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なでしこジャパンvsアメリカ 試合後の佐々木監督会見要旨

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[8.9 ロンドン五輪決勝 日本1-2アメリカ ロンドン]

 ロンドン五輪で史上初の決勝進出を果たした日本女子代表(なでしこジャパン)は9日、ロンドンのウェンブリースタジアムでアメリカ女子代表と対戦し、1-2で敗れた。世界一に輝いた昨年の女子W杯決勝の再現となった決勝戦。日本は前半8分、後半9分と失点し、今大会初めて追う展開となると、後半18分にFW大儀見優季の3戦連発弾で1点を返したが、あと一歩及ばず。1-2の惜敗で、前人未到の世界大会連覇はならなかった。金メダル獲得とはならなかったが、史上初の銀メダルを獲得したなでしこジャパン。サッカーの聖地・ウェンブリーに詰めかけた8万203人の大観衆は両チームに惜しみない拍手を送っていた。

以下、試合後の佐々木監督会見要旨

佐々木則夫監督
「選手たちはこの大会で一番いいゲームをしてくれたし、決勝にふさわしいゲームだった。オリンピックの決勝でチャンピオンに立つという目標を立てて、結果は出なかったけど、選手を誇りに思う。よくやってくれた。ご苦労様と言いたい」

―W杯のときもそうだが、選手が楽しんでプレーしているように見えたが?
「選手主導というか、選手たち一人ひとりがミーティングをしたり、こういうサッカーをやろうよと話している。我々はベースをつくるが、サッカーは選手の発想が大事だし、選手たちが自主性を持ってトレーニングやミーティングをやっているので、団結力がある。だから、ゲームをやっているときも楽しくできたのではないかと思う。一番は監督が楽天的だから(笑)」

―ハンドがあったように見えたが?
「どこですかね?(笑) レフェリーが決めることですから。僕も瞬間は『あれっ』と思ったかもしれないけど、そこは素直にレフェリーをリスペクトする。それが我々の使命だと思う」

―去年と今年の女子サッカーを比べると、さらに成長していると思うか?
「変化しているというか、進行形というか。スキルを大事にし、ボールを動かしながら、フィジカルだけではなくなってきている。チームの守備もしっかりオーガナイズされ、女子サッカーの質は変わってきていると思う」

―前日の会見で『内緒』と言っていた試合前の選手にかけた言葉は?
「シチュエーションとしては8畳間に全員が入って。ミーティングの場所がそこしかないので。神妙な声で、この5年間のみんなへの評価だったり、『今日が仕上げだ』と伝えた。その前に選手が独自でミーティングをしていて、僕以上に士気はもう高まっていたので、あまり僕がさらに士気を高めることでもなくて、そういう意味ではひっそりした声で伝えました(笑)。ロッカールームでは、失敗を怖がらずに今までやってきたサッカーを楽しんでほしいと。ここ2試合、矢野選手が最後に盛り上げてくれる。仮装したり、そういうところで緊張をほぐして、選手を送り込んでくれる。そういう意味で、この2試合は非常にバランスのよい入り方ができて、矢野選手にも感謝している」

―試合後、宮間が泣いていたが、宮間が背負うプレッシャーを監督はどう見ていた?
「全体のバランスを考えて、左から右にポジションが移行した中、彼女なりに左サイドの方がイメージしやすい部分もあったと思う。右サイドでちょっとしっくりこない中でもフォアザチームでやってくれたし、ピッチの外でもチームワークをコントロールしてくれた。彼女がピッチ内でもピッチ外でもよくやってくれた。彼女自身が僕よりも一番疲れたと思うし、僕自身感謝している」

―田中、岩渕の投入の理由は?
「阪口と田中を変更したのは、阪口はテンポよくボールを動かしていたが、連戦の中、疲労感があるように見ていた。後半の途中で守備や切り替えの部分で目立ってきた。田中は展開もできるし、スタミナもあるので、攻守にやってもらおうと思って代えた。もう少しピッチを広く使ってほしいなというのはあったが、よくやってくれたと思う。岩渕は左サイドで相手からあまりプレッシャーを受けずに仕掛けるところを積極的にやってもらおうと。アプローチの速さ、パンチ力のあるミドルシュートも持っているので。鮫島を代えて、川澄はアップダウンできるし、攻撃的に左サイドをやれと岩渕に伝えた。岩渕ももう少しでなでしこの奇跡を起こすプレーになったんだけど(笑)」

―このチームの良いところは?
「チームワークだと思う。日本女子代表は31年目だが、明るくて、正義感があり、フェアプレーを心がけ、常に相手をリスペクトするような子たち。それが結集すると、あんな小さい子たちでもすごいパワーを出す。そんな日本の女性の素晴らしさがなでしこジャパンのチームに植え付けられていることを僕自身、誇りに思っている」

―後半途中から澤がトップ下になったが? 今後のなでしこ、自身の去就については?
「川澄をサイドバックにして、澤をトップ下にしろという指示はしていない。とにかく川澄に積極的に前にかかわれ、中盤の選手も積極的に上がるようにと。そういう意味で、積極的に点を取ろうという中で澤はトップ下で活動してくれたんだと思う。僕の簡単なコメントを受けて、そういう風に工夫してくれた。それが回り具合のいいなでしこジャパンの選手ということに尽きると思う。僕自身は細かくやってないので(笑)。これからのなでしこの展望となった場合には、今度のU-20W杯が日本で開催される。ヤングなでしこのプレーが気がかりになる。U-17もU-20も今年、世界大会があるので、その中でどれだけできるか。それと今のなでしこの若い選手たちも含め、是非応援していただいて、その中で次のオリンピックの将来が見えてくるのではないかと思う。僕自身、契約は9月までなので、9月以降、そういう仕事にかかわっていければいいかなと思うが、それは協会の上層部が決めることなので。チャンピオンになれなかった、チームとしての大きな目標を達成できなかったわけですから、帰ったらU-20女子W杯のアンバサダーとしてPR活動を一生懸命やって、上層部にコネをして選択枠を広くしていきたいと思っています(笑)」

―試合後、円陣を組んでいたが?
「決勝とはいえ、負けたとはいえ、僕自身は客観的に見て、今大会で一番よくやってくれたと思ったし、決勝の舞台に恥じることのない、正々堂々としたフェアプレーでやってくれて、僕自身満足しているし、選手に感謝している。胸を張って、この銀メダルを胸にかかげて帰ろうと話した。選手たちにはそういう思いも通じていると思うし、自分たちもやったという気はあると思う。素晴らしいアメリカですから。よくやってくれたという表現をした」

(取材・文 西山紘平)

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