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フットサル日本代表デビュー戦でFPカズが放った幻のシュート

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[10.24 フットサル国際親善試合 日本代表 3-3 ブラジル代表 代々木第一体育館]

 SAMURAI 5 フットサル日本代表が、史上初めて世界王者ブラジルと引き分けた歴史的一戦の後、メディアルームでは、ちょっとした混乱が起きていた。試合後、メディアに向けて配布される公式記録というものがあり、それには得点の推移やタイムアウトを取った時間、ファウル数などが記されている。その中のシュート数の欄で、不可解なことがあったからだ。

 話題となったのはFP三浦知良(横浜FC)の記録である。前半5分、FP木暮賢一郎(名古屋オーシャンズ)と交代でピッチに立ったカズは、その直後にブラジル代表DFを2人引き付けておき、FP森岡薫(名古屋オーシャンズ)に浮き球でパスを出し、前線へ抜け出す。そこに森岡からリターンパスが送られ、カズはシュートを打った。ニュース番組でも繰り返し放映されたシーンであっただけに、記憶にある方も多いだろう。

 明らかにカズはシュートを打っており、試合後にカズ自身も「シュートの場面は腰が回らなかった」と苦笑していた。ところが、このシュートが公式記録上では、シュートとして記録されていないのだ。2点目の起点になったカズだが、この試合で打ったシュートは、この一本だけ。もし、これが認められなければ「監督も評価をしてくれたのはそこなので、積極的にシュートを打っていきたい」と語っていたカズが、ブラジルとのデビュー戦で、シュートゼロに終わったことになってしまう。

 なぜ、シュートとしてカウントされなかったのか。数年前まで東京都サッカー協会の主催する試合で、公式記録を付けていた知人に聞いてみた。すると、公式記録を付ける際にはシュートの基準があることが分かった。そのガイドラインを抜粋してみよう。

<シュートとは>
攻撃側チームの選手が、直接得点することを目的に、ボールを意図的にプレーした場合、シュートを記録します。プレーの意図がシュートであっても、プレーの結果、ボールが大きくゴールを外れた場合、また守備側選手に簡単に防がれた場合は、シュートと記録しません。これはシュートの基準を統一するための措置です。

<ボールが大きくゴールを外れた場合>
1.ペナルティエリア外でのプレー
左右:左右に外れた場合、近くのゴールポストから6m程度の外れ方であれば、シュート
を記録する(ゴールラインとペナルティエリアのラインの交点)。これ以上大きく外れたらシュートを記録しません。
上方:上方に外れた場合、クロスバーから4m程度の外れ方であれば、シュートを記録する(ゴールの上に、さらにゴールをふたつ重ねた高さ=ゴールの3倍)。これ以上大きく外れたら、シュートを記録しません。

2.守備側選手が簡単に防いだ場合
1. GKが防いだ場合
シュートを記録します。ただし、あまりにも緩やかなボールについてはシュートを記録しません。攻撃側選手のプレーがペナルティエリア外でも、ペナルティエリア内でも、同様です。
2.ペナルティーエリア外でFPが防いだ場合
攻撃側選手が蹴ったボールが、3メートル以内で守備されたら、シュートを記録しません。
相手ゴール付近の直接FKが壁に当たった場合はシュートを記録する。(壁までの距離は5メートル)
3.ペナルティーエリア内で、FPが防いだ場合
攻撃側選手が蹴ったボールが、至近距離で守備されたら、シュートを記録しません

 以上が、数年前の東京都サッカー協会が主催する試合での公式記録を付ける上でのシュートの定義だ。今回の試合では、基準が多少違っているかもしれないが、明らかに意図的にシュートを狙っていても、枠を大きく外れた場合などは、シュートとしてカウントされないようだ。そして、今回のカズのシュートについては、この『ゴールポストより外側に6m以上離れていた』という判断が下され、シュートにカウントされなかったようだ。

 通常、記録員は3人いるため、判断の難しいものについては、互いに確認をし合って、記録を付けるという。つまり、3人の記録員がシュートじゃないという共通認識だったのだろう。試合が終わってから数日後に、公式記録の記載事項が変わることは、ほとんどない。そのため、おそらくカズがデビュー戦で放ったシュートは、幻のシュートということになるようだ。

 フットサル日本代表は、本日27日に旭川の大雪アリーナで、ウクライナ代表との親善試合を行う。この試合で、カズにはフットサル代表としての『初シュート』、そして『初ゴール』の期待がかかる。

(取材・文 河合拓)
本日のフットサル日本代表vs ウクライナ代表戦、試合の経過をtwitterで配信予定です。
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