常に思ってプレーしていきたい」。プロ入り後は日本代表GK前川黛也とのポジション争いといきなり高い壁がそびえるが、おじさんの代名詞である“ノーフィアー”の精神で立ち向かっていくつもりだ。

(取材・文 児玉幸洋)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集
児玉幸洋
Text by 児玉幸洋

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